お師匠様は自由すぎる

星野 夜空

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お師匠様との日常生活は

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 ご機嫌よう、ミリーです。今回の実験はなんと日数がかかるものでした。数日間獣の手として暮らしていたからか、普通の手が逆に違和感として残ります。まあ、いずれ直るでしょう。
 それよりも今回の実験によって少なくなったという材料を買いに、町へ出ることは若干の不安と不満があります。不安は人前に出ることへの恐怖といいますか、時々笑われているように思うので変なのかなと思うのですよ。不満は……私が言っても仕方がないのですがね。
 お師匠様いわく、過剰反応しすぎとのこと。そんなものでしょうか。気にしなさすぎるというのも問題だと思うのですが。

「ほら、あの人だよ。この前の戦で……」
「ああ、災厄と最悪が混ざったとされる方か……」

 今日もやはり噂されるのですね。お師匠様は攻撃魔術が得意なだけです。方向性がとてつもなく自分本位なだけで。

「店主、買いに来た。売ってくれ」
「うん、まずは何を買いに来たのか教えてくれないかい?」

 とはいえ、当の本人はこのような状態なので気にしていないのでしょうが。
 あれやこれやを買い付けたり目利きしたりするお師匠様と、一体どこから出てくるのか分からない品々を見せる店主さんを横目にぐるりと店を見渡します。
 いつ来てもここは面白いです。様々な薬草が干されており、棚の瓶には動物のアレコレがあります。一般的なルル草の雫から龍の牙という稀少品まで。
 田舎とされる町でどうしてこの様に豊富なのでしょう。店主さんはやり手ですね。……いつも買う人がいないようですが、営業妨害になってませんよね?

「全部で一万二千ロソだよ」
「よし買った。ミリー買い物は「お師匠様? 何を買ったのか教えてくださいませんか?」何ってこれとこれとこれとこれとこれ、あとこれだ」

 食い気味に発したのは致し方ありません。ロソは金色の硬貨十二枚です。実に買いすぎです。ええ、食費にまで食い込まれるほどには買いすぎでしょう。弟子として見逃すわけには参りません。
 だというのに見せてきたものはどれもこれも貴重と言われるものばかりで、平均二千ロソの品物と言われてしまえばむしろ安いです。買い物上手とはいえ、こんな高い素材を使ってあの実験をしたとは……それならもっとやりようはあったでしょうに……。

「そうだ、食事代なら安心しろ。臨時収入があったからな」
「いつの間に。というかここのところ出かけていたのはそれですか?」
「お前は俺の実験、俺はその間小遣い稼ぎ。実に効率が良いじゃないか」

 本当にお師匠様は残念です。普段は実験の様子も見たいとなるのでおかしいと思ったらそういうことですか。
 なお、最近この問答が時々あることはこの際目を瞑りましょう。そして今日は嫌がらせに唐辛子をふんだんに使って鍋を作りましょう。
 辛いものが苦手なお師匠様にはこたえるはず、です。多分。きっと。
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