十人十色(旧題:短編集)

星野 夜空

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その他

俺から見た二人

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 俺の親友は片思いしてる。まあうん、相手が同性とかさ、その相手が人気者とかさ。漫画でよくあるじゃん? んで、両片思いでーってやつ。
 じゃなくて、マジの片思いなんだよな。この前さり気なく脈あるのか聞いたら、同性愛者がいることは分かるし、好きなやつが同性か異性かってだけで理解できるけど、自分が対象になるのは勘弁してほしいって話してたから。嘘か本当かどうか分からねえけど。
 なーのにあいつときたら、大事な高校生活全てをそいつに傾けたんだぜ? もったいなくね? つか馬鹿なのか? それが恋愛だと俺でも分かってるけど、流石にさ、諦め悪いというか、いい加減別の人好きになった方が……と思わなくもない。
 もちろん本人もそこそこに努力はしたらしいが、卒業式の今すら答辞を読み上げる奴を愛しくて切なそうな目で見てるのを横目で見りゃ、それが失敗してるのは丸分かりだ。あいつを見るのは最後にするって言ってたからな。自分の記憶に焼き付けているのかもしれないが。
 というか家が近いから進学するにしろ就職するにしろこのままだと埒が明かないからと都心部へ、それも東京の方へ向かうとかどんだけお前あいつのこと好きなんだよって話だよな。おまけにそれを相手へ伝えてなくて嘘の話をしたんだとか。
 少なくとも自分の中で恋愛感情が昇華するまでは会いたくないらしい。今まであれこれと尽くしてきたのに卒業した途端その態度はどうなんだよ。両極端にもほどがあるだろそれ。と思うものの、俺に伝えてきたのも今朝だったしな。色々葛藤があったのかもしれない。
 あいつの家も中々に崩壊してるし、案外家族にも引っ越し先を教えていないんじゃないか? てか、その確率の方が高そうだ。承諾書は酔ってる時にでも書かせてそうだしな。
 そうこう考えているうちに卒業式は終わってしまった。この後は教室に戻って、正真正銘最後のHRをしておしまいだ。
 いつもは気怠そうに自分の恰好なんか頓着しなさそうな担任は、流石にちゃんとした格好になってて、見慣れない俺達は違和感ありまくりだ。

「あー、その、なんだ。まずは卒業おめでとう。こっから先は自分の足で歩くことが多くなる。自由も責任も全部自分自身で背負ってくんだ。親や先生が守ってくれる叱ってくれるなんてことはなくなっていく。それが大人になってくものだってこれから実感していくだろう。
 だけどだ。同時にいつまでも子どもでいて良いんだ。別に無責任になれっていうわけじゃない。遊ぶ時は遊ぶ、頑張る時は頑張る、困った時は誰かに助けてもらう。辛い時は誰かに話す、聞いてもらう。誰かが辛い時は手を差し出してやる。言いたいことを、言うべき時に言う。じゃないと後悔するからな。
 綺麗事だが、そういったことを永遠に忘れないでほしい。先生からは以上だ」

 最後にそう言って笑う先生に、涙もろい奴は泣いて、そうでない奴はらしくないことをと涙を隠すように笑い。
 あいつは、神妙な表情でいた。



 そろそろ日差しが暑いと感じてきたある日、一通のメールがきた。

『携帯買い替えたんだ、これ連絡先。
 それと、彼に住所、教えたでしょ?
 でも、ありがとう』

「教えるに決まってるだろ、バーカ」

 思わず文面を見て呟いた。一緒に歩いていた奴に変な顔をされたが、独り言だとスルーしてもらう。
 結局あいつら二人に足りなかったものは言葉を使ったコミュニケーションだったらしい。あいつが居なくなったのを躍起になって探し回る様子は見てて面白かった。俺に辿り着くのも案外早かったな、なんて思いながら。
 なんせ俺とあいつが親友だなんて、誰も分かるわけがない。学校で話さない、放課後で遊びもしない。部活が一緒だった訳でもない。ならどこで、なんて愚問だろ?
 今の時代、ネットがあるんだからよ。それに昔より格段に通話しやすくなったしさ。
 しかし一ヶ月ちょっとで俺との繋がりを見つけたのは素直に賞賛したな。よく有象無象あるネットの世界で俺を見つけたもんだ。
 まあ、このメールを見るに、俺の行動は正解だった、ってことだよな?
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