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10話 出張! シルベリア!
02.雑な検閲
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***
一連の回想を終えたメイヴィスはすうっと自然に我に返った。こんな事をしている場合では無い。最近分かったが、アロイスの急なトンデモ発言は割と頻繁に起こる。こんな事で意識を飛ばしていても時間の無駄だ。
「アロイスさん、素材とかも買っていいですか? 今月、全然働いてないのにユリアナさんからお給料を貰ったんですよね」
「ああ。良い素材があるといいな。……検閲か」
「え?」
白い息を吐き出したアロイスは眼を細めている。見ると、シルベリア国へ入る為の道のど真ん中、通り抜け出来る小さな小屋があった。
「えっ、え? な、どうすればいいんですか?」
「大丈夫だ、落ち着け。余程で無い限りは門前払いを喰らう事は無い。どういう裁量なのかは知らんが」
「ええっ!?」
――大丈夫だろうか。心配になってきた。
余計に落ち着けなくなってきたのを余所に、アロイスはスタスタと流れ作業の流れに乗るように進んで行く。ちなみに、自分達以外にもそこそこ人が居た。
小屋の出入り口には強面の警備員、いや違う。兵士が立っている。明らかに武装しており、何かしでかそうものなら襲い掛かる気満々だ。しかし、一方で検閲担当の男性3人にやる気は見られなかった。
ガムを噛みながら、通って行く人々にいくつかの質問をしている。聞く事は毎回変わっているようだった。しかも、かなり雑。
前に並んで居たアロイスが先に検閲の担当に掴まった。何と答えるか参考にしようと思ったが、彼より前に入っていた人物が退いてしまったのでそちらへ誘導される。
怯えながら検閲官の前に立つ。ガムを噛んでいた男性は頭の先から爪先までじっくりとメイヴィスを見、そして手元のバインダーへと視線を移した。
「今回は何故シルベリアに?」
「あ、えっと、観光で」
「そうですか。お連れの彼は?」
「その、護衛? です」
「成る程。最近は物騒ですからね、女性の一人歩きは危険でしょう。有り難う御座いました、良い度を。次!」
――ざ、雑ぅ!!
しっしと出口の方へ誘導させられる。もしかして、見た目が人畜無害そうだったからあっさりパスされたのだろうか。見た目で判断されるのなら、アロイスはマズイかもしれない。彼は堅気じゃないオーラが素人の自分ですら分かる程に漂っているし。
が、そんな心配は杞憂に終わった。
流されるまま、小屋の外に出るとボンヤリと雪を眺めるアロイスと合流する事が出来たからだ。あの検閲、意味あったの?
「アロイスさーん」
「メヴィか。互いに無事入国できて何よりだ」
「検閲、雑じゃありませんでしたか?」
「ここは王都へ続く道ではないからな。もし、国の中枢へ向かう為の検閲所であったならば、あの程度の審査では通してくれないだろう」
「へぇ、そうなんですね。私、コゼットから出た事無いから知りませんでした」
「色々な場所を旅するといい。広い世界があると知るのは良い事だ」
そう言って歩き出したアロイスの隣に並ぶ。検閲を抜けたので、もうまもなく街なり何なりに着くのだろう。期待するかのように、メイヴィスは白い息を吐き出した。
「あ!」
ややあって、冷たそうな石壁が姿を現した。その端が見えないあたり、大きな街を囲う壁なのだろう。
門の前には当然の如く門番が立っていたが、その巨大な門は開け放たれたままだ。しかも、行き交う人々は門番の事など意にも介さず通り抜けている。
「門の前に立っている人達も、私達に何か質問して来ますかね?」
「いや。彼等はトラブルを処理するだけで、何も無い限りは俺達に接触して来ないはずだ」
「つまり、声を掛けられたら不審者だと思われているって事ですか?」
「ああ。そうなるな」
アロイスの言う通り、行き交う人々に紛れてあっさりと街の中へ入る事が出来た。石壁と同じく、石で出来た街並み。冷たそうな印象があるものの、それと同時に頑丈そうな印象も受ける。
街の住人達は皆一様に防寒具を着込み、足早に通り過ぎて行っていた。歴史の深い国だけに、どことなく格式高いイメージがある。
立ち並ぶ店もバラエティに富んでいる。見た事の無い食べ物を売る店、巨大な宝石ショップ、変わった小物を並べている店――本当に色々とたくさんだ。その中に大きなアイテムショップも見つけ、メイヴィスはわくわくと笑みを浮かべた。
一連の回想を終えたメイヴィスはすうっと自然に我に返った。こんな事をしている場合では無い。最近分かったが、アロイスの急なトンデモ発言は割と頻繁に起こる。こんな事で意識を飛ばしていても時間の無駄だ。
「アロイスさん、素材とかも買っていいですか? 今月、全然働いてないのにユリアナさんからお給料を貰ったんですよね」
「ああ。良い素材があるといいな。……検閲か」
「え?」
白い息を吐き出したアロイスは眼を細めている。見ると、シルベリア国へ入る為の道のど真ん中、通り抜け出来る小さな小屋があった。
「えっ、え? な、どうすればいいんですか?」
「大丈夫だ、落ち着け。余程で無い限りは門前払いを喰らう事は無い。どういう裁量なのかは知らんが」
「ええっ!?」
――大丈夫だろうか。心配になってきた。
余計に落ち着けなくなってきたのを余所に、アロイスはスタスタと流れ作業の流れに乗るように進んで行く。ちなみに、自分達以外にもそこそこ人が居た。
小屋の出入り口には強面の警備員、いや違う。兵士が立っている。明らかに武装しており、何かしでかそうものなら襲い掛かる気満々だ。しかし、一方で検閲担当の男性3人にやる気は見られなかった。
ガムを噛みながら、通って行く人々にいくつかの質問をしている。聞く事は毎回変わっているようだった。しかも、かなり雑。
前に並んで居たアロイスが先に検閲の担当に掴まった。何と答えるか参考にしようと思ったが、彼より前に入っていた人物が退いてしまったのでそちらへ誘導される。
怯えながら検閲官の前に立つ。ガムを噛んでいた男性は頭の先から爪先までじっくりとメイヴィスを見、そして手元のバインダーへと視線を移した。
「今回は何故シルベリアに?」
「あ、えっと、観光で」
「そうですか。お連れの彼は?」
「その、護衛? です」
「成る程。最近は物騒ですからね、女性の一人歩きは危険でしょう。有り難う御座いました、良い度を。次!」
――ざ、雑ぅ!!
しっしと出口の方へ誘導させられる。もしかして、見た目が人畜無害そうだったからあっさりパスされたのだろうか。見た目で判断されるのなら、アロイスはマズイかもしれない。彼は堅気じゃないオーラが素人の自分ですら分かる程に漂っているし。
が、そんな心配は杞憂に終わった。
流されるまま、小屋の外に出るとボンヤリと雪を眺めるアロイスと合流する事が出来たからだ。あの検閲、意味あったの?
「アロイスさーん」
「メヴィか。互いに無事入国できて何よりだ」
「検閲、雑じゃありませんでしたか?」
「ここは王都へ続く道ではないからな。もし、国の中枢へ向かう為の検閲所であったならば、あの程度の審査では通してくれないだろう」
「へぇ、そうなんですね。私、コゼットから出た事無いから知りませんでした」
「色々な場所を旅するといい。広い世界があると知るのは良い事だ」
そう言って歩き出したアロイスの隣に並ぶ。検閲を抜けたので、もうまもなく街なり何なりに着くのだろう。期待するかのように、メイヴィスは白い息を吐き出した。
「あ!」
ややあって、冷たそうな石壁が姿を現した。その端が見えないあたり、大きな街を囲う壁なのだろう。
門の前には当然の如く門番が立っていたが、その巨大な門は開け放たれたままだ。しかも、行き交う人々は門番の事など意にも介さず通り抜けている。
「門の前に立っている人達も、私達に何か質問して来ますかね?」
「いや。彼等はトラブルを処理するだけで、何も無い限りは俺達に接触して来ないはずだ」
「つまり、声を掛けられたら不審者だと思われているって事ですか?」
「ああ。そうなるな」
アロイスの言う通り、行き交う人々に紛れてあっさりと街の中へ入る事が出来た。石壁と同じく、石で出来た街並み。冷たそうな印象があるものの、それと同時に頑丈そうな印象も受ける。
街の住人達は皆一様に防寒具を着込み、足早に通り過ぎて行っていた。歴史の深い国だけに、どことなく格式高いイメージがある。
立ち並ぶ店もバラエティに富んでいる。見た事の無い食べ物を売る店、巨大な宝石ショップ、変わった小物を並べている店――本当に色々とたくさんだ。その中に大きなアイテムショップも見つけ、メイヴィスはわくわくと笑みを浮かべた。
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