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その他
「さて、こっちも行くかー」
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「仕事だ、嫌だなぁ」
知らず独り言を言ってしまう。年末の忙しさに加え、普段の業務もあるのだ。もうてんてこまいである。
年が明けても年度末へ向けてのスタートダッシュが始まる。まさにこれが地獄か。そんなわけないけど。
それでも仕事がないよりマシか、と思う。一時期体調を崩して二週間ほど仕事が出来なかったことがあるが、何もせずにいるという苦痛が耐えられなかった。いや、割としんどかった。楽しかったのは最初の三日間だけだった。あとの一週間くらいはとにかく時間を潰すだけだった。
そんなことを思いながら職場へ向かう。満員電車からの満員電車は中々辛いなぁと思っていると、手の中で震える携帯。何とかして目の前に出すと恋人がようやく起きたらしい。『おはようー…眠い』ときていた。
『おはよう。間に合うか?』
『間に合わせる』
『気合いか』
『気合いだ』
それは大丈夫なのか。いつもギリギリな気がするんだが。まあ、無事であるのなら良しとしよう。
ようやく会社の最寄りに着いて降りる。オフィス街であるからここでは沢山の人が吐き出されるように改札へ向かっていく。人の波だと思いながら駅を出て地下道を歩く。行き着くとこまで行き、地上へ出ればあら不思議、会社である。
毎度思うがこの辺の地理が分からない要因は地下を歩くからだよなと感じながら守衛さんに挨拶をして、エレベーターを待つ間に『会社なう』と打ち込んだ。
比較的すぐに来たエレベーターへ乗り、部署のある階で降りるとまた携帯が震えた。席で確認すると『こっちは家出た』『無理せず無茶せず』といつもの文面がきた。
自覚はないが、確かに定時で帰ろうと多少頑張りすぎるきらいはある。それこそ休み時間を休み時間として過ごさないことを厭わない程度には。それを見透かされているのだろうと思うと、流石自分の恋人だ、分かってるとしか言えない。
とはいえ、同じ言葉をそっくりそのまま本人へ返したいのだが。つい最近まで療養の為に山奥で過ごしていた恋人なのだ、転職と社会復帰したての年末は辛くないか、不安なこの気持ちを知ってほしい。
『そっちも無理しちゃ駄目だよ。気をつけて』
『はーい』
返事だけは良いものである。やれやれと思って苦笑する。でも好きなんだから、惚れた弱みだろうか。
さて、そんな会話をしていればあっという間に始業時間だ。
『時間だ。またねー』
『おうさ。またのー』
打ち込み終わると同時に部長が立ち上がり「朝礼始めるぞー」と気怠げに告げた。椅子を鳴らしながら立ちつつ、恋人は無事に間に合うのだろうかとちょっとだけ心配になった。
今日も無理せず無茶せず、ちょっとだけ頑張りながら仕事しよう。
知らず独り言を言ってしまう。年末の忙しさに加え、普段の業務もあるのだ。もうてんてこまいである。
年が明けても年度末へ向けてのスタートダッシュが始まる。まさにこれが地獄か。そんなわけないけど。
それでも仕事がないよりマシか、と思う。一時期体調を崩して二週間ほど仕事が出来なかったことがあるが、何もせずにいるという苦痛が耐えられなかった。いや、割としんどかった。楽しかったのは最初の三日間だけだった。あとの一週間くらいはとにかく時間を潰すだけだった。
そんなことを思いながら職場へ向かう。満員電車からの満員電車は中々辛いなぁと思っていると、手の中で震える携帯。何とかして目の前に出すと恋人がようやく起きたらしい。『おはようー…眠い』ときていた。
『おはよう。間に合うか?』
『間に合わせる』
『気合いか』
『気合いだ』
それは大丈夫なのか。いつもギリギリな気がするんだが。まあ、無事であるのなら良しとしよう。
ようやく会社の最寄りに着いて降りる。オフィス街であるからここでは沢山の人が吐き出されるように改札へ向かっていく。人の波だと思いながら駅を出て地下道を歩く。行き着くとこまで行き、地上へ出ればあら不思議、会社である。
毎度思うがこの辺の地理が分からない要因は地下を歩くからだよなと感じながら守衛さんに挨拶をして、エレベーターを待つ間に『会社なう』と打ち込んだ。
比較的すぐに来たエレベーターへ乗り、部署のある階で降りるとまた携帯が震えた。席で確認すると『こっちは家出た』『無理せず無茶せず』といつもの文面がきた。
自覚はないが、確かに定時で帰ろうと多少頑張りすぎるきらいはある。それこそ休み時間を休み時間として過ごさないことを厭わない程度には。それを見透かされているのだろうと思うと、流石自分の恋人だ、分かってるとしか言えない。
とはいえ、同じ言葉をそっくりそのまま本人へ返したいのだが。つい最近まで療養の為に山奥で過ごしていた恋人なのだ、転職と社会復帰したての年末は辛くないか、不安なこの気持ちを知ってほしい。
『そっちも無理しちゃ駄目だよ。気をつけて』
『はーい』
返事だけは良いものである。やれやれと思って苦笑する。でも好きなんだから、惚れた弱みだろうか。
さて、そんな会話をしていればあっという間に始業時間だ。
『時間だ。またねー』
『おうさ。またのー』
打ち込み終わると同時に部長が立ち上がり「朝礼始めるぞー」と気怠げに告げた。椅子を鳴らしながら立ちつつ、恋人は無事に間に合うのだろうかとちょっとだけ心配になった。
今日も無理せず無茶せず、ちょっとだけ頑張りながら仕事しよう。
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