俺はフローズンで、アイツはアイスで

星野 夜空

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 っておじさん相手に啖呵切ったのは良いんだけど、正直、何をどうしたら良いのかさっぱり分からねえ。恋愛ごとに疎いとかそういうんじゃなく、マジで何考えてるか分かんねえんだよ。

「──なあ、ハル」

 だから俺は、俺らしくすることにした。

「俺、凍結症になった」
「……え」

 書いてたシャーペンを止めてしっかりこっちを見てくる。目ぇまん丸にして、めっちゃ驚いてるって顔で。
 そりゃそうだよな。まだパートナーになるかどうかも決まってねえのに、片方が発症なんてしちまったら困るよな。俺もきっと、そう考えるから。

「あ、言っとくけどちゃんと相手はお前だかんな。勘違いしないでくれよ」
「……う、ん……え、僕……?」
「おう、お前」
「何で……僕なんかに……」

 顔をしわくちゃにして、今にも泣きそうな表情して。
 何で、はこっちの言葉だよ。どうしてハルが、そんな顔するんだよ。
 まるで俺がお前を好きになるのは予想外って感じじゃんか。

「……僕、……僕、言葉……苦手で……だから、友達もいない……根暗で、勉強しか、できない、のに」
「そんなの関係ないだろ。俺はハルだから発症したんだよ」

 俺に分かるように話してくれたり、話題考えてくれたり。俺の遊びに付き合ってくれたり、それで楽しそうに笑ったりしてる姿が眩しかったり。普段は硬い表情が、そん時だけ柔らかくて、もっと見たいと思ったりして。
 クルクル変わる表情がめっちゃ好きだから、好きになった。それが理由じゃ、ダメなんか?

「ぅっ……っ……健、くん……」

 大粒の涙を流して、目を溶かしてしまうんじゃねえかってくらい泣いて、慌てて目に触れると、その手にスリスリさせてくる。
 可愛い。じゃない。え、好きなヤツ泣かした俺、どうする俺。

「あ、のさ……吃、音症って……聞いたこと、ある……?」
「きつおんしょー?」

 バカ丸出し。知らねえってことが丸分かりの発音。だけど予想通りって顔をして、ハルは続ける。

「ほん、とは……もっと、早く、治ったり……軽く、なったり、する、病気、なんだ、て。……でも、僕は、まだ、まだ……こんな、風にしか……話せ、ない……から……家族、からも……腫れ物、みたいに……されてて……」
「はあ? 何だよそれ。それだってハルの魅力だろ。俺に言わせれば、俺みたいなバカにも分かるように話してくれる時間作りみたいじゃんか。良いじゃん、何が悪いんだよ」
「……た、ける、くん、は……強い、ね。僕には……むず、か、し……から……」

 そのままずーっと泣き続けるハルに、頭を撫でながら、心の中はどうすればいいかでグルグルさせる。
 俺、泣かれるの、マジで無理なんだよー!

「……あー、あのさ。俺、頭悪いから気分害したらごめんな。
 俺さ、ぶっちゃけハルの喋り方は気になってはいたんだよ。けどそれはゆっくりでイライラするからじゃなくてさ。長く話そうとするとハル、顔が暗くなるからさ。話すの苦手なんかなとか、俺がもっと頭良くなったらハルの負担減るかなとか、そういう、ええと、ええと。
 とにかくハルの話し方が俺に原因あったら俺、ヤバくね? っていう、そっちの心配とか、ハルの暗い顔させるくらいなら無言でも良くね? っていう気持ちとかで。マジでその、ハルが後ろめたく思うようなことは必要ねえってか、あの、つまりさ。俺が頭悪いばかりにハルに負担かけて悪いなって思ってたんだよ。
 だから病気だって聞いて、正直安心した。俺が原因じゃないってことと、ハルがハルらしくなるなら、表情とか明るくなるんじゃね? って思ったから。
 俺、ハルがちゃんと笑ってる方が好きだからさ。これからはそういう顔、沢山見せてくれるってことで良いか?」
「……ぅ、ぅっうああーっ」

 だぁぁっ! 何でそれで大泣きになるんだよ!
 助けて砌おじさん! 俺マジでこういうのどうしたらいいか分かんねえんだよ、誰か教えてくれ!
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