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61.社畜サラリーマンは上様になる

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「……ラム様」

「どうした、シヅル??」

不思議そうな表情をしているラム様を私はじっとりした眼差しで見つめる。

「この格好は、その……」

「ああ、気に入ってくれたか??シヅルは全裸は嫌だというのでちゃんと気にいるように、余が『異世界人のきもち』とを勉強、分析し、さらに竜人に伝わる救世主メシアの伝承、『その者金色の衣を纏いて竜の野に降り立つべし』をもとに二度とリュカがシヅルを侮らないように特注した1点ものの羽織だ」

これ以上ない、笑顔のラム様に悪意がないのはわかっている。しかも、めちゃくちゃ頑張ったから褒めて褒めてみたいな目で見ている。

しかし、今私が着せられた服、いや着物は金色に輝き、帯すら銀色をしている。

つまり、某暴れるタイプの将軍様、上様がサンバ踊る時のような格好なのだ。

「いや、あの私は上様のように威厳がないので衣装に全部存在を吸収されてしまう自信しかないのですが……」

「シヅルなら可愛くて美しいからよく似合うだろう。余も揃いで同じ羽織を作ったのでふたりで着れば怖いものなどないだろう??」

ダブル上様で謝罪したい人間のところを訪れる様を想像して申し訳ない気持ちと、ちょっといやかなりリュカ殿下を許せない気持ちがあるのでこれくらいの悪戯や悪ふざけは許されるのではという気持ちも生まれた。

「わかりました、やりましょう」

たまには、竜人、いや、ラム様の言葉を信じてみようと世間から隔絶された感性の竜帝陛下に寄せたことを割とすぐ後悔することになってしまった。

リュカ殿下の居る地下牢は以前ルゼルが閉じ込められていた場所のすぐ側で、前世の記憶通り酷い場所だった。

その酷い場所の地面でいきなりバタフライツイストから土下座を決めたリュカとうつ伏せに寝転んで五体投地をするアヴェルの異様な様を見た私には漏れなくSAN値のチェックが入った。

「な、なんですその状態」

「いせかい、いえ、番い様、本当に本当に申し訳ありませんでした!!」

「同じく申し訳ありませんでした!!」

まるでブラック企業で朝礼に社訓を読ませられた時くらいの元気な勢いで叫ぶふたり。

私はドン引きしながらふたりを見る、そこではじめて顔を上げたふたりがダブル上様ルックできた我々を直視した。

その瞬間、リュカ殿下もアヴェル焦って起き上がる。

「あ、あ、あ、救世主様メシアさま??」

「なっ、なっ」

なぜか青ざめているふたりと、ドヤ顔のラム様というカオスな状況にとりあえず私はどうしたのか話しかけようとしたのだが……。

「あの……」

「「キェェェェェェアァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」」
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