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その他
ー昼間の出来事
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「あ」
バスの時間、間違えた。三十分どうしよう。そんな気持ちになる。
年末が明けた病院は混む。土日もやってくれる場所なら尚更だ。激混み、というやつだ。精神的にもすり減る道のりを来た先にあったのがこれならどんな仕打ちだろうと思うが、そもそも平日の診察しか行わない先生が時間を作ってくれたのだから、と思って待ち続けること十数分。診察も待ち時間もそこまで長くなく終わったが、問題は調剤薬局だった。
こちらは少々、というか割合でいえばかなり待たされた。年末年始って感じがするという思いを抱きながら待ち続けること一時間。ようやく呼ばれてさあ帰ろうとしたらバスの読み間違いだ。これには我がことながらがっくりときた。世間でいう萎えた、というものだ。
けれどまあ、こうして何がしらあるからと、病院に併設されたカフェへ入る。こちらもそこそこ混んでいるが、先ほどの診察や薬局に比べたら大したことはなかった。
「ふう」
温まるコーヒーを飲みながら、ふとカフェの出入口の先、受付の方へ目を向ける。一年前のことを考えながら。
一年前の今頃は、忙しない生活を送っていた。年末年始と言えど仕事はあり、休みは不規則。一人暮らしをしつつ、趣味仲間の主催するイベント参加に奔走する。中々に大変で、けれど楽しい生活だったと振り返る。
あれはあれで良かったと思う反面だ、今の、心穏やかな生活も悪くないと思う。仕事を変えた大変さや、家族との諍いは未だ解決しないけれど。あの、ある種爛れた生活へ戻りたいかというと戻りたくないとさえ思う。
あの頃欲しかった本当の幸せというのを、今やっと手に入れた。そんな気がするのだ。
と、ぼんやりそんなことへ想いを寄せていると、ポケットに入れたままの携帯が震えた。なんだろうと思い取り出すと、愛しの人から『病院お疲れ様』とメッセージが来ていた。年始の混み具合は予想していたが想像以上だった為、その言葉は優しく染み込んだ。
『ありがとう』と打ち込みながら、そろそろ時間だと席を立つ。あの頃の無茶で体を壊し、こうして今も病院へ通う。それは戒めのようなもの。二度と同じ過ちは繰り返さないというけじめだ。
外に出ると冷えた空気が出迎える。けれど木々には蕾が生まれていた。春の足音がし始めている。そんな日の出来事だった。
バスの時間、間違えた。三十分どうしよう。そんな気持ちになる。
年末が明けた病院は混む。土日もやってくれる場所なら尚更だ。激混み、というやつだ。精神的にもすり減る道のりを来た先にあったのがこれならどんな仕打ちだろうと思うが、そもそも平日の診察しか行わない先生が時間を作ってくれたのだから、と思って待ち続けること十数分。診察も待ち時間もそこまで長くなく終わったが、問題は調剤薬局だった。
こちらは少々、というか割合でいえばかなり待たされた。年末年始って感じがするという思いを抱きながら待ち続けること一時間。ようやく呼ばれてさあ帰ろうとしたらバスの読み間違いだ。これには我がことながらがっくりときた。世間でいう萎えた、というものだ。
けれどまあ、こうして何がしらあるからと、病院に併設されたカフェへ入る。こちらもそこそこ混んでいるが、先ほどの診察や薬局に比べたら大したことはなかった。
「ふう」
温まるコーヒーを飲みながら、ふとカフェの出入口の先、受付の方へ目を向ける。一年前のことを考えながら。
一年前の今頃は、忙しない生活を送っていた。年末年始と言えど仕事はあり、休みは不規則。一人暮らしをしつつ、趣味仲間の主催するイベント参加に奔走する。中々に大変で、けれど楽しい生活だったと振り返る。
あれはあれで良かったと思う反面だ、今の、心穏やかな生活も悪くないと思う。仕事を変えた大変さや、家族との諍いは未だ解決しないけれど。あの、ある種爛れた生活へ戻りたいかというと戻りたくないとさえ思う。
あの頃欲しかった本当の幸せというのを、今やっと手に入れた。そんな気がするのだ。
と、ぼんやりそんなことへ想いを寄せていると、ポケットに入れたままの携帯が震えた。なんだろうと思い取り出すと、愛しの人から『病院お疲れ様』とメッセージが来ていた。年始の混み具合は予想していたが想像以上だった為、その言葉は優しく染み込んだ。
『ありがとう』と打ち込みながら、そろそろ時間だと席を立つ。あの頃の無茶で体を壊し、こうして今も病院へ通う。それは戒めのようなもの。二度と同じ過ちは繰り返さないというけじめだ。
外に出ると冷えた空気が出迎える。けれど木々には蕾が生まれていた。春の足音がし始めている。そんな日の出来事だった。
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