俺の恋人はタルパ様

迷空哀路

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「……っ、じゃあ行きます」
「……」
もう役に入っているのか、目線はこちらを見ていない。
「……あ、あの」
片手でスマホを持ったまま、ゆっくりとこちらを向いた。ここまでやる気がなさそうな表情は初めて見るので、少し怖い。
「制服そんなに崩してないで、ちゃんと着た方が……いいと思う」
「……またお前か」
「じゃ、じゃあ……」
「なぁ、ちょっと待てよ」
「……っ、なに?」
ゆらりと立ち上がると、髪を掻きながら睨むような角度で笑った。
「そんなに着てほしいならさー。お前が教えてくれよ」
「どういう、こと?」
「ほら校則とかに載ってんだろ、多分。もうそういうの忘れちゃったからよー。どれが正解か分からねえんだ。お前が俺の服、直してくれよ」
突然の提案に困惑した彼に近づいて、肩を組む。有無を言わせない笑みでしてくれるよな? と聞いた彼に、素直に頷くことしかできなかった。
小声で状況説明を入れる。このシーンはもう終わりということだ。

「って感じで導入終わり。次が本番でーす。放課後の空き教室に移動するぞ。当然邪魔してくる先生も生徒もいないぞ。そのうち足音が近づいてきて誰かいるのか? って隠れるイベが定番だけど、今回はないぞー。とりあえず怖がって、困っとけ。俺がリードするから」
「はぁ……分かりました」
ずっと言っていることの半分は理解していないけど、楽しそうなので水を差したくない。
「改めて向き合うと、これからどうなるのかと緊張で顔が強張る。そんな様子を無視しながら、無遠慮に触り始めた……」
制服の上からぺたぺたと手が触れる。誘うような手つきではなく、サイズの確認をされているかのようだ。
「……えっと」
「お前のそれって着方合ってんの? 一番上まで閉めなくてもいいんじゃね」
ネクタイが引っ張られ、少し服が乱れる。
「ああ、そうだ。せっかくならさ、一から教えてくれよ。俺バカだからさぁ、最初からやらなきゃ分かんねーわ……と、突然脱がせようとしてくる手を慌てて止める」
不良の時は普段よりも低く、軽い調子で話している。突然入る説明にも、ちょっとは慣れてきた。
「……や、やめて、ください」
「なんで? 教えてくれんだろ? まぁいいや。じゃあ俺の服で教えて」
抵抗することなく手を離すと、目の前でシャツを更に開けようとする。
「どこまで閉めればいいんだっけー? ああ、このままじゃ全部脱げちゃうなぁ。ほら、早くしないと」
こちらの手を取って胸元に近づける。ボタンを止めようとしても相手の方が早くて、結局全て開いてしまった。
「何だよお前、脱がせたかったのかぁ?」
「ち、違う……」
「ふーん。じゃあちゃんと戻さないとなぁ。俺も手伝ってやる」
手を持ったまま好き勝手動かし始めた。シャツの上を滑り、下へ潜らせる。お腹から胸元に向かうと、そこを揉むように動かされる。時折指先に硬い感触が当たった。
「はは、お前下手すぎ。全然上手く着られねーじゃん……っあ……ん……」
見せつけるように近づいて、耳元で声を漏らした。これが誘い受けということなのだろうか。こちらが手を出せないのも、案外好きかもしれない。
「あっ、擦れて……んぅ……、なぁお前顔赤くねーか。なんで男の着替え手伝ってるだけで、そんな顔してるんだ?」
よく見せろと眼鏡を取られる。ついでに結んでいたヘアゴムも取った。
「はぁー、やっぱお前結構可愛い顔してると思ってたんだよなぁ。いつもは隠れちゃってて勿体無いけど。なぁ、お前のも手伝ってやるよ。それも間違ってるって」
素早くジャケットのボタンを取ると、シャツ越しに手を滑らせてきた。
「あーコスプレ用のうっすいシャツ最高。この微妙な透け感はお高いところじゃなかなかないだろうからなぁ。今度濡らしたいなぁ……いや、舐めてそこだけもっと透かせるのも良きでは」
ぶつぶつ言いながらネクタイを抜き取って、二つ分ボタンを開けた。
「お前肌綺麗だな。こうして襟元から覗いてんの、エロい」
突然首元を吸われて、演技ではない驚きが出てしまった。更に二つほどボタンを外すと、胸元を広げた。
「はは、お前のこんなだらしない姿見んの初めて。どう? 開放感あるだろ」
「いや……戻して」
「だーめ。ほら、戻そうとすんな」
腕を軽く押さえつけると、口元を胸に寄せてきた。そこに唇を付けて、軽くちゅうと吸われる。下からどこか恍惚としている、からかうような目を向けられると、妙な気分になってきた。
「ん、ふっ……あ、だんだん硬くなってきたな。舐められるの気持ちいい? 見てみろよ、乳首だけ透けて、あぁ……どこにあるかすぐ分かっちゃうな。恥ずかしいか?」
「……っふぅ、なんだかいつもより」
軽く素が出てしまったけど、こんなことで彼の世界は崩せない。

「あーあ、更に赤くなっちゃって。かーわいいなお前。せっかくだから、脱いでリセットするか」
はだけているけど腕は通したままで、こちらだけ脱がされた。じろじろ観察されると、だんだん役の気分になってくる。いつもは恥ずかしさなんて感じないのに。
「こういうことされんの、初めて? だよなぁ、お前仲良い奴いなさそうだし。でもこんなに綺麗な体、誰にも知られてないなんて可哀想だろ。俺がちゃんと見ててやるよ」
「な、なにして……」
頬に触れると、ちゅっと軽い音が鳴った。柔らかく啄むように、唇が触れ合う。
「キスすんのも初めてだった? 俺が相手でごめんなー。はは、ご感想は? もっと気持ち良くしようか?」
戸惑っている間に、再びくっつく。だんだんと表面が濡れてきて、舌の先だけ触れ合った。
「涙目になってんじゃん。かわいいの。普段とのギャップがたまんねーわ」
一度離れると、手を下に移動させた。軽く、乗っかる程度に触れる。力を込めることなく、感触だけを楽しむように、布の上から擦っている。
「んー? これ硬くなってんのかな。それとも元からこの大きさ?」
あくまで力は入れずに、回すように揉み出した。絶妙な力加減に、むずむずとした快感が少しずつ高められていく。
「それにしても……はは、こんな上で履かなくていいだろ。もうちょっと下げたほうが動きやすくないか?」
ほらと自分のベルトに触らせた。かなり下げているのか、下着まで見えている。
「んー? どうだ、この位置。合ってる?」
後ろに手を回すと、お尻の感触が伝わってくる。本気で彼と同じ学生だったとしたら、こんな誘惑するような着方は許せない。
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