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その他
知恵の聖女
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「おうふ。マジですか」
そんな言葉がついてでたのは許してほしい。だってこの世の中でまさか、まさか、ファンタジーな出来事に遭遇するなんて誰が思うの?
科学が発展した国で、魔法のようなものを見るなんて。それともなにか、世間は変わって魔法が使えるようになったのだろうか。
足元にある魔法陣を見ると淡く輝いていると同時に、周りの人々の何やら言葉? が止まる。
『成功した! 女神様がご降臨されたぞ!』
『これでこの国も救われる!』
と思いきや、喜びを隠しきれないといった具合で話し合う皆さん。何語だ。少なくとも英語じゃない。
「えー。マジで?」
召喚って、本当にあるの?
☆
あれやこれやというまに何やらゴージャスな部屋へ通される。えっと、これがいわゆる玉座の間ですか?
奥から人が現れると左右前後ろといた人達皆頭を下げる。とりあえずならって頭を下げ続けると、一声かかり全員が頭を上げる。問題ない、的な一言だったのかな。うーん、言葉が分からないとここまで不便とは。
一番先頭にいた人と、さっき現れた人が会話していく。と、ひと段落したのか二人して私へ目を向けてきた。でも前後の会話、というか、内容すら分からない。部屋に沈黙がおりた。
『相手は喋れるのか?』
『は。先ほど何やら言葉を発していたので。しかしどこの言語かは……』
『ふむ。神の国から来た者だ。もしかしたら言語が違うのかもしれぬ』
『なんと! では意思疎通はどうしていきましょう』
さっきと比べて短い会話をする二人。おもむろに二人とも自分を指差し、「──」「──」と順番に言葉を発する。名前? と思って白い服を着た、ここまで案内してくれた人のことを同じ発音で返すと頷かれた。日本の発音に近くて良かった。噂に聞くイタリア語系だったら巻き舌が大変らしいから。
さて、やっぱり言語が違うことがここで明らかになった。もしかしたら王政が残ってる国、なのかもしれないけど、どう見ても服装が何百年か前なのよね。歴史の教科書に出てきそうなやつ。どう見るべきなのだろう、これは。
というか、帰れるのかな。拉致だったら泣きたい。いや学校がないから良いのかもしれないけど、言語が通じない場所で強くいられる人間じゃない。
『言葉を覚えてもらうしかあるまい。明日までに教師をつけよう』
『御意』
☆
拉致されて一ヶ月。言語の解決は通訳だった。
奇跡的に遠い遠い国、しかも小国の民族語が私と同じ言語だった。アタラッシャー語とこっちでは言うらしい。
最初の一週間は頑張って覚えようと思ったけど、無理だと思った。というか悟ったというのが正しい。
困ったことにこの国に限らず、ほとんどの国では話される言語が同じだった。加えて教師は「話せる前提」で言語を教えていく人がほとんどで、話せない人、つまり異言語の人との会話ってしたことがないらしく、学んでもちんぷんかんぷんだった。これは上の人も想定外らしく、とても頭を抱えたらしい。
苦肉の策として、共通言語がなかった時代の名残を持つ人を国中からかき集めて話してもらったけど、それも駄目。やけっぱちで国外にもそういう人を探していると伝えると、唯一残る小国民族がたまたま私と同じ言語を話せた。
本当に奇跡だよなぁと思っていると、国王様が来室したと通訳の人から告げられた。
『息災であるか? 困ったことは?』
「元気ですか。困りごとはあるか」
「特には。……私は帰ることできますか?」
『元の国へ帰ることはできるのでしょうか』
『残念ながら、呼び出すことは出来てもその逆は出来ない。諦めてほしい』
「出来ない。諦めろ」
あぁ、うん、知ってた。そっか、やっぱり帰れないか。ぐぬぬ。諦めてくれと言われて諦められるものか。
学校に行かなくて贅沢三昧なのは、きっと誰でも憧れる。でも、それ相応の対価はもちろん必要。今回でいうと教養といったところだろうか。
いわゆる夜のパーティ、昼間の女性の集まりといったものなんてよく知らない。知らないからこそ恥が恥として分からない。分からないからこそ失態は沢山増えていく。いい加減国王様にも耳に入って良いはずなのに、こうして手助けしてくれるのは何でなの。
『そう、そうだ。この前話していたデンシャについてもっと詳しく話せるか?』
「デンシャを知りたいらしい。前の話より詳しく言えるか?」
「電車ですか? えっと、電気を使って──」
よくも分からず、私はいつも通り元いた世界のことを話す。それが、またこの国の発展に繋がるとも知らず。
そんな言葉がついてでたのは許してほしい。だってこの世の中でまさか、まさか、ファンタジーな出来事に遭遇するなんて誰が思うの?
科学が発展した国で、魔法のようなものを見るなんて。それともなにか、世間は変わって魔法が使えるようになったのだろうか。
足元にある魔法陣を見ると淡く輝いていると同時に、周りの人々の何やら言葉? が止まる。
『成功した! 女神様がご降臨されたぞ!』
『これでこの国も救われる!』
と思いきや、喜びを隠しきれないといった具合で話し合う皆さん。何語だ。少なくとも英語じゃない。
「えー。マジで?」
召喚って、本当にあるの?
☆
あれやこれやというまに何やらゴージャスな部屋へ通される。えっと、これがいわゆる玉座の間ですか?
奥から人が現れると左右前後ろといた人達皆頭を下げる。とりあえずならって頭を下げ続けると、一声かかり全員が頭を上げる。問題ない、的な一言だったのかな。うーん、言葉が分からないとここまで不便とは。
一番先頭にいた人と、さっき現れた人が会話していく。と、ひと段落したのか二人して私へ目を向けてきた。でも前後の会話、というか、内容すら分からない。部屋に沈黙がおりた。
『相手は喋れるのか?』
『は。先ほど何やら言葉を発していたので。しかしどこの言語かは……』
『ふむ。神の国から来た者だ。もしかしたら言語が違うのかもしれぬ』
『なんと! では意思疎通はどうしていきましょう』
さっきと比べて短い会話をする二人。おもむろに二人とも自分を指差し、「──」「──」と順番に言葉を発する。名前? と思って白い服を着た、ここまで案内してくれた人のことを同じ発音で返すと頷かれた。日本の発音に近くて良かった。噂に聞くイタリア語系だったら巻き舌が大変らしいから。
さて、やっぱり言語が違うことがここで明らかになった。もしかしたら王政が残ってる国、なのかもしれないけど、どう見ても服装が何百年か前なのよね。歴史の教科書に出てきそうなやつ。どう見るべきなのだろう、これは。
というか、帰れるのかな。拉致だったら泣きたい。いや学校がないから良いのかもしれないけど、言語が通じない場所で強くいられる人間じゃない。
『言葉を覚えてもらうしかあるまい。明日までに教師をつけよう』
『御意』
☆
拉致されて一ヶ月。言語の解決は通訳だった。
奇跡的に遠い遠い国、しかも小国の民族語が私と同じ言語だった。アタラッシャー語とこっちでは言うらしい。
最初の一週間は頑張って覚えようと思ったけど、無理だと思った。というか悟ったというのが正しい。
困ったことにこの国に限らず、ほとんどの国では話される言語が同じだった。加えて教師は「話せる前提」で言語を教えていく人がほとんどで、話せない人、つまり異言語の人との会話ってしたことがないらしく、学んでもちんぷんかんぷんだった。これは上の人も想定外らしく、とても頭を抱えたらしい。
苦肉の策として、共通言語がなかった時代の名残を持つ人を国中からかき集めて話してもらったけど、それも駄目。やけっぱちで国外にもそういう人を探していると伝えると、唯一残る小国民族がたまたま私と同じ言語を話せた。
本当に奇跡だよなぁと思っていると、国王様が来室したと通訳の人から告げられた。
『息災であるか? 困ったことは?』
「元気ですか。困りごとはあるか」
「特には。……私は帰ることできますか?」
『元の国へ帰ることはできるのでしょうか』
『残念ながら、呼び出すことは出来てもその逆は出来ない。諦めてほしい』
「出来ない。諦めろ」
あぁ、うん、知ってた。そっか、やっぱり帰れないか。ぐぬぬ。諦めてくれと言われて諦められるものか。
学校に行かなくて贅沢三昧なのは、きっと誰でも憧れる。でも、それ相応の対価はもちろん必要。今回でいうと教養といったところだろうか。
いわゆる夜のパーティ、昼間の女性の集まりといったものなんてよく知らない。知らないからこそ恥が恥として分からない。分からないからこそ失態は沢山増えていく。いい加減国王様にも耳に入って良いはずなのに、こうして手助けしてくれるのは何でなの。
『そう、そうだ。この前話していたデンシャについてもっと詳しく話せるか?』
「デンシャを知りたいらしい。前の話より詳しく言えるか?」
「電車ですか? えっと、電気を使って──」
よくも分からず、私はいつも通り元いた世界のことを話す。それが、またこの国の発展に繋がるとも知らず。
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