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レイラの薔薇
リラと薔薇
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ふたりは工房を訪れた。
工房の中は壁の棚一面にラベルが貼られた茶色いガラス瓶が綺麗に陳列されており、先ほどよりも濃厚な薔薇の香りが立ち込めていた。
ふたりが、店内を眺めていると、奥から工房長が現れた。
工房長は、クライヴの鷲の紋章からすぐさまアクイラ国の皇子であることに気づき慌てふためいた。
「すいません。突然、お邪魔してしまいまして。」
「いえ。とんでもございません。何かお探しのものはございますか。」
「こちらで香水のオーダーメイドを行なっていると訊いたのですが、本日中に持って帰ることなど可能なのでしょうか。」
リラは、そう尋ねると、工房長は少し困惑した表情を浮かべた。
工房長曰く、本来は好みや生活スタイル、使用用途など事細かにカウンセリングを行った後に、何十種類ものエキスを調合士が厳選しブレンドを行い試作に試作を重ねて、個人にあった唯一の香水を製作しているとのことだった。
「もし可能であれば何か簡易的なものでも構わないのだが、今日こちらに足を運んだ記念に何かいただきたくてね。」
クライヴはそう言うと、工房長は頭を捻った。
突然とはいえ、一国の皇子からの頼みである断る選択肢などなかったのだろう。
暫くその場で考え込んだ工房長は一旦奥に下がると、数種類の瓶を持って戻って来た。
「では、こちらのサンプルからお好きなものを選んでいただきブレンドするというのはいかがでしょうか。」
工房長は渋々そんな提案をするが、ふたりにはそれで十分すぎるほどだった。
「わあ、素敵ですわ。ありがとうございます。」
リラとクライヴは顔を見合わせて喜んだ。
ふたりは、来客用の個室に案内された。
「クライヴ様。薔薇の香りがお好きですよね。どのようなものが、好みなのですか。」
「いや、好きというか…。以前、リラから薔薇の香りがすると聞いてね。リラと同じ香りになりたくてつけ始めたのがきっかけかな。それから色々取り寄せて、リラならこんな香りかと思っていたのだが…。本人に逢うと、優しい薔薇の香りだから驚いたよ。」
リラは驚いた。
クライヴのこの甘い薔薇の香りのきっかけが自分だなんて思いもしなかった。
しかも、自分を想像した香りだったなんて…。
「そ、そうなんですね。領地にいるときは羊の世話をすることもあったので、あまり香りが強くないものを付けています。た、ただクライヴ様の甘い薔薇の香りも好きですよ。」
「ありがとう。でも、今日はリラの好みで選んでほしいな。」
そうは言われても、せっかくふたりで来たのだからクライヴの意見も聞きたいというものだ。
リラはサンプルのひとつひとつに試香紙を付け香りを確認していた。
「クライヴ様。こちらの香りは如何ですか。」
「甘く唆るね。」
クライヴはリラ抱き寄せ、肩に顔を埋めるながらそういうのだった。
「もう、ちゃんと香ってますか。」
「ああ。その香りになったリラを想像してるんだ。」
リラは恥ずかしくて仕方がなかった。
最初は工房長も香水の説明や相談で同席していたものの、クライヴが終始この調子なので居た堪れなくなり離席していった。
「なかなか選ぶのが難しいですわ。」
リラは必死に平常心を装いそう言うも、様々なサンプルを香ったのにも加えて、後ろからはクライヴの甘い薔薇の香りが薫り、首元が終始くすぐったく、リラは集中することなどひとつもできずにいた。
「じゃあ、リラが俺といるときにつけたい香りを選んで。」
そういうとクライヴはリラの頬に手を添え、唇を重ねるのだった。
サンプルを選び終えると、工房長は早速調合に取り掛かった。
調合は小一時間ほど時間がかかるそうで終わるまでの間、先ほどの薔薇園のテラスで紅茶を飲みながら待つことになった。
「リラは薔薇が好きなの?」
不意にクライヴがリラにそう尋ねた。
リラが熱心に薔薇を観察したり、種類をクライヴに説明していたからだろうか。
「はい。亡くなった母が薔薇が好きだったので私もその影響で好きになりました。カントリーハウスには母が大切にしていた薔薇園もあるんですよ。カントリーハウスに帰れば暇な時は、薔薇の世話をしたり、そこで読書をしておりました。」
「へえ。どんな母上だったの。」
クライヴがそう尋ね、リラは静かに母の思い出を話し出した。
★ ★ ★
リラの母であるレイラ・アリエスは仕事が好きな心優しい女性だった。
父のチャールズ・アリエスは人は良いのだが、経営が不得手で、以前の伯爵家はかなり落ちぶれており、そんな父に結婚を持ちかける貴族などいなかったそうだ。
そんな父の結婚相手に選ばれたのは、領内の商家の娘であった母だった。
父と母は幼い頃から面識があり、いわゆる幼馴染だった。
母は商家の娘いうこともあり、父よりも経営が得意で、経営技術は母が教えたと言っても過言ではないらしい。
母は幼いリラを連れて、朝から夕暮れまで領内を回るのが日課だった。
「納期が遅れているがどうなっている。」
「帳簿を見せなさい。」
領主らしい厳しい一面を見せる反面、困ったことがあれば羊の毛刈りから梱包のような雑用までこなす、とても領主夫人とは思えない女性だった。
リラはそんな頼もしい母と出かけることが大好きだった。
領民から慕われ頼られる母は、幼いリラにはスーパーヒーローのように見えたのだ。
そんな母が仕事と同じくらいに好きなのが、薔薇だった。
屋敷の一角に薔薇園を拵え、暇さえあれば自ら手入れを行なっていた。
いろんな種類の薔薇を育て、珍しい種類の薔薇を取り寄せることもあった。
リラは、母と共に薔薇園のテラスで紅茶を飲んだり、読書をしたり、薔薇の手入れをするのも好きだった。
そんな大好きな母はリラが十歳のときに亡くなった。
流行病だった。
父は母を失った悲しみと二人分の仕事に忙殺され、屋敷で姿を見かけることが極端に少なくなった。
当時、リラの兄のルーカスは、まだ十四歳と幼くはあったが、次期当主であり、これからは父の右腕として、これまで以上に勉学と仕事に励んでいた。
このような状況の中、幼いリラは、父ともルーカスともほとんど会話をすることなく日々を過ごしていた。
リラは屋敷の中で一人で過ごす時間が増え、食事さえもしばしば一人で摂ることが多くなっていった。
母を失った悲しみや孤独感を家族と共有できず、リラはこの世界でたった一人ぼっちであるかのような気持ちになっていった。
(寂しい、どうしたら、お父様とお兄様が私に振り向いてくださるのだろう…。)
そんな幼いリラが思いついた行動が、以前と同じように母と毎日のように巡った牧羊地に農家や工場を巡ることだった。
母の言葉を思い出し、母のように女主人であるかのように振る舞った。
「納期は問題ございませんか。」
「帳簿はどうなっておりますか。」
領民も最初は、そんな幼い女主人に戸惑っていたが、リラが赤ん坊のときから知っている仲だ。
母を失った悲しみを乗り越えられるように温かく接していた。
そんなリラの突飛な行動を執事から聞いた父は、まだ幼いリラと碌に向き合っていなかった事実に気づき、自分のそれまでの行動をひどく恥じた。
それでも、全ての事業をこなさなければならない父に、リラと対話する十分な時間を持つことなどできなかった。
そのため、父の取った行動は、ルーカスと同様にリラを会議や視察に同行させるることだった。
リラは家族で出掛けられること、食事を摂るのがひとりでなくなったこと、更に仕事という共通の話題が増え、嬉しくて仕方がなかった。
工房の中は壁の棚一面にラベルが貼られた茶色いガラス瓶が綺麗に陳列されており、先ほどよりも濃厚な薔薇の香りが立ち込めていた。
ふたりが、店内を眺めていると、奥から工房長が現れた。
工房長は、クライヴの鷲の紋章からすぐさまアクイラ国の皇子であることに気づき慌てふためいた。
「すいません。突然、お邪魔してしまいまして。」
「いえ。とんでもございません。何かお探しのものはございますか。」
「こちらで香水のオーダーメイドを行なっていると訊いたのですが、本日中に持って帰ることなど可能なのでしょうか。」
リラは、そう尋ねると、工房長は少し困惑した表情を浮かべた。
工房長曰く、本来は好みや生活スタイル、使用用途など事細かにカウンセリングを行った後に、何十種類ものエキスを調合士が厳選しブレンドを行い試作に試作を重ねて、個人にあった唯一の香水を製作しているとのことだった。
「もし可能であれば何か簡易的なものでも構わないのだが、今日こちらに足を運んだ記念に何かいただきたくてね。」
クライヴはそう言うと、工房長は頭を捻った。
突然とはいえ、一国の皇子からの頼みである断る選択肢などなかったのだろう。
暫くその場で考え込んだ工房長は一旦奥に下がると、数種類の瓶を持って戻って来た。
「では、こちらのサンプルからお好きなものを選んでいただきブレンドするというのはいかがでしょうか。」
工房長は渋々そんな提案をするが、ふたりにはそれで十分すぎるほどだった。
「わあ、素敵ですわ。ありがとうございます。」
リラとクライヴは顔を見合わせて喜んだ。
ふたりは、来客用の個室に案内された。
「クライヴ様。薔薇の香りがお好きですよね。どのようなものが、好みなのですか。」
「いや、好きというか…。以前、リラから薔薇の香りがすると聞いてね。リラと同じ香りになりたくてつけ始めたのがきっかけかな。それから色々取り寄せて、リラならこんな香りかと思っていたのだが…。本人に逢うと、優しい薔薇の香りだから驚いたよ。」
リラは驚いた。
クライヴのこの甘い薔薇の香りのきっかけが自分だなんて思いもしなかった。
しかも、自分を想像した香りだったなんて…。
「そ、そうなんですね。領地にいるときは羊の世話をすることもあったので、あまり香りが強くないものを付けています。た、ただクライヴ様の甘い薔薇の香りも好きですよ。」
「ありがとう。でも、今日はリラの好みで選んでほしいな。」
そうは言われても、せっかくふたりで来たのだからクライヴの意見も聞きたいというものだ。
リラはサンプルのひとつひとつに試香紙を付け香りを確認していた。
「クライヴ様。こちらの香りは如何ですか。」
「甘く唆るね。」
クライヴはリラ抱き寄せ、肩に顔を埋めるながらそういうのだった。
「もう、ちゃんと香ってますか。」
「ああ。その香りになったリラを想像してるんだ。」
リラは恥ずかしくて仕方がなかった。
最初は工房長も香水の説明や相談で同席していたものの、クライヴが終始この調子なので居た堪れなくなり離席していった。
「なかなか選ぶのが難しいですわ。」
リラは必死に平常心を装いそう言うも、様々なサンプルを香ったのにも加えて、後ろからはクライヴの甘い薔薇の香りが薫り、首元が終始くすぐったく、リラは集中することなどひとつもできずにいた。
「じゃあ、リラが俺といるときにつけたい香りを選んで。」
そういうとクライヴはリラの頬に手を添え、唇を重ねるのだった。
サンプルを選び終えると、工房長は早速調合に取り掛かった。
調合は小一時間ほど時間がかかるそうで終わるまでの間、先ほどの薔薇園のテラスで紅茶を飲みながら待つことになった。
「リラは薔薇が好きなの?」
不意にクライヴがリラにそう尋ねた。
リラが熱心に薔薇を観察したり、種類をクライヴに説明していたからだろうか。
「はい。亡くなった母が薔薇が好きだったので私もその影響で好きになりました。カントリーハウスには母が大切にしていた薔薇園もあるんですよ。カントリーハウスに帰れば暇な時は、薔薇の世話をしたり、そこで読書をしておりました。」
「へえ。どんな母上だったの。」
クライヴがそう尋ね、リラは静かに母の思い出を話し出した。
★ ★ ★
リラの母であるレイラ・アリエスは仕事が好きな心優しい女性だった。
父のチャールズ・アリエスは人は良いのだが、経営が不得手で、以前の伯爵家はかなり落ちぶれており、そんな父に結婚を持ちかける貴族などいなかったそうだ。
そんな父の結婚相手に選ばれたのは、領内の商家の娘であった母だった。
父と母は幼い頃から面識があり、いわゆる幼馴染だった。
母は商家の娘いうこともあり、父よりも経営が得意で、経営技術は母が教えたと言っても過言ではないらしい。
母は幼いリラを連れて、朝から夕暮れまで領内を回るのが日課だった。
「納期が遅れているがどうなっている。」
「帳簿を見せなさい。」
領主らしい厳しい一面を見せる反面、困ったことがあれば羊の毛刈りから梱包のような雑用までこなす、とても領主夫人とは思えない女性だった。
リラはそんな頼もしい母と出かけることが大好きだった。
領民から慕われ頼られる母は、幼いリラにはスーパーヒーローのように見えたのだ。
そんな母が仕事と同じくらいに好きなのが、薔薇だった。
屋敷の一角に薔薇園を拵え、暇さえあれば自ら手入れを行なっていた。
いろんな種類の薔薇を育て、珍しい種類の薔薇を取り寄せることもあった。
リラは、母と共に薔薇園のテラスで紅茶を飲んだり、読書をしたり、薔薇の手入れをするのも好きだった。
そんな大好きな母はリラが十歳のときに亡くなった。
流行病だった。
父は母を失った悲しみと二人分の仕事に忙殺され、屋敷で姿を見かけることが極端に少なくなった。
当時、リラの兄のルーカスは、まだ十四歳と幼くはあったが、次期当主であり、これからは父の右腕として、これまで以上に勉学と仕事に励んでいた。
このような状況の中、幼いリラは、父ともルーカスともほとんど会話をすることなく日々を過ごしていた。
リラは屋敷の中で一人で過ごす時間が増え、食事さえもしばしば一人で摂ることが多くなっていった。
母を失った悲しみや孤独感を家族と共有できず、リラはこの世界でたった一人ぼっちであるかのような気持ちになっていった。
(寂しい、どうしたら、お父様とお兄様が私に振り向いてくださるのだろう…。)
そんな幼いリラが思いついた行動が、以前と同じように母と毎日のように巡った牧羊地に農家や工場を巡ることだった。
母の言葉を思い出し、母のように女主人であるかのように振る舞った。
「納期は問題ございませんか。」
「帳簿はどうなっておりますか。」
領民も最初は、そんな幼い女主人に戸惑っていたが、リラが赤ん坊のときから知っている仲だ。
母を失った悲しみを乗り越えられるように温かく接していた。
そんなリラの突飛な行動を執事から聞いた父は、まだ幼いリラと碌に向き合っていなかった事実に気づき、自分のそれまでの行動をひどく恥じた。
それでも、全ての事業をこなさなければならない父に、リラと対話する十分な時間を持つことなどできなかった。
そのため、父の取った行動は、ルーカスと同様にリラを会議や視察に同行させるることだった。
リラは家族で出掛けられること、食事を摂るのがひとりでなくなったこと、更に仕事という共通の話題が増え、嬉しくて仕方がなかった。
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