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48.王妃の恐ろしいたくらみ(竜帝陛下視点)
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「シヅル!!」
シヅルの体に呪印により巻き付いた触手を払いその体を抱えあげたが、シヅルが目を覚ます気配がない。
「シヅルに何をした??」
本来余は、自分より弱き民を威圧するようなことは好まないし、行わないようにしている。しかし、最愛のシヅルを危険に陥らせるものを許すことは出来ず覇気を最大限に放った。
余の言葉に王妃は震えながらしかし言葉を発することはない。しかし、それを許すわけがない。
「……何をしたかと聞いている」
「答えられません」
震えながらもそう答えた時、ヘイズがとても不快そうに言葉を紡いだ。
「……まさか、貴方は禁忌を犯したのではありませんか??『魂吸い』という禁忌を……」
ヘイズの言葉に、余もハッとした。いままであまりに恐ろしいことで想像すらしていなかったが、王妃が『魂吸い』を行ったのなら、シヅルの今の状態にも合点がいった。
『魂吸い』とは文字通り、他者の魂を吸うという恐ろしい行為だが通常はそのようなことは容易にはできない。そもそも『魂吸い』を行ったところで相手の魂をどうこうすることが普通であればできない。
そこまで考えて、王妃が『魂欠け』であるということに思い至る。『魂欠け』は魂が欠けて不完全なため番が望めないとされる悲しい存在だが、もし『魂欠け』が『魂吸い』を行った場合、欠けたところを吸った魂を結合することが出来れば、ずっと王妃が言っている『ひとつになる』という意味合いに繋がる気がした。
しかし、当然そんなに単純に他者の魂を吸うことはできない。ましてやシヅルの魂、竜帝の番の者は特別だ。
「もし『魂吸い』を行おうとしているならば、シヅルは余の番の魂のカケラであり、汝の魂の強度では受け入れられぬぞ。だから諦めてシヅルを解放しろ」
「はははははは、そうです。普通なら難しい。けれど、だからこそ5千年かけたんですよ」
再び狂気の表情を浮かべた王妃はさらに言葉を続けた。
「お兄様の魂が下級世界に散り、そのかけらをゆっくりゆっくり探しだして僕の魂を埋められるサイズになるまで転生を見守ってきたのです。そして、ついにその大きさに達した。だから僕は、魂の婚姻を持って『魂吸い』をしてお兄様を手に入れるんだ」
うっとりとそう言われた時、余の頭にある情景が浮かんだ。それは、シヅルが元々居た異世界の光景で、シヅルの身内がシヅルと王妃の結婚を執り行い、神によりそれを認めさせようとするというものだった。
「そんなことは許さない。シヅルは余が幸せにするのだ、そう約束したからな」
シヅルの体に呪印により巻き付いた触手を払いその体を抱えあげたが、シヅルが目を覚ます気配がない。
「シヅルに何をした??」
本来余は、自分より弱き民を威圧するようなことは好まないし、行わないようにしている。しかし、最愛のシヅルを危険に陥らせるものを許すことは出来ず覇気を最大限に放った。
余の言葉に王妃は震えながらしかし言葉を発することはない。しかし、それを許すわけがない。
「……何をしたかと聞いている」
「答えられません」
震えながらもそう答えた時、ヘイズがとても不快そうに言葉を紡いだ。
「……まさか、貴方は禁忌を犯したのではありませんか??『魂吸い』という禁忌を……」
ヘイズの言葉に、余もハッとした。いままであまりに恐ろしいことで想像すらしていなかったが、王妃が『魂吸い』を行ったのなら、シヅルの今の状態にも合点がいった。
『魂吸い』とは文字通り、他者の魂を吸うという恐ろしい行為だが通常はそのようなことは容易にはできない。そもそも『魂吸い』を行ったところで相手の魂をどうこうすることが普通であればできない。
そこまで考えて、王妃が『魂欠け』であるということに思い至る。『魂欠け』は魂が欠けて不完全なため番が望めないとされる悲しい存在だが、もし『魂欠け』が『魂吸い』を行った場合、欠けたところを吸った魂を結合することが出来れば、ずっと王妃が言っている『ひとつになる』という意味合いに繋がる気がした。
しかし、当然そんなに単純に他者の魂を吸うことはできない。ましてやシヅルの魂、竜帝の番の者は特別だ。
「もし『魂吸い』を行おうとしているならば、シヅルは余の番の魂のカケラであり、汝の魂の強度では受け入れられぬぞ。だから諦めてシヅルを解放しろ」
「はははははは、そうです。普通なら難しい。けれど、だからこそ5千年かけたんですよ」
再び狂気の表情を浮かべた王妃はさらに言葉を続けた。
「お兄様の魂が下級世界に散り、そのかけらをゆっくりゆっくり探しだして僕の魂を埋められるサイズになるまで転生を見守ってきたのです。そして、ついにその大きさに達した。だから僕は、魂の婚姻を持って『魂吸い』をしてお兄様を手に入れるんだ」
うっとりとそう言われた時、余の頭にある情景が浮かんだ。それは、シヅルが元々居た異世界の光景で、シヅルの身内がシヅルと王妃の結婚を執り行い、神によりそれを認めさせようとするというものだった。
「そんなことは許さない。シヅルは余が幸せにするのだ、そう約束したからな」
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