7 / 45
7〔姿〕
しおりを挟む6
それから数日、ジンと俺の仲は急激に進むことになる。
恐る恐る触っていたイケメンドールも、三日経てば尻を舐めていた。イケメンには勝てなかったよ……。
ウィッグがずれているのも気にせず、毛先で体を弄ぶ。もうこれは汚してもいいことにした。洗えばいいじゃない。また買えばいいじゃない。
つるつるサラサラの毛先は最高だ。俺のキャラデザ能力に感謝したい。
イケメンドールに初めてを捧げてから、一気に抵抗がなくなった。最初は二人に弄ばれるイメージだったけど、顔を見なければジンだと思えるようになっていた。首元に抱きつくのが好きで、そこなら顔を見なくていい。
ジンに似せる整形をさせようかと思ったけど、頭の中がふわふわしている時だと、ジンと被る瞬間があった。その感覚を大事にしていこう。
「はい、コーチ!」
ジンが前よりも俺に指示することが増えた。俺の知らないことを教えてくれるので、本当に別人が側に居るみたいだ。
前にネットか何かで流し読みした情報とかを、脳のどこかで覚えていて、それらがジンとなって現れているのかもしれない。
まだでかい方のジンは入らないけど、この人形に満足できなくなったら、こちらに入れ替えようと思ってる。こういうなんでもできるところが最高だ。妄想は無敵だ。職人の技術最強!
まだ、ただのイケメンドールでしかなかった彼に、前の方の初めても捧げさせてもらったが、そのことはジンには内緒である。まぁバレてるだろうけど。
「ジン、おはよう」
「ああ起きたか。おはよう」
「えっ!」
「なんだ騒々しい」
「だだだだって!」
なんで椅子に座ってるんだ。自然に。
「今までは俺の横にふわふわ飛んでるぐらいだったのに」
「俺の存在が濃くなってきたのだろう。俺の素体を動かしているのも、影響しているな」
ドールを動かして家中、色んなところで致している、そのおかげというわけだ。もちろん真面目に(?)座らせたりもしてたけど。
人形の身長は設定より低い。でも目の前のジンは、ちゃんと想定通りになっている。ちなみに壁のジン一号ダンボールは剥がした。
「コーヒー飲むなら、俺の分も用意しろ」
「はいはい。分かりましたよ」
ジンの着ている服は俺の手持ちではない。高そうな白シャツと黒いズボン。手触りが良く、汚れることのない素晴らしい服。この世に存在しないブランドのタグが付いている。自分の想像力に時々震えるよ。
でもまだジンは透けたままだ。コーヒーをちゃんと飲んでいるけど、本物のカップはまだ湯気を立てて机に置いてある。
今目の前には、机の上にある二つのカップと、ジンが持つ透けたカップが見える。
結局これは実際に飲まれることはないので、自分の分と合わせて、二杯飲まなきゃいけない。
ジンは都合のいい存在なので食べなくていいし、体も汚れない。でも俺がそうしてほしいと願った時には一緒に食べるし、風呂も入る。
ちょっと面倒だけど自分の分だけではなく、二人分用意しないと、上手く反映されなかった。用意していない事に拗ねたジンが、そうさせてくれなかったのかもしれないけど。
家の中だけだったのに、いつのまにか外にも出ていた。地に足は着けず浮いている状態で、そこから話しかけてくる。
つい返事をしそうになるけど、頭の中で会話ができるので、声に出さないように気をつけている。
こうして確実にジンに近づき、でろでろあまあま生活をゲットしたのだ。
第一部完。イケメンドールありがとう編。
7
「ただいま~我が家ぁ~」
帰ってきて、すぐベッドにダイブする。髪の毛をわしゃわしゃしながら、顔中にちゅっちゅする。
待ちきれなくて脱いだ服をぶん投げて、大きな体に抱きついた。もう一秒だって我慢できない。
「っはぁ、早く! 我慢できないよ……っ」
顔を掴んで懇願すると、余裕そうな顔で笑われた。
「お前は恥ずかしい奴だな。獣以下じゃないか」
低い声と、蔑むような視線。それだけで全身が震えてくる。
「っう……はぅ、く……っ」
びたんっびたんと尻を叩かれる。既にハイ状態なので、自ら人形の腕を動かして叩いてるんだという意識は消えている。
「好きなんだろう、こういうのが。変態め」
甘く透き通る、低糖コーヒーみたいな声で次々罵られる。もうあへあへ状態だ。
「はいい……しゅみましぇん」
人形を担ぎ上げて、体の上に乗せる。両腕を顔の横に置いて、逃げられないってシチュエーション風。こちらが支えないと倒れるので、そっと腰に手を添えた。
上から見下ろされるのを堪能した後、起こして体勢を変える。
本当は上からも後ろからもガツガツ攻めてほしいんだけど、それだけはどうしようもない。
人形が相手だと、やはり自分が上に乗るのが一番安定する。今度動く玩具も買ってみようかな。
「あー、かっこいぃ……っ、かっこい……っ」
とろけている間は無意識にジンを褒めていると、終わった後本人から教えられる。言っている自覚が無くなっているらしい。
「……す、きぃ……だ、め……っ」
達してからも、ずっとびくびくと痙攣していた。中のものをぎゅっと強く締めてしまい、それがまた刺激になる。
「あ、ま……っ、ら、も……む、り……っや、ぁ」
「何を言っているのか分からない」
「また、きちゃ……も、死んじゃっ……っ!」
どこに飛んだか分からない。最近激しくしているから、気づいたらあちこちが濡れていた。
前はお漏らしもしたし、その手の女優もびっくりな淫乱ぶりだ。もしかして俺は才能があるのだろうか。一人(だけど二人)でここまでのステージに来れるなんて。
「はぁぁ……」
脱力してぱたりと倒れこむ。腕枕してもらいながら、顔を見上げる。今まで見てきたどんなものよりも美しい。カッコいい。好き。
「えへへへへ……ジン」
「どうした」
「ずっと一緒に……いようねぇ」
美しく微笑んだ。儚さと愛しさと切なさと何かが詰まった、さりげなくもキラキラな笑顔。
指を絡めて、しばらく見つめ合っていた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
君が好き過ぎてレイプした
眠りん
BL
ぼくは大柄で力は強いけれど、かなりの小心者です。好きな人に告白なんて絶対出来ません。
放課後の教室で……ぼくの好きな湊也君が一人、席に座って眠っていました。
これはチャンスです。
目隠しをして、体を押え付ければ小柄な湊也君は抵抗出来ません。
どうせ恋人同士になんてなれません。
この先の長い人生、君の隣にいられないのなら、たった一度少しの時間でいい。君とセックスがしたいのです。
それで君への恋心は忘れます。
でも、翌日湊也君がぼくを呼び出しました。犯人がぼくだとバレてしまったのでしょうか?
不安に思いましたが、そんな事はありませんでした。
「犯人が誰か分からないんだ。ねぇ、柚月。しばらく俺と一緒にいて。俺の事守ってよ」
ぼくはガタイが良いだけで弱い人間です。小心者だし、人を守るなんて出来ません。
その時、湊也君が衝撃発言をしました。
「柚月の事……本当はずっと好きだったから」
なんと告白されたのです。
ぼくと湊也君は両思いだったのです。
このままレイプ事件の事はなかった事にしたいと思います。
※誤字脱字があったらすみません
帝国皇子のお婿さんになりました
クリム
BL
帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。
そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。
「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」
「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」
「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」
「うん、クーちゃん」
「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」
これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。
少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。
ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。
だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる