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その他
ワタシだけの秘密
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『それは唐突にきたが、だからといってこない日がないとは限らなく、むしろよくもった方だと内心自画自賛した。
当の本人達は言われたことに意味が分からないと顔に書いてあるくらい、ぽかんとしている。
「今更、なのかもしれないけどね。私にも限界がきたってだけよ」
人の惚気話を聞くのも、惚気あいを見るのも好きだ。けれど、流石に節度はほしいというか……。早い話、ドン引きすることが多くなったから一緒にいるのが嫌になってきた。
ただ、それだけの話だ。
自分勝手な意見だと分かっているものの、こればかりは譲れない。
「別に、飲みの席だったら良いけどさ。電車とかバスとか、普通のお店とかでも同じようなことするんだもの。そんな人達と一緒に居たいとは思わない」
キスするなとか、手を繋ぐなとか、そういう意味じゃない。過剰なスキンシップはここ日本だとかなり異色で浮いてしまう。お国柄ともいうべきそれに、そして以前までは否定的な意見を持っていた二人が同じことをしていると、気づくのはいつだろうか。
おそらく、というか絶対、一生こないだろう。』
☆
ドキドキしながらパソコンを見つめる。何度も何度もリロードのボタンを押す。腱鞘炎になるんじゃないかってくらい連打する。
約束の時間は3時ぴったり。現在時刻、3時半。まさか夜中の3時ではないよな、それともやっぱりボツになったか!? と不安がピークに達した時、待ち望んだメールがやっときた。
『会議が長引き、連絡遅くなり申し訳ありません。
応募された作品、連載決定しました!』
「ぃやったああああ!!」
両手を拳にして上へ突き上げる。念願の夢が、作家としての夢の一歩を歩んだ瞬間だ。喜ぶなという方が無理な話である。
『ただ、終始第三者視点で進んでいくのは時期尚早ではないか、と意見をもらいました。私自身詳細を把握したいので、一度通話か、会って話して内容を詰めましょう。今月で空いている日程等教えてください』
続きの内容を見て、まあそうだよなーと苦笑する。あくまでこれは私の友人が経験した話を、フィクションを加えて書いたものだ。書きやすさが一人称よりも段違いだったから仕方なしに進めていったが、その分気持ちがのった良い作品になったと思った。
これで連載……少なくとも雑誌などに掲載されないとなったらこれ以降の応募はしないと決めていた。その最後に賭けて、本当に良かった。
さて、いつ空いていたかな。なるべく早い方が良いのかなと思いつつ、バッグから取り出した手帳を開いた。
その際、中に閉まっていた鏡が自分の顔を写して眉をひそめた。執筆に夢中だったのと、最近ずっと家にいたからスキンケアを怠っていたのが丸分かりの私がそこにいた。
髭剃らないと。無駄毛もそろそろ生えてきたな。外に出るならウイッグの出番よね、手入れしてあるけどどれにしようか。
その日を思い浮かべながら、返信文を作り始めた。
『──様
連絡ありがとうございます。連載決定、嬉しいです!
日付ですが、**日と**日が空いています。
ご検討、お願い致します。
女子極』
当の本人達は言われたことに意味が分からないと顔に書いてあるくらい、ぽかんとしている。
「今更、なのかもしれないけどね。私にも限界がきたってだけよ」
人の惚気話を聞くのも、惚気あいを見るのも好きだ。けれど、流石に節度はほしいというか……。早い話、ドン引きすることが多くなったから一緒にいるのが嫌になってきた。
ただ、それだけの話だ。
自分勝手な意見だと分かっているものの、こればかりは譲れない。
「別に、飲みの席だったら良いけどさ。電車とかバスとか、普通のお店とかでも同じようなことするんだもの。そんな人達と一緒に居たいとは思わない」
キスするなとか、手を繋ぐなとか、そういう意味じゃない。過剰なスキンシップはここ日本だとかなり異色で浮いてしまう。お国柄ともいうべきそれに、そして以前までは否定的な意見を持っていた二人が同じことをしていると、気づくのはいつだろうか。
おそらく、というか絶対、一生こないだろう。』
☆
ドキドキしながらパソコンを見つめる。何度も何度もリロードのボタンを押す。腱鞘炎になるんじゃないかってくらい連打する。
約束の時間は3時ぴったり。現在時刻、3時半。まさか夜中の3時ではないよな、それともやっぱりボツになったか!? と不安がピークに達した時、待ち望んだメールがやっときた。
『会議が長引き、連絡遅くなり申し訳ありません。
応募された作品、連載決定しました!』
「ぃやったああああ!!」
両手を拳にして上へ突き上げる。念願の夢が、作家としての夢の一歩を歩んだ瞬間だ。喜ぶなという方が無理な話である。
『ただ、終始第三者視点で進んでいくのは時期尚早ではないか、と意見をもらいました。私自身詳細を把握したいので、一度通話か、会って話して内容を詰めましょう。今月で空いている日程等教えてください』
続きの内容を見て、まあそうだよなーと苦笑する。あくまでこれは私の友人が経験した話を、フィクションを加えて書いたものだ。書きやすさが一人称よりも段違いだったから仕方なしに進めていったが、その分気持ちがのった良い作品になったと思った。
これで連載……少なくとも雑誌などに掲載されないとなったらこれ以降の応募はしないと決めていた。その最後に賭けて、本当に良かった。
さて、いつ空いていたかな。なるべく早い方が良いのかなと思いつつ、バッグから取り出した手帳を開いた。
その際、中に閉まっていた鏡が自分の顔を写して眉をひそめた。執筆に夢中だったのと、最近ずっと家にいたからスキンケアを怠っていたのが丸分かりの私がそこにいた。
髭剃らないと。無駄毛もそろそろ生えてきたな。外に出るならウイッグの出番よね、手入れしてあるけどどれにしようか。
その日を思い浮かべながら、返信文を作り始めた。
『──様
連絡ありがとうございます。連載決定、嬉しいです!
日付ですが、**日と**日が空いています。
ご検討、お願い致します。
女子極』
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