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「成人おめでとう」
「……ありがとう」
正装に身を包むルーラと、同じく正装に身を包んでる自分が、何だかくすぐったい気持ちになる。
ただ死神としての正装ではなく、天使としての正装である自分の姿は、嫌でも私達が血を繋がっていないのを認識させられる。それに天使は基本白の正装だ、黒の正装が多い地界だと異質な存在であることこの上ない。
「……君の、死神としての仕事は昨日で終了だ。明日からは天使の仕事をしてほしい」
「……ねえルーラ、本気で言ってるの。それ」
「嘘でこんなことは言わないよ」
確かにこんな心臓に悪い冗談、ルーラは言わない。
天使の仕事をなんて……天界に戻れというつもりなの?
「別に家から追い出すわけじゃないよ。君にしてほしい仕事っていうのはね、地界においての天使活動なんだ」
「……意味が分からないわ」
天使の仕事は大きく分けて三つ。
一つは生死の狭間を生きる人間と会話し、どうするのか考えること。
次に死した魂に安らぎを与え、来世に影響が出ないようにすること。
そして治安取り締まりの上位天使。
でも、この中にルーラの言う地界関係は精々が上位天使。忌み子とされる私がなれるとは思えない。
「そうだね、分かりやすく言うと……以前、地界に殴り込みに来た上位天使がいるでしょ?」
返事の代わりに頷く。あれの原因が私なんだから、そう簡単には忘れられない。爪痕が残っていれば尚更だ。
「あれの裁きを、僕ら地界の者はしたい。怪我した人が何人もいるからね、見逃せない」
「……それで?」
「その裁きができない理由、分かる?」
数秒考えるものの、分からず首を振る。天使とてこちらのルールを破れば地界の裁きを受けるし、逆だってありえる。ルーラはその裁きをしないではなくできないといった。その理由が何なのか、私には思い浮かばなかった。
「……法を犯した連中の任されている場所が、地界への入口なんだ」
忌々しい、と言わんばかりの表情をする。それは、確かに捕まえることはできないはずだ。
天界と地界を繋ぐ門番は、互いの世界の住民に信用できると見なされた上位天使及び赤鬼しかできない特別な場所。いかなる理由があれ、手出しすることは禁止されている。
ただし、後任がいた場合は除く。そんな役職だ。
「……ルーラが言いたいことは分かった。でも彼等が私を認めてくれる?」
「大丈夫、その辺りは安心していいよ。……こう言ってしまってはなんだけど、君を迫害していたのは上位天使がほとんどで、一般天使はいないに等しいんだ。そして力のある上位天使に逆らうのは自分が死ぬかもしれないし、彼等も君が怖かった。見て見ぬ振りをして君を救わなかった罪滅ぼしだと言ったらすんなり受け入れてくれたよ」
「……もう、全部終わってるのね」
私がやりたいと言えば、全てができるように。断ってもルーラのことだ、別の人を見つけてはいるのだろう。
だからといって断る理由はなかった。私だけの問題なら何も思いはしなかったし、関係なかった。憎しみも、恨みも。恐怖はないとは言い切れなかったけど、ルーラを始めとする死神や地界に住む皆のお陰で薄れた。
他人を巻き込むことさえしなければ、どんな感情も持たなかったのに。
「……上位天使になって、門番になればいいのね?」
「うん。ごめんね、こんなこと嫌だろうに……ありがとう」
「……別に。私も怒ってるから」
その言葉に驚いたルーラは、ひどく印象に残った。
「……ありがとう」
正装に身を包むルーラと、同じく正装に身を包んでる自分が、何だかくすぐったい気持ちになる。
ただ死神としての正装ではなく、天使としての正装である自分の姿は、嫌でも私達が血を繋がっていないのを認識させられる。それに天使は基本白の正装だ、黒の正装が多い地界だと異質な存在であることこの上ない。
「……君の、死神としての仕事は昨日で終了だ。明日からは天使の仕事をしてほしい」
「……ねえルーラ、本気で言ってるの。それ」
「嘘でこんなことは言わないよ」
確かにこんな心臓に悪い冗談、ルーラは言わない。
天使の仕事をなんて……天界に戻れというつもりなの?
「別に家から追い出すわけじゃないよ。君にしてほしい仕事っていうのはね、地界においての天使活動なんだ」
「……意味が分からないわ」
天使の仕事は大きく分けて三つ。
一つは生死の狭間を生きる人間と会話し、どうするのか考えること。
次に死した魂に安らぎを与え、来世に影響が出ないようにすること。
そして治安取り締まりの上位天使。
でも、この中にルーラの言う地界関係は精々が上位天使。忌み子とされる私がなれるとは思えない。
「そうだね、分かりやすく言うと……以前、地界に殴り込みに来た上位天使がいるでしょ?」
返事の代わりに頷く。あれの原因が私なんだから、そう簡単には忘れられない。爪痕が残っていれば尚更だ。
「あれの裁きを、僕ら地界の者はしたい。怪我した人が何人もいるからね、見逃せない」
「……それで?」
「その裁きができない理由、分かる?」
数秒考えるものの、分からず首を振る。天使とてこちらのルールを破れば地界の裁きを受けるし、逆だってありえる。ルーラはその裁きをしないではなくできないといった。その理由が何なのか、私には思い浮かばなかった。
「……法を犯した連中の任されている場所が、地界への入口なんだ」
忌々しい、と言わんばかりの表情をする。それは、確かに捕まえることはできないはずだ。
天界と地界を繋ぐ門番は、互いの世界の住民に信用できると見なされた上位天使及び赤鬼しかできない特別な場所。いかなる理由があれ、手出しすることは禁止されている。
ただし、後任がいた場合は除く。そんな役職だ。
「……ルーラが言いたいことは分かった。でも彼等が私を認めてくれる?」
「大丈夫、その辺りは安心していいよ。……こう言ってしまってはなんだけど、君を迫害していたのは上位天使がほとんどで、一般天使はいないに等しいんだ。そして力のある上位天使に逆らうのは自分が死ぬかもしれないし、彼等も君が怖かった。見て見ぬ振りをして君を救わなかった罪滅ぼしだと言ったらすんなり受け入れてくれたよ」
「……もう、全部終わってるのね」
私がやりたいと言えば、全てができるように。断ってもルーラのことだ、別の人を見つけてはいるのだろう。
だからといって断る理由はなかった。私だけの問題なら何も思いはしなかったし、関係なかった。憎しみも、恨みも。恐怖はないとは言い切れなかったけど、ルーラを始めとする死神や地界に住む皆のお陰で薄れた。
他人を巻き込むことさえしなければ、どんな感情も持たなかったのに。
「……上位天使になって、門番になればいいのね?」
「うん。ごめんね、こんなこと嫌だろうに……ありがとう」
「……別に。私も怒ってるから」
その言葉に驚いたルーラは、ひどく印象に残った。
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