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59.社畜サラリーマンは決意する
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それから数日、私はリュカの話を考えないようにしていた。それが現実逃避なのは分かっていたが、どうしても彼から謝罪を受けても許すことが出来ると思えなかったからだ。
ただ、謝罪をしたいという相手を無視し続けるのも問題があるような気はしていた。
「はぁ……」
「シヅル、どうした??しわしわのピ〇チュウのような表情を浮かべて??」
竜帝陛下が心配そうに私の顔を覗き込んだ。最近は『異世界人のきもち』だけでなく、どうやら日本のアニメにも手を伸ばしているらしく、時々こういう新しいネタを挟んでくることがある。
「いえ……」
「悩みがあるならいつでも話して欲しい。余が全て受け止める」
竜帝陛下が抱きしめようと両手を拡げた姿がオオアリクイの威嚇のポーズっぽいなとぼんやりと思いながら、私は竜帝陛下のその腕の中に身を寄せる。以前なら考えられなかったが、今の私にとってこの人?いや、この竜人は一番信じている存在になっている。
だからこそ、思っていることを話す必要がある。
「リュカ殿下の件なのですが……、謝罪をしたいと言われましたが許せる気がしなく会いたくないと思ってしまっているのです」
その言葉に竜帝陛下は感情が読みにくい表情を浮かべた。
無表情ではないが笑っているわけでもない複雑な表情、しかしその口から出た言葉は割と軽やかなものだった。
「許せないなら許さないで良い。謝られたからと言って必ずしも許す必要はないのだから。だから、もしシヅルが良ければ謝罪だけ聞いて、『許せない』と素直な気持ちを突き返せば良い」
目から鱗の言葉だった。
日本には水に流すという言葉があり、社畜として長らく暮らしていたためどんなに釈然としなくても許さないといけないと自分に対して思い込んでいたからだ。
「私がリュカ殿下を許さなくても、許されるのですか??」
「もちろん。むしろシヅルは被害者なのだから決めて良いのだよ。もしそれでリュカが何かを言ったとしても余がシヅルを必ず守ろう」
竜帝陛下の言葉に最近めっきり緩くなってしまった涙腺が崩壊する。
沢山の問題を解決できたと思っていたけれど胸の奥でずっと眠っていたトラウマのような感情は癒されないままだったのだと自覚する。
「竜帝陛下……」
「ラム様と呼んでくれないか??」
いつもならそのまま無視する言葉だが私はそのぬくもりの中でゆっくり答えた。
「ラム様……、私はリュカ殿下に会います。そして、許せない気持ちを伝えます」
ただ、謝罪をしたいという相手を無視し続けるのも問題があるような気はしていた。
「はぁ……」
「シヅル、どうした??しわしわのピ〇チュウのような表情を浮かべて??」
竜帝陛下が心配そうに私の顔を覗き込んだ。最近は『異世界人のきもち』だけでなく、どうやら日本のアニメにも手を伸ばしているらしく、時々こういう新しいネタを挟んでくることがある。
「いえ……」
「悩みがあるならいつでも話して欲しい。余が全て受け止める」
竜帝陛下が抱きしめようと両手を拡げた姿がオオアリクイの威嚇のポーズっぽいなとぼんやりと思いながら、私は竜帝陛下のその腕の中に身を寄せる。以前なら考えられなかったが、今の私にとってこの人?いや、この竜人は一番信じている存在になっている。
だからこそ、思っていることを話す必要がある。
「リュカ殿下の件なのですが……、謝罪をしたいと言われましたが許せる気がしなく会いたくないと思ってしまっているのです」
その言葉に竜帝陛下は感情が読みにくい表情を浮かべた。
無表情ではないが笑っているわけでもない複雑な表情、しかしその口から出た言葉は割と軽やかなものだった。
「許せないなら許さないで良い。謝られたからと言って必ずしも許す必要はないのだから。だから、もしシヅルが良ければ謝罪だけ聞いて、『許せない』と素直な気持ちを突き返せば良い」
目から鱗の言葉だった。
日本には水に流すという言葉があり、社畜として長らく暮らしていたためどんなに釈然としなくても許さないといけないと自分に対して思い込んでいたからだ。
「私がリュカ殿下を許さなくても、許されるのですか??」
「もちろん。むしろシヅルは被害者なのだから決めて良いのだよ。もしそれでリュカが何かを言ったとしても余がシヅルを必ず守ろう」
竜帝陛下の言葉に最近めっきり緩くなってしまった涙腺が崩壊する。
沢山の問題を解決できたと思っていたけれど胸の奥でずっと眠っていたトラウマのような感情は癒されないままだったのだと自覚する。
「竜帝陛下……」
「ラム様と呼んでくれないか??」
いつもならそのまま無視する言葉だが私はそのぬくもりの中でゆっくり答えた。
「ラム様……、私はリュカ殿下に会います。そして、許せない気持ちを伝えます」
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