十人十色(旧題:短編集)

星野 夜空

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その他

秘め事

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 たとえ一時期的な関係でも、刹那的な時間でも良い。
「私」を必要としてくれるなら、犯罪でない限り何でもする。グレーゾーンの場合は、内容によりけり。
 平凡を偽って暮らす反面、そんな生活をしているだなんて誰が思うだろうか。考えつくのだろうか。それとも案外、誰でも皆、こんな風に日々を過ごしているのかもしれない。
 そんな風に思いながら身支度を済まして、私は扉を開けた。
 今日も怠いなあ、なんて自分のことなのに考えながら指定された場所へ向かっている途中、震えているポケットに気づいて携帯を取り出すと、呼び出した本人からだった。

「もしもし、どうしたの?」
『ごめん! 仕事が今日長引きそうで、無理っぽい! 埋め合わせはするから……!』
「ああ、うん。無理だけはしないようにね?」
『ありがとう。本当ごめんな!』

 そう言って切れた通話。合間を縫ってしてきたことをうかがわせる声音。よほど忙しいのだろうなと思って、画面に表示された暦を見つめて思い出した。
 そっか、冬も終わりだからか。そりゃ忙しいよな、と。現場系の職場にプラスして人手不足な昨今、常に忙しいが加わるから忘れてた。
 だけどこうも急に暇になると困る。昼間は家事をしていたから何とかなったけど、夕方も過ぎた今から急に空くと、どうしたらいいか分からなくなる。平日が休日の時の悩みだ。
 かと言ってお金がある、とも言い難いこの状況。出たばかりだし家に引き返すのもありか、と思っている最中、その連絡はきた。

『今夜20時、いつもの場所に行け』

 グッドタイミングだと内心呟いたのは内緒。毎回急な連絡だけど、まるで監視しているのではと思う時にくるものだから、断ったことが今のところない。
 それゆえに優先的にを回せてもらっている、らしい。風の噂でしか知らないから真偽不明だけど、この業界的にそれはあり得そうだ。
 時間に融通がきくわけではないけど、学生でもない限り応対できない時間をあえてくれてるのだから。

「さて、一稼ぎしますか」

 今夜はどんな方で、どんな風に扱われるのだろう。想像するだけでゾクゾクする。
 ああ早く、行かなくちゃ。
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