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1《太陽》

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春樹は僕の太陽だ。
頭の中で思い浮かべるのはいつも同じ光景で、目の前に突然春樹が現れる。顔が影で暗くなっているのは、上からこちらを覗き込んでいるからだ。
どうやら僕はどこかで寝転んでいたらしい。これがいつの、何歳の時の出来事だったのかは思い出せないのだけど、春樹が僕を迎えに来てくれた時のことだとは分かる。
満面の笑みを浮かべて、手をこちらへと伸ばした。太陽に照らされてキラキラした髪が風に靡いている。くりくりとした瞳の中には自分しか映っていない。それは今まで見た何よりも美しいものだった。じっと見つめていると、どうして起きないのと不思議そうに首を曲げた。ごめんねと手を取って起き上がると、嬉しそうに隣に座った。
初めて会った時から疑問だった。どうして僕にそんな優しい目を向けてくれるんだろう、なんで嬉しそうにしてくれるんだろう。僕といたって楽しくないだろうに、春樹は必ず迎えに来てくれる。みんなと遊んでいても、木陰にいるこっちに来て、嫌な顔一つせずに話しかけてくれる。そんな春樹を煩わしく思ったことはないし、気にしてくれる人は彼ぐらいだったから、執着心は自然に生まれていた。
そんな自分とは対照に、成長しても変わらない、明るくて人気者の姿は健在で、他の人に何を言われても彼は隣にいた。自分の陰口を聞く度に、彼がこちらに来る度に、勝ち誇った気がして安堵した。僕には春樹が必要だった。でもその分、春樹に対してはいつだって怖かった。綺麗な彼を壊してしまわないかと。明るい顔を困らせてしまった時は本当に苦しくなった。

僕が死ぬほど必要としている一方で、春樹は僕一人のものにはならなかった。みんなから信頼されていて、大人にも子供にも優しい。
僕はこの想いがそういうものだとは、とっくに気づいていた。でもそんなことを言ったら彼は確実に困ってしまう。悩ませてしまう。
だから絶対に言えなかった。自分から会いに行くとどうしても高揚してバレてしまいそうだったから、必死に押し込んで普段通りを装った。僕はいつまでも暗くて、つまらない人間のまま成長できない。
なんで、どうして離れていかないんだ? 突き放してくれたら、諦められたかもしれないのに……。
小学校ではほとんど同じクラスになれた。中学では一度しか同じクラスになれなかった。春樹の目指す学校は偶然にも自分のレベルに丁度いい学校で、志望校の中の一つだった。春樹が行くならと悩まずにそこに決めた。学級委員をしていた春樹は、確実に受かるだろうと思った。
もし違う学校でも仲良くしてくれただろうか。だんだんと離れていった距離はやがて、もう二度と会えないところまで行ってしまうのか。そんなことを思うと、やっぱり同じ学校を目指すしかなかった。
合格の文字が並ぶ紙を見せて嬉しそうに笑う春樹を見ていたら、少し不安になった。本当にこのまま進めると思ったのか? もし春樹に恋人ができたらどうする? もし気持ちがバレたら……春樹が僕を捨てたら。
どうして一緒に居てくれるのと聞いたことがある。その時はごく当たり前のように、だって友達じゃんと笑った。今聞いても同じように答えてくれるだろうか。春樹はここでも人気者になるだろう。僕は邪魔をしている。僕が居なければ春樹が僕を気にするような発言をした時の気まずい空気はなくなるだろうし。みんな思っている……金魚のフン、なんであんな奴を気にするのか、相応しくない似合わない。春樹だけが逆のことを言ってくれるけど、そんなのは……そんなことはもう言わせたくない。このまま諦めれば、素直に身を引けば、春樹は春樹らしく幸せになれる。
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