十人十色(旧題:短編集)

星野 夜空

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類は友が集まる

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 こんな自分なんか。そう思ったことが何回あるだろう。数えるのも馬鹿らしくなるくらい沢山思った。感じた。考えた。
 その度に嫌悪感に苛まれて、止めようとして、失敗して、その繰り返し。僕って本当に学習しない。
 学習する気もなければ、それもそうなのかもしれないけど。
 ぼんやり次の講義場所でお昼時間を過ごしていたら、隣に誰か座ってきた。と思ったら、手元に飲料ゼリーが置かれる。
 それだけで誰が来たのか分かった。

「今日は演習も入るから、少しくらいは胃に入れときな」
「ああ、うん。ありがとう」
「別に、いつものことでしょ」

 いつものこと。そう思うくらいには僕達は一緒にいて、同じことをしてるのか。
 改めて知る事実に、口元が歪んで、歪な笑みが浮かぶ。何も言わず、何もせず、ただ隣にいてくれる彼には感謝するしかない。
 たとえ僕と同じ穴のムジナだとしても、いないよりは遥かに良い。

「……今回は何したの、君は」
「身の上話をして甘えて、でも、結構それが苦痛だったらしくて」
「そりゃそうでしょ、何で話したの?」

 呆れた声音。僕だって分からない。僕の話なんか、面白いどころか不快で、そのせいで色々壊れた思考回路が形成されたのだから。
 だけど、あえて理由を話すなら。

「僕に、甘えてきてくれたから」

 その一言で通じる対の存在は、今度は悲しげに言葉を発した。

「何とも、それはお互いさま、でもないか。相手には悪いけど、向こうは運が悪かったね」
「僕もそう思うよ」

 初対面だから言えること、話せること、許せること、甘えることがあるんだろうけど、僕にはしちゃいけなかった。傷の舐め合いをするにしても、相手が悪すぎる。
 普通の家に産まれたはずなのに、どうしてこうなったんだろう。
 口の中にゼリーをほんの少しだけ流し入れて、必要以上に噛みながらゆっくり飲み込んでいく。それだけでもお腹が限界だと訴えてきて、一口で蓋をした。
 そこでやっと隣を見れば、同じようにまだまだ中身がありそうな、色違いのそれに栓をしているところだった。

「君ももしかして、何かやったの?」
「……受けと攻めが逆転するとさ、精神的に苦痛だよね」

 あぁ、そういうことか。身に覚えがある。

「何でそんな無茶したのさ」
「さあね。自分で自分を追いつめるのに、理由なんて分からないよ」

 確かに、それもそうだ。いや、例え分かっていたとしても、止められるならとっくに止めてる。もし止められていたら、今こうしてお互いを慰めあってない。
 慰めるというより、それこそ傷の舐め合いに近いけれど。
 少しずつ喧騒が増え始めた教室で、僕達は揃って講義の準備をし始めた。
 今日こそ平穏な1日にしたいと思いながら。
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