78 / 81
番外編
やっちゃったよ(前編)
しおりを挟む
それはある日の昼下がり。体の休息も大事だからと依頼を受けない休息日のことだ。
「頼む、ほんの少しで良いんだ。相手をしてくれないか?」
「おい、俺が今頼んでたとこだぞ。横入りするな」
「僕が最初に話しかけたのです。ですから僕が最初ですよね?」
もうすぐ私達三人がギルドを移す──要するに王都から去ると知られたのは比較的最近の話になる。それから休みのたび、連日稽古や鍛錬といった相手を頼まれることが増えた。
どうにも一番最初に受けた依頼、そしてその後受け続けた討伐依頼は、初心者向けゆえにここ王都では人気がなかったものばかりらしい。なまじ害が低く道端で出くわしても対処を掴んだ冒険者なら誰でも倒すことのできる魔獣ばかり。食物連鎖の一番低い位置にいることもあって、人間にとって脅威となるほど繁殖もしない。でもある程度間引きしないと、強力な魔獣が増えたり出現したりする可能性があるからそろそろ誰かがやらないといけない。
どれもこれもがそういった訳あり依頼だったからか、割りのいい仕事として私達は受け続けた。これくらいならさほど騒ぎにはならなかったのかもしれない。
この前アランやマリが話していた通り、初回の討伐依頼を半日で終わらすなんてことをしなければ。
他のやつも平均数より上を頼まれている討伐依頼なのに数日で終わらせたり、受理された数時間後には帰ってきたりしていたこともあって、私達三人は予想をはるかに超えて注目されていたみたいだ。
今をもって様々な人──おそらく前衛職に関わる人から誘われている状況を見る限りは。
そしてこれは、何も私だけじゃない。他二人もそれぞれ囲まれているのが目の端に見えた。
安くて女性も安心して泊まれる、ギルドに直結している宿を使用しているから毎度こうして囲まれてしまう。部屋に篭っていてもすることはないし、第一ご飯を食べるのには下のご飯処に行かないといけない。
なら宿を変えたら良い話なんだけど、そうは問屋がおろしはしてくれない。なんせここ以外で泊まろうとするとどこから嗅ぎつけてくるのか、マリの家から馬車が来て彼女の家もしくは高級宿へ案内しようとするから。幸い「彼女の親が心配してるからたまには顔を出してね」と言われたことにしているから、ギルドで騒ぎにはなっていない。
……でも、そろそろこの誘いも鬱陶しくなってきたなぁ。
私は、私だけで戦っている訳じゃない。三人で戦っているからこそ、あの結果が出たと言える。だから個別に来られても、鍛錬としては確かに良くても何かこう、得るものがあるとは思えない。
だから、だろう。つい口から漏れた言葉が挑戦的になってしまったのは。
「いっそ、アラン、マリ、私の三人と戦ってみない?」
「頼む、ほんの少しで良いんだ。相手をしてくれないか?」
「おい、俺が今頼んでたとこだぞ。横入りするな」
「僕が最初に話しかけたのです。ですから僕が最初ですよね?」
もうすぐ私達三人がギルドを移す──要するに王都から去ると知られたのは比較的最近の話になる。それから休みのたび、連日稽古や鍛錬といった相手を頼まれることが増えた。
どうにも一番最初に受けた依頼、そしてその後受け続けた討伐依頼は、初心者向けゆえにここ王都では人気がなかったものばかりらしい。なまじ害が低く道端で出くわしても対処を掴んだ冒険者なら誰でも倒すことのできる魔獣ばかり。食物連鎖の一番低い位置にいることもあって、人間にとって脅威となるほど繁殖もしない。でもある程度間引きしないと、強力な魔獣が増えたり出現したりする可能性があるからそろそろ誰かがやらないといけない。
どれもこれもがそういった訳あり依頼だったからか、割りのいい仕事として私達は受け続けた。これくらいならさほど騒ぎにはならなかったのかもしれない。
この前アランやマリが話していた通り、初回の討伐依頼を半日で終わらすなんてことをしなければ。
他のやつも平均数より上を頼まれている討伐依頼なのに数日で終わらせたり、受理された数時間後には帰ってきたりしていたこともあって、私達三人は予想をはるかに超えて注目されていたみたいだ。
今をもって様々な人──おそらく前衛職に関わる人から誘われている状況を見る限りは。
そしてこれは、何も私だけじゃない。他二人もそれぞれ囲まれているのが目の端に見えた。
安くて女性も安心して泊まれる、ギルドに直結している宿を使用しているから毎度こうして囲まれてしまう。部屋に篭っていてもすることはないし、第一ご飯を食べるのには下のご飯処に行かないといけない。
なら宿を変えたら良い話なんだけど、そうは問屋がおろしはしてくれない。なんせここ以外で泊まろうとするとどこから嗅ぎつけてくるのか、マリの家から馬車が来て彼女の家もしくは高級宿へ案内しようとするから。幸い「彼女の親が心配してるからたまには顔を出してね」と言われたことにしているから、ギルドで騒ぎにはなっていない。
……でも、そろそろこの誘いも鬱陶しくなってきたなぁ。
私は、私だけで戦っている訳じゃない。三人で戦っているからこそ、あの結果が出たと言える。だから個別に来られても、鍛錬としては確かに良くても何かこう、得るものがあるとは思えない。
だから、だろう。つい口から漏れた言葉が挑戦的になってしまったのは。
「いっそ、アラン、マリ、私の三人と戦ってみない?」
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました
toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。
残酷シーンが多く含まれます。
誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。
両親に
「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」
と宣言した彼女は有言実行をするのだった。
一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。
4/5 21時完結予定。
私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる