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55.社畜サラリーマンと……(ルゼル視点と志鶴視点)
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ハラハラとアナイスが消えた時、私の中の何かが解放されるのが分かった。
それが、何かははっきりとは分からない。ただ、ひとつ分かるのは私としての意識を保つことが出来るのがもうあとわずかであるということだ。
本来であれば、私はこの目の前の竜帝陛下と番いになり、ずっと抱いていた孤独から解き放たれて幸せに暮らすことができたのかもしれない。しかし、そうはならなかったのでもしかしてあったかもしれない想像をすることはできない。
「竜帝陛下……」
「ルゼル……余の番い」
その口から番いと言われた時、涙が頬を伝うのが分かった。前世では涙を流すことは許されなかったからしらなかったその感覚はとてもあたたかく、言葉にできない感情が胸の中を駆け巡る。
それは後悔でも憾みでもなく、もっと春の日の日だまりの下にいるようなそんな気分だった。
そうして悟る。私は、消えるのではなくきっと今、私の魂を持つシヅルという異世界人に完全に融合するのだろう。
ー今度こそ私は誰にも邪魔をされずに番いと死がふたりをわかつ日まで愛し合うことが出来るのだろう。
「ああ、最期に一度だけ、一度でいい。私を強く抱きしめて欲しい」
両手を広げた私に竜帝陛下が困ったような笑みを浮かべた。
「最期なんていわないでくれ。これからは余はシヅルも其方もずっと愛して、何度だって抱きしめるつもりなのだから……」
そう言うと、あたたかいキスの雨が顔中に降り注いでから、ジャスミンの香りに優しく閉じ込めるように抱きしめられた。
(とてもあたたかい……ずっとこのままでいたい)
とても穏やかな眠気が私を包む。このまま、このぬくもりにとけてしまえれば嬉しいと思って瞳を閉じる。まるで心地よい春の眠りのような感覚に静かに身をゆだねればそのまま意識がゆっくりと失われていった。
*******************************************
私は長い夢を見た。
私が私になるまでの長い長い夢を。沢山の生まれ変わりの中で愛を得ることが出来ずに絶望した幾千の記憶を。それは人間に耐えられないような孤独だった。
暗い冬の海の底にいるような絶望的な世界で、それでも私はその時々で足掻き続ける。それは僅かに光る海面の光に近付くためだったのかもしれない。
『大丈夫、今度は幸せになれるはずだ』
根拠のない自信に近いその言葉を何度も口にしながら最期まで孤独だった生も、全てを諦めて孤独に終わった生も、人々を愛し続けたが裏切られ続けた生も、全てがまるで編み物の網目のように重なり、そして、私は私に、立花志鶴になったのだ。
全てを理解して私は目を覚ますとそこには……、
「シヅル……」
目の周りを赤く腫らしたいとおしい人の顔があった。
それが、何かははっきりとは分からない。ただ、ひとつ分かるのは私としての意識を保つことが出来るのがもうあとわずかであるということだ。
本来であれば、私はこの目の前の竜帝陛下と番いになり、ずっと抱いていた孤独から解き放たれて幸せに暮らすことができたのかもしれない。しかし、そうはならなかったのでもしかしてあったかもしれない想像をすることはできない。
「竜帝陛下……」
「ルゼル……余の番い」
その口から番いと言われた時、涙が頬を伝うのが分かった。前世では涙を流すことは許されなかったからしらなかったその感覚はとてもあたたかく、言葉にできない感情が胸の中を駆け巡る。
それは後悔でも憾みでもなく、もっと春の日の日だまりの下にいるようなそんな気分だった。
そうして悟る。私は、消えるのではなくきっと今、私の魂を持つシヅルという異世界人に完全に融合するのだろう。
ー今度こそ私は誰にも邪魔をされずに番いと死がふたりをわかつ日まで愛し合うことが出来るのだろう。
「ああ、最期に一度だけ、一度でいい。私を強く抱きしめて欲しい」
両手を広げた私に竜帝陛下が困ったような笑みを浮かべた。
「最期なんていわないでくれ。これからは余はシヅルも其方もずっと愛して、何度だって抱きしめるつもりなのだから……」
そう言うと、あたたかいキスの雨が顔中に降り注いでから、ジャスミンの香りに優しく閉じ込めるように抱きしめられた。
(とてもあたたかい……ずっとこのままでいたい)
とても穏やかな眠気が私を包む。このまま、このぬくもりにとけてしまえれば嬉しいと思って瞳を閉じる。まるで心地よい春の眠りのような感覚に静かに身をゆだねればそのまま意識がゆっくりと失われていった。
*******************************************
私は長い夢を見た。
私が私になるまでの長い長い夢を。沢山の生まれ変わりの中で愛を得ることが出来ずに絶望した幾千の記憶を。それは人間に耐えられないような孤独だった。
暗い冬の海の底にいるような絶望的な世界で、それでも私はその時々で足掻き続ける。それは僅かに光る海面の光に近付くためだったのかもしれない。
『大丈夫、今度は幸せになれるはずだ』
根拠のない自信に近いその言葉を何度も口にしながら最期まで孤独だった生も、全てを諦めて孤独に終わった生も、人々を愛し続けたが裏切られ続けた生も、全てがまるで編み物の網目のように重なり、そして、私は私に、立花志鶴になったのだ。
全てを理解して私は目を覚ますとそこには……、
「シヅル……」
目の周りを赤く腫らしたいとおしい人の顔があった。
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