十人十色(旧題:短編集)

星野 夜空

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独り身でお願いします

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「リア充爆発しろ」

 その言葉が一般的になってどれほどの時間が経ったか。私の心境はまさにそれだった。ただまあ、気まずさや不愉快といったマイナス感情というより微笑ましさ、幸せのおすそ分けをされるといった感情の方が勝ってるから良いんだけど。
 でもね、最近こうもカップル成立の報告を受けるの何なの? 春? 春だから? 季節が関係するの? いや違うって分かってるけど!
 なんて叫びたい衝動が出てくるほど、周りはいつの間にかカップルだらけになっていた。
 こうなると普通、自身も恋人、というか好きな人? がいたら良いのにって思うんだろうけど、あいにく初恋すらまだな私には恋愛のれの字がいまいちピンときてない状態だ。だから焦りも一切なく、素直に祝福できるのかもしれない。
 まもなく成人を迎える人間としてそれはどうなんだとは思うけど、こればかりは仕方ない。……付き合ったことは何度かあるけどね。違和感しかないから、いつも長続きしなかった。
 さて、どうしていきなり私がこんなことを言い出したかというと、ただ今私はカラオケ合コンの真っ最中だからです。
 周りが男女揃って何というか、盛り上がるのは良いんだけど、こう、うん、恋愛が充実じゃなくて対人関係イベントに慣れてかつ充実してる人のノリについていけない。
 これならまだこの前友人達が付き合いました報告を受けたカラオケの方が楽しかったよ本当に。
 しばらくは独り身で良いっていう人間に数合わせの合コンがそもそもきついのにその雰囲気すら慣れないなんて拷問よね。何度帰ろうかとバッグ持って部屋を出かけたことか……。
 何度目かの溜息を吐きかけて飲み込む、という所業をした時、ふと視線を感じて顔を前に向けると、比較的顔が整った人がにこりと笑いかけてきた。失礼のない程度に笑い返すと、歌いますか? と聞かれた。どうやら歌ってないことを気にしているようだ。

「いえ、少し疲れてしまって。休憩しているところなんです」
「ああ、そうなんですね。普段どんな曲歌うんですか」

 そんな会話をするうち、いい加減疲れてきたというのがバレてきたのか抜け出しますか? と聞かれた。それが何を意味するか分からないほど馬鹿でもない。
 というか放置していてよお願いだから。私はこの後控えてる友人との飲み、というなのバカップル観察をしたいんだよ! 喉まで出かかったそれを口にしなかったのを誰か褒めて。
 だけどそんな私の心の内など知る由もない目の前の男性はあれこれと話しかけてくる。そろそろ鬱陶しくなってきて隣の子も巻き込んで話すと、いつしかその子主導の会話に切り替わる。ちなみに私はそれに頷けば良いだけなのでかなり楽になった。
 だというのにちょくちょく私へ質問というか、話振るのやめてくださいませんか?
 あーもう。早くこの時間終われー。
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