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45.社畜サラリーマンは引きずりこまれる
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※ホラーな展開があるので苦手な方はご注意ください。
「シヅルを離せ!!」
バシッ!!!!
アナイスの邪悪な黒い触手に対して、竜帝陛下の見慣れた『聖根』、もとい純白の触手が黒く蠢く触手を弾く。
しかし、一足遅く僕を黒い触手が包み込んだ。
「りゅうてっ!!」
必死に手を伸ばすが竜帝陛下の『聖根』に届かず、ブラックホールのような状態となったそれに私の体をそのままその中へ引き摺りこまれた。
「シヅル!!!!!!!」
ブラックホールの中に引き込まれて意識を失いかけた私の耳には竜帝陛下の声の反響だけが残った。
*****************
しばらくして、目を覚ますとそこは家だった。家は私の実家で私にとって地獄のような記憶しかないところだった。
(どうして、こんなところに??)
正直、いまさら元の世界へ戻りたいという気持ちは1ミリも残っていなかっただけに深い絶望が私を襲った。
(竜帝陛下、いや、ラム様に会いたい……)
あのあたたかい腕の中のぬくもりを思い出したら涙が自然と零れた。ここに戻ってしまってはもう二度とあの人に会えなくなってしまう。
しかし、そもそも、ここは元の世界なのかとも思った。確か以前聞いた話だと、私はこちらの世界に戻った場合ゴ〇ラ位のサイズになるはずだが、そんな兆候はいまのところない。
(……だとしたら、これは夢なのかもしれない)
そうどこかぼんやりとした確信をした。そして、夢ならばもう一度私はあることが確認したいと思ったので、どこよりも親しみがありながらいつも冷たかった家の中に歩を進めることにした。
玄関の扉を開いて入った家の中はどこか薄暗くひんやりとしていた。
(おかしいな……ここは)
実家は裕福な名家だったので、家には沢山のお手伝いさんや家のことをしてくれる男衆もいたはずだ。それなのにまるで全てが居なくなったようなそんな静けさと家の中には明かりが灯っていなかった。
私は、違和感を感じながらもここは夢だから細部が違うのだと自分に言い聞かせる。
そして、目的のある場所を目指して歩いた。
長い廊下の一番突き当り、この大きな家の一番奥まったところに隠すようにあった薄暗い部屋。この家での私の立ち位置を示すようなどの部屋からも離れたその部屋。
それでも、家を出るまでずっと住んでいたそこにはほんのわずかに愛着があった。だから、どうせ夢ならもう一度見てみたいと思ってしまったのだ。
部屋の扉が開くと、そこは出て行った日とまるで変わらない私の部屋があった。勉強机も、簡易なパイプベッドも、子供用の図鑑や本が整然と並んでいるそこはほとんど人間のにおいがしないそんな部屋だった。
ぼんやりとすることもなくしばらくそこへ立ち尽くしていた時、部屋にある違和感があることに気付いた。
それは衣服をしまっていた押し入れがわずかに開いているのだがその隙間から見覚えのない赤いものがはみ出していたのだ。
「……なんだろう」
ゆっくりと押し入れに近付いてその赤いものを手に取るとそれが封筒だと分かった。私はそれの封を開いて中身を確認して絶句した。
「これは……うっ」
それは私の写真、髪の毛の束、爪が入っていたのだ。あまりの異質さに床にそれを落とす。
パサッ
「なんで、なんだこれ」
体が未知の恐怖に震えた時だった、部屋の前の長い廊下が軋む音が聞こえたのだ。
古い家ではあるので、廊下を歩くとキシキシと独特の木が軋む音がするのだ。以前なら気にしなかったが今の状況でのその音は恐怖しかなかった。
キシキシ
廊下に鳴り響く音はゆっくりだが確実へこちらへ向かっていた。
(隠れないと!!)
得体のしれない何かから隠れるように、私は押し入れに入り込んだ。しばらくすると扉がギシッと軋む音を立てて誰かが入り込んできたのが分かった。
押し入れの隙間から見えたのは真っ白い髪の老人のようだった。
(誰だ??)
知らない老人は、私が先ほど落とした赤い封筒を拾いあげるとその虚ろな瞳から涙が零れるのが分かった。
「あっ……志鶴、すまない、すまない」
そう言って泣きながら封筒から取り出した私の写真に謝る声を聞いた時、私の背筋がゾッとするのが分かった。
(あの声……まさか)
私は老人の顔をしっかりと確認しようと目を凝らして気付いてしまったのだ。その人物の正体に……。
「志鶴、ああ、自分は志鶴に、たったひとりの息子に酷いことをした。許してくれとは言わない、でもせめて幸せになってほしい、ほしいんだ」
「シヅルを離せ!!」
バシッ!!!!
アナイスの邪悪な黒い触手に対して、竜帝陛下の見慣れた『聖根』、もとい純白の触手が黒く蠢く触手を弾く。
しかし、一足遅く僕を黒い触手が包み込んだ。
「りゅうてっ!!」
必死に手を伸ばすが竜帝陛下の『聖根』に届かず、ブラックホールのような状態となったそれに私の体をそのままその中へ引き摺りこまれた。
「シヅル!!!!!!!」
ブラックホールの中に引き込まれて意識を失いかけた私の耳には竜帝陛下の声の反響だけが残った。
*****************
しばらくして、目を覚ますとそこは家だった。家は私の実家で私にとって地獄のような記憶しかないところだった。
(どうして、こんなところに??)
正直、いまさら元の世界へ戻りたいという気持ちは1ミリも残っていなかっただけに深い絶望が私を襲った。
(竜帝陛下、いや、ラム様に会いたい……)
あのあたたかい腕の中のぬくもりを思い出したら涙が自然と零れた。ここに戻ってしまってはもう二度とあの人に会えなくなってしまう。
しかし、そもそも、ここは元の世界なのかとも思った。確か以前聞いた話だと、私はこちらの世界に戻った場合ゴ〇ラ位のサイズになるはずだが、そんな兆候はいまのところない。
(……だとしたら、これは夢なのかもしれない)
そうどこかぼんやりとした確信をした。そして、夢ならばもう一度私はあることが確認したいと思ったので、どこよりも親しみがありながらいつも冷たかった家の中に歩を進めることにした。
玄関の扉を開いて入った家の中はどこか薄暗くひんやりとしていた。
(おかしいな……ここは)
実家は裕福な名家だったので、家には沢山のお手伝いさんや家のことをしてくれる男衆もいたはずだ。それなのにまるで全てが居なくなったようなそんな静けさと家の中には明かりが灯っていなかった。
私は、違和感を感じながらもここは夢だから細部が違うのだと自分に言い聞かせる。
そして、目的のある場所を目指して歩いた。
長い廊下の一番突き当り、この大きな家の一番奥まったところに隠すようにあった薄暗い部屋。この家での私の立ち位置を示すようなどの部屋からも離れたその部屋。
それでも、家を出るまでずっと住んでいたそこにはほんのわずかに愛着があった。だから、どうせ夢ならもう一度見てみたいと思ってしまったのだ。
部屋の扉が開くと、そこは出て行った日とまるで変わらない私の部屋があった。勉強机も、簡易なパイプベッドも、子供用の図鑑や本が整然と並んでいるそこはほとんど人間のにおいがしないそんな部屋だった。
ぼんやりとすることもなくしばらくそこへ立ち尽くしていた時、部屋にある違和感があることに気付いた。
それは衣服をしまっていた押し入れがわずかに開いているのだがその隙間から見覚えのない赤いものがはみ出していたのだ。
「……なんだろう」
ゆっくりと押し入れに近付いてその赤いものを手に取るとそれが封筒だと分かった。私はそれの封を開いて中身を確認して絶句した。
「これは……うっ」
それは私の写真、髪の毛の束、爪が入っていたのだ。あまりの異質さに床にそれを落とす。
パサッ
「なんで、なんだこれ」
体が未知の恐怖に震えた時だった、部屋の前の長い廊下が軋む音が聞こえたのだ。
古い家ではあるので、廊下を歩くとキシキシと独特の木が軋む音がするのだ。以前なら気にしなかったが今の状況でのその音は恐怖しかなかった。
キシキシ
廊下に鳴り響く音はゆっくりだが確実へこちらへ向かっていた。
(隠れないと!!)
得体のしれない何かから隠れるように、私は押し入れに入り込んだ。しばらくすると扉がギシッと軋む音を立てて誰かが入り込んできたのが分かった。
押し入れの隙間から見えたのは真っ白い髪の老人のようだった。
(誰だ??)
知らない老人は、私が先ほど落とした赤い封筒を拾いあげるとその虚ろな瞳から涙が零れるのが分かった。
「あっ……志鶴、すまない、すまない」
そう言って泣きながら封筒から取り出した私の写真に謝る声を聞いた時、私の背筋がゾッとするのが分かった。
(あの声……まさか)
私は老人の顔をしっかりと確認しようと目を凝らして気付いてしまったのだ。その人物の正体に……。
「志鶴、ああ、自分は志鶴に、たったひとりの息子に酷いことをした。許してくれとは言わない、でもせめて幸せになってほしい、ほしいんだ」
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