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52.社畜サラリーマンと竜帝陛下がわちゃわちゃしている裏側(志鶯視点(志鶴の義弟))
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あり得ない出来事の連続に呆然としていたが、目の前で狂った言動や行動を繰り返す男、アナイスと呼ばれていたそいつに何故か見覚えがある気がしていた。
(……なんでそんな風に思うんだ??この世界に来る前にあったことなんてあるはずないし……)
色々考えてみたが理由が分からなかったが、もしかしたら考えても分からない第六感的な感覚だったのかもしれない。
目の前では、竜帝が奇妙な触手で兄さんの体を包み込んで意識を集中しており、その隙を守る様に従者がアナイスを睨みつけていた。
(完全に忘れ去られてるな……しかし、あの化け物たちからどうすれば兄さんを救えるだろう……)
この世界は狂っていて、大半のヤツが触手のようなものを生やすような気色悪い連中だ。そんな連中に兄さんが凌辱、もとい卑猥なこともといなんかそういうことをされたらたまらない。
だからオレは様子を見ていた。すると、アナイスが妙な様子を見せるようになっていることに気付いた。何かブツブツと呟いているのだ。
それだけなら、気が触れたと思えばいいが、何かとても嫌な予感がした。例えるなら、兄さんを害そうとしているような気配、正直、勘でしかなかったがブツブツ呟くのを終えると同時に狂気に満ちた笑みをアナイスが浮かべた時に体が勝手に動いていた。
「危ない!!」
そうしてオレは兄さんが包まれている触手の前に庇うように咄嗟に立った。その瞬間、アナイスから黒い触手、いや矢のようなものが放たれた。
「……!!」
突然オレが前に出るという予想外の展開に、アナイスはそのままそれを放ったらしく、呆然としていた。
「……異世界の客人!?」
竜帝の従者がそう叫んだ声が聞こえた後すぐ、矢が自分の胸を貫いたのが分かった。
その瞬間、激痛が体を貫いて意識が遠のいていく。
(……オレ、死ぬのかな……)
死を覚悟した時、頬から涙が零れ落ちるのが分かった。それは悲しみの涙ではなく、恐怖から流れるものでもなかった。
「異世界の客人、ああ、傷が深すぎる、これでは竜帝陛下の力なくしては治すのは難しいが、ああ、今ラム様はペット様の精神世界の中だ」
徐々に体温を失う体と視界が歪んでいく中で、オレは一番伝えたい言葉を口にする。
「兄さん、オレ、兄さんのためになれたかな……」
いつも兄さんをオレは幸せにできなかった。けれど兄さんが好きで、ずっとずっと好きで……。
兄さんに届いたかは分からないけれど、気付いた時には一番幼かった日の光景が浮かんだ。それは兄さんがほんの一度だけオレに微笑んでくれたような気がした日の記憶、美しく笑う兄さんの姿。
「兄ちゃん、だいすき……ぃ」
何も知らず、兄さんをただただ慕っていた幼い頃のように無邪気に兄さんに駆け寄る幻影の中で、オレは意識を完全に手放した。
(……なんでそんな風に思うんだ??この世界に来る前にあったことなんてあるはずないし……)
色々考えてみたが理由が分からなかったが、もしかしたら考えても分からない第六感的な感覚だったのかもしれない。
目の前では、竜帝が奇妙な触手で兄さんの体を包み込んで意識を集中しており、その隙を守る様に従者がアナイスを睨みつけていた。
(完全に忘れ去られてるな……しかし、あの化け物たちからどうすれば兄さんを救えるだろう……)
この世界は狂っていて、大半のヤツが触手のようなものを生やすような気色悪い連中だ。そんな連中に兄さんが凌辱、もとい卑猥なこともといなんかそういうことをされたらたまらない。
だからオレは様子を見ていた。すると、アナイスが妙な様子を見せるようになっていることに気付いた。何かブツブツと呟いているのだ。
それだけなら、気が触れたと思えばいいが、何かとても嫌な予感がした。例えるなら、兄さんを害そうとしているような気配、正直、勘でしかなかったがブツブツ呟くのを終えると同時に狂気に満ちた笑みをアナイスが浮かべた時に体が勝手に動いていた。
「危ない!!」
そうしてオレは兄さんが包まれている触手の前に庇うように咄嗟に立った。その瞬間、アナイスから黒い触手、いや矢のようなものが放たれた。
「……!!」
突然オレが前に出るという予想外の展開に、アナイスはそのままそれを放ったらしく、呆然としていた。
「……異世界の客人!?」
竜帝の従者がそう叫んだ声が聞こえた後すぐ、矢が自分の胸を貫いたのが分かった。
その瞬間、激痛が体を貫いて意識が遠のいていく。
(……オレ、死ぬのかな……)
死を覚悟した時、頬から涙が零れ落ちるのが分かった。それは悲しみの涙ではなく、恐怖から流れるものでもなかった。
「異世界の客人、ああ、傷が深すぎる、これでは竜帝陛下の力なくしては治すのは難しいが、ああ、今ラム様はペット様の精神世界の中だ」
徐々に体温を失う体と視界が歪んでいく中で、オレは一番伝えたい言葉を口にする。
「兄さん、オレ、兄さんのためになれたかな……」
いつも兄さんをオレは幸せにできなかった。けれど兄さんが好きで、ずっとずっと好きで……。
兄さんに届いたかは分からないけれど、気付いた時には一番幼かった日の光景が浮かんだ。それは兄さんがほんの一度だけオレに微笑んでくれたような気がした日の記憶、美しく笑う兄さんの姿。
「兄ちゃん、だいすき……ぃ」
何も知らず、兄さんをただただ慕っていた幼い頃のように無邪気に兄さんに駆け寄る幻影の中で、オレは意識を完全に手放した。
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