お師匠様は自由すぎる

星野 夜空

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お師匠様との出会いです

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 こんにちは、ミリーです。どうしてこんな残念な方がお師匠様なのか。今日はその話をしたいと思います。
 とはいえ、理由は単純なのですが。私は戦争孤児で、お師匠様にたまたま拾われたというそれだけです。両親はいましたが、いません。
 閑話休題。何故拾ってくれたのか、その理由はいつも話してはくれません。いつもの気まぐれだと私は思っております。
 さて、そんな私達の出会いでしたが、理由はともかく出会い方はかなり特殊な環境にありました。ええ、誰に話しても十人中九人が「あり得ない」と返答をいただきました。残り一人はお師匠様です。



 戦争孤児の行き先といいますか、行く末と申しますか。とにかく先々というのはおのずと決まってきます。特に当時、戦乱甚だしいという時代背景もあれば尚更というもの。
 特に私は魔法への適性があることも加わり、一般兵(魔法部門)を担っていました。不満というものはありません。一日のご飯と最低限の睡眠が取れるだけマシでしたから。
 まあ、それも相手国の最終兵器──お師匠様が出てくるまでの話です。
 私のいた国はあっさりと敗けました。それはもう赤子の手を捻るように、簡単に、圧倒的な強さをもって敗けました。死者がいたのかは分かりませんが、出ていないのはおかしいというものでしょう。魔術師の名は伊達ではありません。
 生き残った兵士は捕虜となるか秘密裏に奴隷とされるか、戦場から死にものぐるいで逃げて逃げて逃げて、逃げた先に生きるか死ぬか。まあそんなものです。私もそうなるだろうとぼんやり思っていました。奴隷にされかけたら逃げようか、いや捕虜の方が良いのだろうかと考えていました。
 そこへ、自分の放った魔術がいかに有効であったか見て回るお師匠様と出会いました。目が合った、というのが正しいでしょう。
 邂逅というのはそのようなものなのかもしれませんが。

「くるか?」
「いきます」

 私達の関係は、そこから始まりました。



 今思い出してもどうして即答で決めたのか謎です。追い込まれた思考というのは怖いものです。
 とはいうものの、実験という理不尽な目に遭いつつ、その実大事にされていることは分かります。ご飯を抜かれたり折檻をされたりすることはありませんし、何より私自身、魔術を学べることは楽しいです。
 軍用魔術しか知らない私にとって、お師匠様から教わる魔術、文字を学び本に書かれた知識としての魔術は知るにつれ、「深い」としか言えないほど。知りたいことが次々と湧き出てきます。
 だからこそ研究し、その成果を見たくなるのは分かるのです。
 分かるのですが、いつになったらこの手は治してもらえるのでしょうかね。お師匠様。
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