社畜サラリーマン、異世界で竜帝陛下のペットになる

ひよこ麺

文字の大きさ
上 下
42 / 68

38.私の幼馴染で恩人(ヘイズ視点)

しおりを挟む
「……」

ラム様はいつも浮かべている笑みを完全に引っ込めて眉間に皺をよせている。その腕の中には真っ青な顔のペット様が居た。

癒しの呪文を唱えていることはすぐに分かったが呪印の効果が強すぎるようでそれだけでは手詰まりなのが見てとれた。自分に出来ることはあまりないが、せめて少しでも元気が出るようにお茶を淹れた。

「……ヘイズか」

青ざめた顔でそう一言告げてまたペット様に呪文と唱えるラム様の様子に胸が痛んだ。

「陛下、無理はしないで少し休んでくださいーっ」

ラム様、私にとって大親友であるこの方は幼い頃から竜帝という重責を背負って生きて来た。

ラム様のご両親である前竜帝様と前王妃様はそれは仲睦まじい番同士だったと言われている。しかし、悲劇は突然訪れることになった。

今は帝国の一部である統治かつて存在した獣王の国が、前王妃様がラム様の卵をあたためるために故郷である辺境伯領へ里帰りしたタイミングで攻め込んできたのだ。

そうして、前王妃様と卵を奪おうとした獣王軍だったが、前王妃様が自らの命を犠牲にすることで卵は守られたのだが、番を失った前竜帝様は暴走し、獣王の国を滅ぼし、さらには自身の国まで破壊をはじめてしまった。

いくら優れた竜帝でもそうなってしまった場合は、国を治めることはできないため、前竜帝様は幽閉され、代わりにまだ生まれて間もないラム様が帝位につくことになった。

しかし、赤子が当然統治することはできないので、摂政がふたりついて成人までは政治を行うことになった。

ひとりが、前王妃様の父であり、ラム様の祖父でもあった前辺境伯様でもうひとりが当時国の宰相を務めていた私の父だった。

だから、私は幼い頃からラム様とは兄弟のように育った。しかし、イグリュウの血を引く私がラム様の側にいることを望まない者は多かった。

イグリュウに対する差別意識が大きいのは、かつてこの国を崩壊寸前まで陥らせたクーデターの首謀者となる一族だったこともあるが、それより以前からイグリュウへの潜在的な差別はあったと言われている。

イグリュウは蛇と呼ばれるが、その原因は元々は竜でありながら、大きな罪を犯して手足を切り取られて蛇となったと言われる話が帝国の建国神話によるものだった。

その神話から、イグリュウは罪を犯した竜人の家系と長年嫌悪されて、クーデターに至るまでになったのだとされている。

しかし、ラム様はそんな国の差別をなくそうと尽力してくださった。私と友人だったのもあるが心優しい方なので謂れもない差別により才能があっても閑職に追いやられていたイグリュウ達に手を差し伸べてくださったのだ。

それだけでも、ラム様に私は恩があった。

そして、年頃になり私にも番が居ることが分かった。番は近づけばわかると言われているが私の番は私が番だと未だに知らない。

正確な診断が出来ていないが番は番を感じ取りにくい病なのかもしれないと考えている。相手が感じ取れずとも私は番を愛し手を尽くし続けた。どんなに振り返らなくても竜人は番を愛する。それは最早本能と言っても過言ではない。

そんな私の秘密をラム様は言葉にしなくても察してくださり、その上で黙認してくださった。

それなのに……、私の番はは償いきれない罪を犯した。意図的に番い様の殺害に関わっていた疑惑が判明したのだ。

その事実を知った時、私はの死を覚悟しないといけなかった。

番が死ねばラム様のような特殊な理由がなければ狂竜になってしまう、だからそのことをラム様に伝えた時、あの方は真剣な表情で答えた。

の行ったことは許されることではない。本来であれば番もろとも死罪に処される位の重罪だ。しかし、ヘイズにはずっと世話になってきた。だから……」

ラム様の提案は意外なものだった。

を事件の諸々の取り調べが終わり次第、ラム様から私が褒美で頂いた別邸に幽閉することという条件だった。

別邸はとても広く美しいが、構造がとても変わっている。言うなれば大きな鳥籠のようなもので誰かを閉じ込めるのにとても適したものだった。

まだ、は目を覚まさないが、目を覚まし尋問が終われば永遠に私は番と暮らすことができるのだ。

そんなお膳立てまでしてくださったラム様だから、私はあることを伝えようと思った。

「……ラム様、ペット様の呪印を大きく後退させる方法がございます、ただ……」

その方法はラム様があまり好まないものなので今までは伝えずに来たが、もう時間がない。

「……どんな方法だ??リスクがあってもどんなものでも余は必ずシヅルを救えるなら聞かせて欲しい」

「貴方ならそう答えると思いました。ではお話します、その方法は……」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

処理中です...