とある天使の過去と今

星野 夜空

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「……さて、これからは本職です。門番としての責務を始めましょうか」
「了解」
「ん」

 やることはやった。あとは平常通り、見張りを始めるだけ。
 ルーラもそれが分かっているためか、赤鬼と一緒に地界に帰っていった。だからてっきり、天使長もそうだと思っていたのだけど、なぜかまだそこにいた。

「……あの、天使長? お戻りにならなくてよろしいのですか?」
「あぁ……。その前にきちんと謝りたくてね」
「……謝る? なぜですか」
「私の不用意な発言で君に長い間……本当に長い間君に苦痛を味あわせてしまったからね」

 ……今更何を言うか。どの口が言うか。本人が言うまで気づかないなんて。これで長だなんて。

 なんて、愚かな天使なのだろう。

「……謝罪などいりません。貴殿の発言、それにのった天使達の心理は分かっています。ですが、だからといって許しているわけではありません。理解はしているだけです。
 ……そして貴殿が謝り、私が許せる時期はとうに越えています」

 無言を貫く彼にお分かりいただけましたか? と皮肉げに告げる。

「……私の言葉が理解できましたならお帰りください。天使長」

 そっと差し出した腕の方向へ帰る天使長の後ろ姿を見送りながら、ザレブさんがいいの? と聞いてきた。

「あのプライド高い天使長直々に謝ってきたのに。しかもうまくいったら君のことを皆認めることになったのにさ」
「……構いません。上辺だけの謝罪だと理解していますから」

 他の天使みたいに罪悪感で避けているわけじゃなく、地位が危うくなるがために謝ってきた、自分しか考えられない彼だと風の噂で聞いた。
 まぁ、あとはルーラがうまくやってしまうだろう。相当怒った笑みを浮かべていたから、容赦なく追い詰めて辞職させるかもしれないけど。

「ふぅん。そういうもの?」
「……そういうものです。さ、仕事をしますよ」
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