聖女である私を追放した王国は魔物に蹂躙されましたが、私は流刑地でイケメン暗黒騎士様に溺愛される日々を送っています。

ZERO ー叛逆のカリスマー

文字の大きさ
上 下
4 / 8
第1章『厄災の前兆』

しおりを挟む
 ビアンカとボブが乗る馬車はダメルアンを抜けてさらに西へ――――。
 肥沃な土壌と豊かな水資源で活気溢れるダメルアンとはうって変わって、荒廃した土地を馬車は闊歩する。バロンの神殿からの祈りがここまで充分に届いていないことに起因するのだが、ここニシナーリにも集落が存在し、不届き者や浮浪者が流れ着いて生活してるといわれる。

”こんな場所で私は生きていけるのだろうか―――?”

 神殿からほとんど出た事が無く聖女として生きて来たビアンカは不安で押しつぶされそうになった。

「聖女様、ご安心くだせえ!このボブはバロンから聖女様にお許しが出るまでずっとついていやす!」

「えっ…。」

「教主様のご命令なんですわ!きっと教主様が聖女様の潔白を証明してくださるはずですからそれまで頑張りましょう!」

「そうだったんですね…。なんとお礼を言っていいか…。」

「いえいえお礼だなんて!今までバロンを護って来たのは聖女様の方ですから!お返しには到底なりえませんがこの元王族直属の騎士であるボブが精一杯聖女様をお守り致しやす!」

 こういう人もいるのだ———――。魔窟への祈りの効果は可視化できないから実感もできない。それでもなお祈りによって魔窟の活性化が抑えられていると信じてくれている人が――――。自分がやってきた事が無駄ではなかったと知りビアンカは少し泣きそうになった。

    ×    ×

「この森を抜けると集落っすね!もうすぐですぜ!」

 もう何年も馬車など通っていないのだろう、草木が覆いかぶさり道と呼べるかどうか疑わしいほどの道が森の中にあった。ボブは怖じることなく馬車を進める。鬱蒼と茂った木々はカサカサと音を立て魔物のせせら笑いのようにも聞こえる。―――事実、ニシナーリへの祈りは充分に届いていない。つまり、ここに魔物が居たとしたらある程度活性化が進んだ状態を覚悟しなければならないという事になる。

「早速おいでなすったか」

 ビアンカが馬車の荷台から覗くとゴブリンの群れが居た。しかも1、2、3…数十匹の群れだ。バロン近辺のゴブリン同士はすぐに仲間割れを起こすから徒党を組む事はないというのに。

「聖女様!向うの道が手薄だ!ちょっと飛ばしますんでしっかり捕まっていてくだせえ!」

「分かりました!」

 強行突破―――。ボブは激しく鞭を振るい馬車は猛スピードで走りだした。徒党を組んだといえどそこは比較的小さい魔物であるゴブリン。馬2頭と巨漢のボブ、荷台の超重量を止める術はない。しかし一匹のゴブリンが木からターザンのようにつるを使い荷台の幌に着地した。その瞬間―――、

「おあがりよ!」

 巨大なバトルアックスがゴブリンを一撃のもとに叩き割った――――。

「聖女様はしっかり捕まる事に専念してくだせえ!」

 ボブさんは後ろに目がついているのか…。馬車を操りながら近づくゴブリンを蚊を潰すがごとく叩き割っていく。これが元王族直属騎士の力――――!どうか―――、このまま無事に森を抜けて!
 そのような効果をもたらす祈りなどないがビアンカは目を閉じ必死で祈った。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活

ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。 「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」 そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢! そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。 「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」 しかも相手は名門貴族の旦那様。 「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。 ◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用! ◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化! ◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!? 「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」 そんな中、旦那様から突然の告白―― 「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」 えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!? 「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、 「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。 お互いの本当の気持ちに気づいたとき、 気づけば 最強夫婦 になっていました――! のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。 それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。 誰にも信じてもらえず、罵倒される。 そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。 実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。 彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。 故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。 彼はミレイナを快く受け入れてくれた。 こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。 そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。 しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。 むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。

婚約破棄された聖女は、愛する恋人との思い出を消すことにした。

石河 翠
恋愛
婚約者である王太子に興味がないと評判の聖女ダナは、冷たい女との結婚は無理だと婚約破棄されてしまう。国外追放となった彼女を助けたのは、美貌の魔術師サリバンだった。 やがて恋人同士になった二人。ある夜、改まったサリバンに呼び出され求婚かと期待したが、彼はダナに自分の願いを叶えてほしいと言ってきた。彼は、ダナが大事な思い出と引き換えに願いを叶えることができる聖女だと知っていたのだ。 失望したダナは思い出を捨てるためにサリバンの願いを叶えることにする。ところがサリバンの願いの内容を知った彼女は彼を幸せにするため賭けに出る。 愛するひとの幸せを願ったヒロインと、世界の平和を願ったヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:4463267)をお借りしています。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

最後に報われるのは誰でしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
散々婚約者に罵倒され侮辱されてきたリリアは、いい加減我慢の限界を迎える。 「もう限界だ、きみとは婚約破棄をさせてもらう!」と婚約者に突きつけられたリリアはそれを聞いてラッキーだと思った。 限界なのはリリアの方だったからだ。 なので彼女は、ある提案をする。 「婚約者を取り替えっこしませんか?」と。 リリアの婚約者、ホシュアは婚約者のいる令嬢に手を出していたのだ。その令嬢とリリア、ホシュアと令嬢の婚約者を取り替えようとリリアは提案する。 「別にどちらでも私は構わないのです。どちらにせよ、私は痛くも痒くもないですから」 リリアには考えがある。どっちに転ぼうが、リリアにはどうだっていいのだ。 だけど、提案したリリアにこれからどう物事が進むか理解していないホシュアは一も二もなく頷く。 そうして婚約者を取り替えてからしばらくして、辺境の街で聖女が現れたと報告が入った。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...