とある天使の過去と今

星野 夜空

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「……疑問は解決しましたか? でしたら、打ち合わせをしましょうか」

 固まった様子から戻ってきた二人から同意を受け、話を戻し本来の予定、ユントストさん曰く打ち合わせをすることにした。

「……まず、ユントストさん。貴方は私より歳上と見受けますが、いかがでしょうか?」
「ザレブで構わないよ。そうだね、少なくとも君ら二人よりはずっと歳上だね」
「……ご不満はありませんか?」

 言いたいことを察したのか、浮かべている笑みを深くされた。

「そりゃ、ないと言ったら嘘になるよ。門番は上位天使でも名誉職。天界地界関わらず信頼された者じゃないとできない。ましてその上、門番管理者なら尚更だ」

 でしたら、と続けた言葉は遮られ「でもだからこそ、君がやるべきだと僕は思ってる」と続けられてしまった。

「……理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「話を聞く限り、君は死神の長、エスペラルさんに育てられたんでしょ? ってことは、必然的に地界の人達と関わりがあるってことだ。地界と密接な関係が必要な門番にはこれ以上ないってくらい適役だよ」
「……ですが、私は……」

 異端の、忌み子の天使だ。ザレブさんが言ったように、黒き者だ。たとえ地界がよくても、ルーラが天界の皆を説得しても、これは変わらない。

「……私は、他の上位天使には異端や忌み子と嫌われ、一般天使にも避けられています。その様な天使の部下となることで、誹謗中傷されることが考えられます。それでも尚、門番を……私の部下をやる覚悟はありますか?」
 

『ある』
 

 即答だったことだけでも驚きなのに、更に二人の会話には驚かされた。

「つうか俺、あんたじゃなきゃ門番になんかなれなかったからありがたいんだよな。むしろ上位天使にもなれなかったかもしれねぇし」
「そうなの? 研修期間の仕事が早いし書類は見やすい、おまけに覚えが早いって将来有望視されてるって聞いたよ」
「けどこの口調が上司にもやるもんだから素行が悪いって言われ続けて、危うく退職の危機だ」
「……確かに。僕は気にしないけど、上は気にするだろうね」
「しかもそんな奴の志望が門番なんざ、普通通すわけがねぇ。研修期間の間に切るぞって脅されもしたんだが……」
「なるほど、そういった意味じゃ、確かに彼女は君にとってありがたい存在なわけだ」
「あんたは?」
「ま、僕も似たようなもんだよ。上位天使の中には腐った連中が多くってね、色々指摘してたらここに」
「……逆効果だと思います。門番ならそういったのを地界に流して信用をなくし、天使がそれを知り天界でも信用をなくさせることができますから。そしてその天使は辞めざるをえなくなる」
「わお。考えること、意外と黒いね」
「……なんにしても、上にとってはありがたかったわけですか」

 門番は名誉職、だけど世間が選び、上司となるのは異端。周囲の目や口が気になってやりたくてもやれない職に早変わり。そんなところに進んで行ってくれて、なおかつ問題ありの天使なら万々歳。
 見事なくらいに厄介払いの完成ってことね。
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