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47.社畜サラリーマンは衝撃の事実を知る
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「……何を言っているんですか??」
父の言葉に思わず口を開く。そうして、この夢の中の父が正気でない事実に私はその時ようやく気付いたのだ。
老人のように見えた真っ白になった髪も、濁った目も、以前の父からは想像もできないくらいに薄汚れた服装もその全てが最後に見た父の印象から乖離したもので、そのことに驚いてそもそもの根本的なことに気付いていなかった。
「志鶴……、やっと見つけたんだ、相手を……。だから、この世では自分のせいで不幸にしてしまった息子……、せめてあの世では幸せに暮らしてほしい……」
そう言って私に手を伸ばした時、咄嗟にその手を払っていた。
「ふざけるな!!いまさら……いまさら償おうとしてももう遅い。それに貴方には大切な妻と息子がいるだろう」
そこまで口にして、そう言えば志鶯もこちらに来ていたなと思ったが、これは夢なのだから問題もないはずだとそう思った。
しかし、父の反応は自身の想像とは全く違うものだった。突然、その場でまるであの時の王妃のように笑いだしたのだ。
「ははははは、ああ、そうだ。本当に愚かだった。志鶴、私の息子はお前だけだったんだ。あの女はカッコウだったんだ」
「……カッコウって」
カッコウと言えば托卵をすることで有名な鳥だ。そして父の言葉からどうやら継母が他の男とできた子を実子として育てさせたのだと分かった。つまり義弟と思っていた志鶯は血の繋がりがなかったということだ。
(夢なのに妙に生々しいな……)
『これは夢ではないからな。シヅル怪我はないか??』
私が、父の言葉に呆然としていた時、聞きなれた、そして今一番聞きたいと思っていた声が聞こえた。
「竜帝陛下??」
そう小声で聞き返すが、どこにもその姿がない。
『すまない。そちらへ余はいけないので余の一部だけを送っている状態だ』
「一部って……」
竜帝陛下の言葉に、うっすら嫌な予感はしたが、それよりも聞きたいことがあった。
「これが夢じゃないのなら……本当に」
自分こそが唯一の息子だったということらしい。そして、父はせっせと実子を虐げて托卵された他人の子を溺愛していたことになる。まさにカッコウの雛のように、志鶯と継母により巣の中の子供は捨てられて惨めな最期を迎えたと目の前の父は思ったらしい。
「托卵される側のはずの鶯が托卵するなんてな……」
継母は鶯花という名前だったので志鶯の名前もそこからとられた。本来鶯は托卵される側の被害者なのだが、あのふたりは托卵する側だったらしい。
そんなことをぼんやり考えながら、しかし1ミリも目の前の父への同情の心は湧かなかった。
なんとも言いがたい感情で、ぼんやり立つ私の前で父が1枚の写真を取り出した。その写真の人物に私は見覚えがあった。
「……アナイス」
間違いない、それはこの世界に居るはずのない人物だがアナイスのものだった。
「どうして……」
『見つけた……シヅル。あの写真をシヅルの父親から奪わないといけない』
父の言葉に思わず口を開く。そうして、この夢の中の父が正気でない事実に私はその時ようやく気付いたのだ。
老人のように見えた真っ白になった髪も、濁った目も、以前の父からは想像もできないくらいに薄汚れた服装もその全てが最後に見た父の印象から乖離したもので、そのことに驚いてそもそもの根本的なことに気付いていなかった。
「志鶴……、やっと見つけたんだ、相手を……。だから、この世では自分のせいで不幸にしてしまった息子……、せめてあの世では幸せに暮らしてほしい……」
そう言って私に手を伸ばした時、咄嗟にその手を払っていた。
「ふざけるな!!いまさら……いまさら償おうとしてももう遅い。それに貴方には大切な妻と息子がいるだろう」
そこまで口にして、そう言えば志鶯もこちらに来ていたなと思ったが、これは夢なのだから問題もないはずだとそう思った。
しかし、父の反応は自身の想像とは全く違うものだった。突然、その場でまるであの時の王妃のように笑いだしたのだ。
「ははははは、ああ、そうだ。本当に愚かだった。志鶴、私の息子はお前だけだったんだ。あの女はカッコウだったんだ」
「……カッコウって」
カッコウと言えば托卵をすることで有名な鳥だ。そして父の言葉からどうやら継母が他の男とできた子を実子として育てさせたのだと分かった。つまり義弟と思っていた志鶯は血の繋がりがなかったということだ。
(夢なのに妙に生々しいな……)
『これは夢ではないからな。シヅル怪我はないか??』
私が、父の言葉に呆然としていた時、聞きなれた、そして今一番聞きたいと思っていた声が聞こえた。
「竜帝陛下??」
そう小声で聞き返すが、どこにもその姿がない。
『すまない。そちらへ余はいけないので余の一部だけを送っている状態だ』
「一部って……」
竜帝陛下の言葉に、うっすら嫌な予感はしたが、それよりも聞きたいことがあった。
「これが夢じゃないのなら……本当に」
自分こそが唯一の息子だったということらしい。そして、父はせっせと実子を虐げて托卵された他人の子を溺愛していたことになる。まさにカッコウの雛のように、志鶯と継母により巣の中の子供は捨てられて惨めな最期を迎えたと目の前の父は思ったらしい。
「托卵される側のはずの鶯が托卵するなんてな……」
継母は鶯花という名前だったので志鶯の名前もそこからとられた。本来鶯は托卵される側の被害者なのだが、あのふたりは托卵する側だったらしい。
そんなことをぼんやり考えながら、しかし1ミリも目の前の父への同情の心は湧かなかった。
なんとも言いがたい感情で、ぼんやり立つ私の前で父が1枚の写真を取り出した。その写真の人物に私は見覚えがあった。
「……アナイス」
間違いない、それはこの世界に居るはずのない人物だがアナイスのものだった。
「どうして……」
『見つけた……シヅル。あの写真をシヅルの父親から奪わないといけない』
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