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本編
いやうん、ごめん
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それから数日後の夕方。マリの誕生日パーティは始まった。
「皆さま、本日は我が娘、マリーナの誕生を祝いにきてくださりありがとうございます。ささやかではございますが、この祝いの時間をお楽しみくださいませ」
口上を述べるマリのお父さん、そしてマリ本人への拍手から幕を開けたパーティは、とても穏やかな空気に包まれてる。
アランの時と比べて豪華さ? 絢爛さ? は少なめだけど、華やかさはこっちの方が強く感じるな。主役が女性だから雰囲気もどことなく違う、ような気がする。気のせいだと分かってはいるけどね。
ちなみに当の主役はというと、頰を膨らませて怒っております。
「マーリー……そんなに怒らなくても良いじゃないの。もうすぐアランもくるんだし、機嫌直して楽しもう?」
「怒る理由になった貴方に言われたくありません」
いやまあそうだろうけどもね。私の誕生日を教えたらここまで怒るとは思ってなかったんだって。
そもそも何でここまで怒ってるのやら、私には謎すぎる。
そうこうしている間にアランがきた。真っ先にきた。マリのもとへ一直線だ。ベタ惚れなの丸分かりすぎて周りがとてもこう、面白そうに見てるのが私としては不思議。
結構学校でも、特に婚約が仮でなくなったあたりからこんな感じだし。そこは何かしらの事情があるのかな。見慣れただけかもしれないけど。
「やあマリ、ラナ。今日はめでたい日……だよね? 何でこんなにマリは膨れっ面なの?」
「あーと、実はね」
かくかくしかじか、と話せば苦笑いを深くしていく。まるで全て分かってると言わんばかりだ。実際この二人は幼馴染だし、マリがこうなってる所以も知ってるんだろうね。
「マリはさ、つい最近まで親があんな感じだったから。婚約者であり幼馴染である僕くらいしか友人がいなかったんだ」
もちろん貴族として同年代のパーティへ顔を見せることはあれど、親しくなるのはまた別問題。顔見知り程度の人しか今までいなかったそうだ。
それはそれでまた、随分と辛い。話だけ聞くと普通の貴族なら致命的なものとなり得ただろうし。魔力が高くて、ある意味普通でない貴族になるから助かった、ともいえるのが救いといえば救いかな。
「それで、初めて出来た女友達のラナへ贈るプレゼントは何が良いかって、随分前から話してたんだよ」
「……だというのに聞き忘れた迂闊な私にも、今まで教えて下さらなかったラナにも怒っておるのです」
「そういうことだったのね」
理解した。したけども。そろそろ機嫌直そうよ頼むから。
単純に忘れてただけなのにここまでとなると色々くるから。主に心へのダメージが。
「ちなみにラナの誕生日っていつなの?」
「今夜中、もしくは夜明けに馬で帰ったら実家で祝えるかな」
「……具体的な日付を聞いたのにどうしてそういう答え方になるのさ」
それはマリも怒る答え方だよって言われても。
暦なんて庶民にはちょっと、というかかなりどうでもいいこと、覚えてないよ。王都から離れた地域なら尚更。日の出から日の入りさえ気にしていればいい生活なんだもの。
だから余計、自分の誕生日なんて忘れがちになるんだよね。
「皆さま、本日は我が娘、マリーナの誕生を祝いにきてくださりありがとうございます。ささやかではございますが、この祝いの時間をお楽しみくださいませ」
口上を述べるマリのお父さん、そしてマリ本人への拍手から幕を開けたパーティは、とても穏やかな空気に包まれてる。
アランの時と比べて豪華さ? 絢爛さ? は少なめだけど、華やかさはこっちの方が強く感じるな。主役が女性だから雰囲気もどことなく違う、ような気がする。気のせいだと分かってはいるけどね。
ちなみに当の主役はというと、頰を膨らませて怒っております。
「マーリー……そんなに怒らなくても良いじゃないの。もうすぐアランもくるんだし、機嫌直して楽しもう?」
「怒る理由になった貴方に言われたくありません」
いやまあそうだろうけどもね。私の誕生日を教えたらここまで怒るとは思ってなかったんだって。
そもそも何でここまで怒ってるのやら、私には謎すぎる。
そうこうしている間にアランがきた。真っ先にきた。マリのもとへ一直線だ。ベタ惚れなの丸分かりすぎて周りがとてもこう、面白そうに見てるのが私としては不思議。
結構学校でも、特に婚約が仮でなくなったあたりからこんな感じだし。そこは何かしらの事情があるのかな。見慣れただけかもしれないけど。
「やあマリ、ラナ。今日はめでたい日……だよね? 何でこんなにマリは膨れっ面なの?」
「あーと、実はね」
かくかくしかじか、と話せば苦笑いを深くしていく。まるで全て分かってると言わんばかりだ。実際この二人は幼馴染だし、マリがこうなってる所以も知ってるんだろうね。
「マリはさ、つい最近まで親があんな感じだったから。婚約者であり幼馴染である僕くらいしか友人がいなかったんだ」
もちろん貴族として同年代のパーティへ顔を見せることはあれど、親しくなるのはまた別問題。顔見知り程度の人しか今までいなかったそうだ。
それはそれでまた、随分と辛い。話だけ聞くと普通の貴族なら致命的なものとなり得ただろうし。魔力が高くて、ある意味普通でない貴族になるから助かった、ともいえるのが救いといえば救いかな。
「それで、初めて出来た女友達のラナへ贈るプレゼントは何が良いかって、随分前から話してたんだよ」
「……だというのに聞き忘れた迂闊な私にも、今まで教えて下さらなかったラナにも怒っておるのです」
「そういうことだったのね」
理解した。したけども。そろそろ機嫌直そうよ頼むから。
単純に忘れてただけなのにここまでとなると色々くるから。主に心へのダメージが。
「ちなみにラナの誕生日っていつなの?」
「今夜中、もしくは夜明けに馬で帰ったら実家で祝えるかな」
「……具体的な日付を聞いたのにどうしてそういう答え方になるのさ」
それはマリも怒る答え方だよって言われても。
暦なんて庶民にはちょっと、というかかなりどうでもいいこと、覚えてないよ。王都から離れた地域なら尚更。日の出から日の入りさえ気にしていればいい生活なんだもの。
だから余計、自分の誕生日なんて忘れがちになるんだよね。
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