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3話:都での流行病

17.事情聴取(1)

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 ***

 ――数分後。
 黄色を除く神使3人が花実のいる部屋に集合した。流石は人ならざる者達、集合の早さは舌を巻く程である。

 白菫、白花、紫黒。まさに白黒と言ったメンバーのチョイスだが、ここに彼等を派遣する事は誰の決定なのだろうか。もっとカラフルな感じにすれば良かったのに、と見当違いの思考が脳裏を掠める。
 余談だが黄色2人は本当に来なかった。勝手に色々と進めるのは失礼に当たると薄群青がそう言ったので声だけは掛けてみたが、返答なし。忙しそうだ。

 揃った面子を見て一瞬だけ面白おかしそうに低い笑い声を漏らした烏羽。そんな彼はふと思い付いたように提案した。

「山吹と藤黄は来ないようですが、どうされますか? 無理矢理にでもこの場に呼びますか、召喚士殿? んふふふ……」

 ――そこまでして呼ばなくて良い、そう言いかけたがしかし、白菫の投げやりな口調で遮られる。

「呼ばなくても良いだろう。病の話ではなく、裏切り者の件ならここにいる面子だけで問題無い」
「ふふ、ふふふ、ええ。ええ、そうでしょうとも! 愉しみですねぇ」
「悪趣味な……」

 存外とハッキリした白菫の悪態に対し、烏羽は非常に愉快そうだ。実際、とても愉快なのだろう。彼は全くよろしくない意味で初期神使に気に入られている。あくまで面白い玩具程度の扱いでしかないが。

「ええ、ええ。そうですねぇ、悪趣味な事が好きなのですよ。例えばクモの巣に絡め取られて藻掻く羽虫だとか、陸に打ち上げられて跳ねる魚だとか。ああいった物には大変心惹かれますね。ずっと鑑賞していたいくらいです、ええ」

 返答するのが馬鹿馬鹿しくなったのか、白菫はそのまま烏羽から視線を外した。苦い顔をしている。
 そんな長兄の行動が恐ろしいものに見えているのであろう、紫黒は顔を青くしているようだった。出会った時から友好的なのは、白花だけで、彼女は相も変わらず穏やかな表情をしている。

 ――このままギスギスしたやり取りを眺めている訳にもいかない。
 会話が途切れた事で我に返った花実は、慌てて自分の神使と現地神使の不毛なやり取りへ横槍を入れた。

「落ち着いて……。最初の話だけど、黄系の神使は呼ばなくていいよ」
「そうでしょう? 召喚士様は話を分かっていらっしゃる」

 瞬時に白菫が同意する。何故か、それまで黙っていた紫黒まで同意を示した。

「そ、そうですよ。大兄様、ここは黄都ですので、黄系神使の指示に従わなければ……。それに、いなくてもちっとも問題ありません! わ、私達がきっと召喚士様のお役に立ってみせますから!」

 ――……おっと。
 自然な動作で花実は頭を抱えた。白菫はともかく、紫黒の発言が全面的に嘘偽りだったのだが、どうしたものか。
 簡単に読み解くのなら黄系神使はこの場にいた方が良いし、彼女はプレイヤーに協力するつもりがない、という事になってしまう。
 もう既に焦臭くなってきている場だが、一旦今の失言は保留とする。前回の月城町で分かった事だが、ある程度フラグを建ててからでなければ黒幕を指摘しても上手くいかないようだ。慎重に事を進めなければならない。

 まずは月城町でもしたような質問を繰り返して、怪しい神使を炙り出す。現状、紫黒が最も怪しいが、裏切り者が複数名いる可能性もあるので決めつけはよろしくないだろう。

「こうしていても始まらないし、早速事情聴取を始めようかな」

 プレイヤーの一言により、神使達の視線が花実へと集まる。口火を切ったのは烏羽だった。

「ほう、私は何をするのか一切聞いておりませんが、どういった風に事情聴取を? この烏羽にもお教えくださいませ。ふふふ」
「え? 普通に私が質問して、答えて貰うだけだけど」

 ああ、と頷いたのは薄群青だ。

「月城で俺達にやったアレッスね。何か意味あったんですか? 正直、見ていて勝手に真相に辿り着いたような感じしかなかったんスけど」
「それはまあ、企業秘密的な……」

 この召喚産薄群青はちゃんと2話の思い出があるようだった。召喚のタイミングで変わってくるのかもしれない。

「――……始めて結構ですよ、召喚士様」

 白菫の落ち着いた声で現実へ引き戻される。遠回しに早くやれ、と言われているようだ。確かに駄弁っている暇はあまりない。
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