お師匠様は自由すぎる

星野 夜空

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お師匠様とその力

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 こんにちは、ミリーです。最近、お師匠様の悪名がまた増えました。ガラスを見ると壊したくて仕方ない悪魔だ、と。そんなことあるはずがありません。昔、戦争でお会いした時のお師匠様は、むしろ大事にする方でした。それとも心変わりでもされたのでしょうか? 分かりませんが、謎は謎のままにしましょう。
 さて、今日の課題は陣作成です。発動した時も踏まえて外──森の中で行います。

「そこの文字は古語を使うんじゃない。非効率だから現代語を使う」
「はい、分かりました」
「ここを接続するならある程度の魔力流れにしたい。となれば近代語を使うと良い。現代語は流れが良すぎる」
「え、でも流れが良くないと後の文字に支障出ませんか?」
「暴発の可能性を考えろ。流れを良くすればいいってわけじゃない」

 お師匠様はその知識を惜しみなく出されます。秘匿はされておりません。お師匠様の技術は、盗めたとしてどうにかなるものではないからです。
 そう、こうして実践的に学ばなければならないのですから。

「これで完成だ」
「……これは……」
「唱えたら発動するから言わんが、初級魔術に相当する。ただし陣自体は簡略されているから、ぱっと見はそう見えないだろ」
「ええ、そうですね。というより、何故ここまで略しているのに……」
「魔力の流れが良ければ良いほど威力が上がるから現代語が開発されたが、暴発を防ぐためには他の言葉を組み合わせる。すると陣はでかくなっていく。ここまではいいな?」
「はい。なんとなくですが分かります」
「では、それを簡略かつ暴発を防いでいくにはどうしたらいい」

 え。それは……えーとえーと……。えー、と……。

「……分かりません。暴発を防ぐなら一定の流れにしていけば良いのでしょうけれど、簡略しながらもなると……」
「古語で使用する部分を現代語に意訳するんだ。緩急に近代語、止めるなら古語。魔力の流れを把握することだ」

 な、なるほど。文章となりがちな古語を現代語に直しつつ、流れが良すぎる部分は近代語にして調整する。止める部分、つまり流れを停止させるなら古語を使用する、と。確かにそれなら省略していくことは可能にして、威力は変わりません。暴発を防ぐのは手腕や技量によるものでしょうが……いわゆる慣れというものになるのでしょう。
 理論上、理にかなっています。いますが、しかし。それならお師匠様は、詠唱と陣を省略に省略して、威力を最大限にする技術を既に完全掌握していることになります。そうでなければ、先日の大爆発はあり得ません。
 お師匠様の魔法は、魔術は、一体どれほどの威力を秘めているのでしょうか。恐ろしいものがあります。
 次の陣だ、と教えてくださる手を見ながらそう思いました。
 
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