お師匠様は自由すぎる

星野 夜空

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お師匠様、その方は?

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 今日は珍事もあるものです。サルカさん以外に訪ねてくる方がいらっしゃるなんて。あいにくお師匠様は留守なので家へ上がっていただくわけにもいきませんが。

「初めましてだよね? 僕はカンプ。ルキアとは同期なんだ」
「そうなのですね。私はミリーラ。ミリーとお呼びください」
「ミリーちゃんね。ところでルキアはいる?」
「いえ、所用でおりません。夕方くらいに帰ってくるかと」

「そっかー、残念」と零すカンプさんですが、あまりそうは見えません。どちらかといえばホッとしているようにも見えます。あのお師匠様のこと、過去は何かとやらかしていても不思議ではありませんが。
 夕方に会えるなら待つとのことで庭先にある椅子に座ってもらいハーブティーを淹れます。今日は何のお茶にしましょうか。

「それにしても、えーと、ミリーちゃんだっけ? 山奥に住んでて不安にならない?」
「不安、とは?」
「町が恋しくならないのかなって。偏屈な彼に付き合うのも大変でしょ」

 はて、偏屈ですか。言われてみると確かにその通りな気もしますが、別段大変と思ったことはありません。むしろ、この人はまた……と、呆れる方が多いですね。町が恋しいかと言われると、それもまた違う、というより、人が多い所が苦手なのでこの環境は願ったり叶ったりです。
 その旨をお伝えすると似た者同士なのか聞かれました。あの方と一緒にされると複雑になるので丁重にお断りします。
 すると噂をすれば何とやら。当の本人が帰ってきました。なんでも早く用事が済んだとか。もっと長くかかって良かったと思うのは気のせいということにしときましょう。

「ん、来ていたのか。……で、誰だっけ」
「その知らない人を見る癖どうにか出来ないの? 同期の顔すら忘れるなんて薄情じゃないか」
「興味の有無で人は覚えているからな」

 存外にそれ興味がないと告げておりますよね? カンプさんのお顔に青筋が見えます。

「まあいい、話があるなら部屋で聞く。ミリー、その間にこの薬を作ってみろ」

 渡されたレシピを見て軽く目眩がします。こちらも気のせい、にしたかったです。文句の一つでもと思う反面、皮肉にも材料は揃っておりますし、日頃節制を心がけておりますのは知っているので何も言えません。
 レシピには先日買った物を含め、希少なたぐいの品々がそこには記されてました。作り方自体は私でも作れるので難しくはありません。
 しかしながら、こんな材料を使用して作るお薬を一体どのようなお方が使うのですか。効能もいまいちピンときません。まあ頼まれたので作る他ありませんので、準備をし始めます。お二人は既に家の中へ入り、部屋へ向かった様です。
 これは失敗したら損害なんてものでは済みません。気を引き締めて取り掛かりましょう。私も家の扉をくぐりました。
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