俺はフローズンで、アイツはアイスで

星野 夜空

文字の大きさ
上 下
3 / 4

3

しおりを挟む
 っておじさん相手に啖呵切ったのは良いんだけど、正直、何をどうしたら良いのかさっぱり分からねえ。恋愛ごとに疎いとかそういうんじゃなく、マジで何考えてるか分かんねえんだよ。

「──なあ、ハル」

 だから俺は、俺らしくすることにした。

「俺、凍結症になった」
「……え」

 書いてたシャーペンを止めてしっかりこっちを見てくる。目ぇまん丸にして、めっちゃ驚いてるって顔で。
 そりゃそうだよな。まだパートナーになるかどうかも決まってねえのに、片方が発症なんてしちまったら困るよな。俺もきっと、そう考えるから。

「あ、言っとくけどちゃんと相手はお前だかんな。勘違いしないでくれよ」
「……う、ん……え、僕……?」
「おう、お前」
「何で……僕なんかに……」

 顔をしわくちゃにして、今にも泣きそうな表情して。
 何で、はこっちの言葉だよ。どうしてハルが、そんな顔するんだよ。
 まるで俺がお前を好きになるのは予想外って感じじゃんか。

「……僕、……僕、言葉……苦手で……だから、友達もいない……根暗で、勉強しか、できない、のに」
「そんなの関係ないだろ。俺はハルだから発症したんだよ」

 俺に分かるように話してくれたり、話題考えてくれたり。俺の遊びに付き合ってくれたり、それで楽しそうに笑ったりしてる姿が眩しかったり。普段は硬い表情が、そん時だけ柔らかくて、もっと見たいと思ったりして。
 クルクル変わる表情がめっちゃ好きだから、好きになった。それが理由じゃ、ダメなんか?

「ぅっ……っ……健、くん……」

 大粒の涙を流して、目を溶かしてしまうんじゃねえかってくらい泣いて、慌てて目に触れると、その手にスリスリさせてくる。
 可愛い。じゃない。え、好きなヤツ泣かした俺、どうする俺。

「あ、のさ……吃、音症って……聞いたこと、ある……?」
「きつおんしょー?」

 バカ丸出し。知らねえってことが丸分かりの発音。だけど予想通りって顔をして、ハルは続ける。

「ほん、とは……もっと、早く、治ったり……軽く、なったり、する、病気、なんだ、て。……でも、僕は、まだ、まだ……こんな、風にしか……話せ、ない……から……家族、からも……腫れ物、みたいに……されてて……」
「はあ? 何だよそれ。それだってハルの魅力だろ。俺に言わせれば、俺みたいなバカにも分かるように話してくれる時間作りみたいじゃんか。良いじゃん、何が悪いんだよ」
「……た、ける、くん、は……強い、ね。僕には……むず、か、し……から……」

 そのままずーっと泣き続けるハルに、頭を撫でながら、心の中はどうすればいいかでグルグルさせる。
 俺、泣かれるの、マジで無理なんだよー!

「……あー、あのさ。俺、頭悪いから気分害したらごめんな。
 俺さ、ぶっちゃけハルの喋り方は気になってはいたんだよ。けどそれはゆっくりでイライラするからじゃなくてさ。長く話そうとするとハル、顔が暗くなるからさ。話すの苦手なんかなとか、俺がもっと頭良くなったらハルの負担減るかなとか、そういう、ええと、ええと。
 とにかくハルの話し方が俺に原因あったら俺、ヤバくね? っていう、そっちの心配とか、ハルの暗い顔させるくらいなら無言でも良くね? っていう気持ちとかで。マジでその、ハルが後ろめたく思うようなことは必要ねえってか、あの、つまりさ。俺が頭悪いばかりにハルに負担かけて悪いなって思ってたんだよ。
 だから病気だって聞いて、正直安心した。俺が原因じゃないってことと、ハルがハルらしくなるなら、表情とか明るくなるんじゃね? って思ったから。
 俺、ハルがちゃんと笑ってる方が好きだからさ。これからはそういう顔、沢山見せてくれるってことで良いか?」
「……ぅ、ぅっうああーっ」

 だぁぁっ! 何でそれで大泣きになるんだよ!
 助けて砌おじさん! 俺マジでこういうのどうしたらいいか分かんねえんだよ、誰か教えてくれ!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

俺のアイスは、一目惚れ

星野 夜空
BL
アイスとフローズン。それは近代に発見された、遺伝子異常というなの疾患通称名だ。 彼こと日比谷 透(ひびや とおる)は「フローズン」。ドナーである「アイス」の人々に会うものの、中々人としての相性が合わずいまだに相棒的存在は居ない。 そんな中、とある日の帰り道に彼は出逢った。途端に始まった指先の冷たさに、彼は知る。 症状が、発現したのだと。 *フローズンバースの認知がされ始めた頃を想定しています

ある意味王道ですが何か?

ひまり
BL
どこかにある王道学園にやってきたこれまた王道的な転校生に気に入られてしまった、庶民クラスの少年。 さまざまな敵意を向けられるのだが、彼は動じなかった。 だって庶民は逞しいので。

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で…… だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?! ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に? 攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

【完結】乙女ゲーの悪役モブに転生しました〜処刑は嫌なので真面目に生きてたら何故か公爵令息様に溺愛されてます〜

百日紅
BL
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でしたーー。 最後は処刑される運命の悪役モブ“サミール”に転生した主人公。 死亡ルートを回避するため学園の隅で日陰者ライフを送っていたのに、何故か攻略キャラの一人“ギルバート”に好意を寄せられる。 ※毎日18:30投稿予定

処理中です...