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2009年作品
文字化け
しおりを挟む隣の席の健太くんはいじめっ子。
今朝も私が五年生の教室の席につくと、机の中から緑色のものが飛び出してきた。私の大っ嫌いなカエル。思わず校舎中に響き渡るような凄まじい悲鳴を上げた。いつもいつもひどいことする!
健太くんは私にばかりいたずらをする。私にだけスカートめくりをしてきたり、大事にしている下敷きをどこかに隠したり……
そのくせ、美樹ちゃんだとかさやかちゃんだとかには親切。こないだだって、美樹ちゃんたちに吠え掛かっていた野良犬をかまれたりしながらも追っ払ったし、さやかちゃんの忘れ物をおうちに届けたりした。
だから、クラスの女の子には健太くんって、すごく人気がある。女の子には、優しい健太くん。なのに、私にだけは意地悪! きっと、私、健太くんにすごく嫌われているのだと思う。ちょっとくやしい!
午後からの授業は、生活科。いつもの教室ではなく、今日は新しくできたコンピューター・ルームに移動して、パソコンの授業。
コンピューター・ルームには生徒分のパソコンが置いてあって、今日はパソコンからのメールの使い方を教えてくれた。とまどったけど、面白そう。
「それではみなさん、お隣の席の人とメールのやり取りをしてみましょう」
コンピューター・ルームでは教室と同じ並びでみんな席についていて、当然、私の隣は健太くん。私は健太くんになんて書こうかなって考えていた。こんにちはとか、簡単なあいさつ文でいいかな? チラッと健太君の方を見てみると、なんだか、耳まで赤くしながら、力いっぱいキーボードを叩いてる。両手の人差し指だけを使って。そんなに、力を入れて、押したら、キーボードに穴があいちゃうよ……
そして、健太くんからメールが届いた。
早速、開いてみると、たった一言。
『おれ、お前が好きだ』
――え!?
私、驚いて、健太君の方をみた。健太君、私に頭を向けて、窓の外をジッと見ている。
あのいじめっ子の健太くんが私を好きだなんて。絶対、これ何かの間違いだ! ありえないことだし、絶対、なにかの間違えにちがいない。
しばらく、私、その場で固まっていた。と、私、ひらめいた。
そうか、これが文字化けとかいうやつだ!
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