41 / 68
37.社畜サラリーマンはデジャヴを覚える
しおりを挟む
竜帝陛下の優しい体温に抱かれて私は幼い子供の体だったこともあり眠ってしまった。
その日、私は幼い頃の夢を見ていた。家族4人で囲んでいる食卓、志鶯に無理やり連れて来られたそこに居るのが辛くてたまらなかったのを思い出す。
両親は志鶯としか話さず、私はいない者のように扱われているのに、志鶯だけが私に何度も話しかけてきた。
「兄さん、これ美味しいね」
そう言われるけれど、正直、気まずい食卓では私は何の味も感じることはできなかった。むしろ胃液が逆流しそうな中、なんとか曖昧に微笑む。
どう足掻いても美味しいなどという言葉は口から出なかった。まるで砂でも食べているような食卓の中で、志鶯はにこにこしながら私に何かを話し続ける。
けれどどんな会話をしたのか覚えていない。ただ、熱っぽい目で見つめる志鶯の姿に何か見覚えがあるような奇妙な感覚があった。その正体がずっと分からなかった。
(なんだろう、この奇妙な感覚……)
デジャヴというものなのかもしれないが、それにしてははっきりとしないそのもやもやした感覚のせいかもしれない。
また、あの黄金の髪の人になる夢を見た。
ただ、前のような処刑されたりするような酷い夢ではなく、その人の部屋に誰かがやってきてお茶をしているという夢だった。
その人は、プラチナブロンドというのだろうか、とても美しい髪の色に、容姿も端麗な少年だった。どこか庇護欲を掻き立てるような儚げな雰囲気で私の視点となっている美しい小公爵に話しかけている。
けれど、その言葉を小公爵は聞いていない。それよりもこの状況に対してひどく憤りを覚えていた。
(なぜ、父上も母上も私生児を引き取り、弟として接するようになどというのだ??)
苛立ちに満ちたその心の声と、状況は違うが先ほど私が見た記憶のように対して目の前のお茶の味がしない状況の中で、それでもその綺麗な、小公爵の義弟は話し続けていた。
そこで、私は気付いた。
その少年の少し熱っぽい視線がまるで、志鶯が私に向けていたそれにそっくりだということに。そこまで考えた時、突然体全体を酷い寒気が襲った。
それと同じタイミングで夢の中の情景が真っ黒なものに代わり、突然そいつは現れた。
『おにいちゃん』
そう私を呼んだのは、まるで影が人間の形をしているような真っ黒な何かだった。
「やっ、やだぁ!!」
そいつから逃げようと走る、が、全く距離が開かずむしろ徐々に近づいてきている。
『おにいちゃん』
男とも女ともとれないその声は妙にねっとりとしていて聞いているだけで心がざわついた。
「くるな!!いやだーーーーっ!!」
しかし、そう叫んだ時、いままでの運動不足が祟って足がもたれて転んでしまった。それをチャンスと思ったようでそいつは私にその黒い手を伸ばした。
『おにいちゃやあああああああん』
(もうだめだ……)
その日、私は幼い頃の夢を見ていた。家族4人で囲んでいる食卓、志鶯に無理やり連れて来られたそこに居るのが辛くてたまらなかったのを思い出す。
両親は志鶯としか話さず、私はいない者のように扱われているのに、志鶯だけが私に何度も話しかけてきた。
「兄さん、これ美味しいね」
そう言われるけれど、正直、気まずい食卓では私は何の味も感じることはできなかった。むしろ胃液が逆流しそうな中、なんとか曖昧に微笑む。
どう足掻いても美味しいなどという言葉は口から出なかった。まるで砂でも食べているような食卓の中で、志鶯はにこにこしながら私に何かを話し続ける。
けれどどんな会話をしたのか覚えていない。ただ、熱っぽい目で見つめる志鶯の姿に何か見覚えがあるような奇妙な感覚があった。その正体がずっと分からなかった。
(なんだろう、この奇妙な感覚……)
デジャヴというものなのかもしれないが、それにしてははっきりとしないそのもやもやした感覚のせいかもしれない。
また、あの黄金の髪の人になる夢を見た。
ただ、前のような処刑されたりするような酷い夢ではなく、その人の部屋に誰かがやってきてお茶をしているという夢だった。
その人は、プラチナブロンドというのだろうか、とても美しい髪の色に、容姿も端麗な少年だった。どこか庇護欲を掻き立てるような儚げな雰囲気で私の視点となっている美しい小公爵に話しかけている。
けれど、その言葉を小公爵は聞いていない。それよりもこの状況に対してひどく憤りを覚えていた。
(なぜ、父上も母上も私生児を引き取り、弟として接するようになどというのだ??)
苛立ちに満ちたその心の声と、状況は違うが先ほど私が見た記憶のように対して目の前のお茶の味がしない状況の中で、それでもその綺麗な、小公爵の義弟は話し続けていた。
そこで、私は気付いた。
その少年の少し熱っぽい視線がまるで、志鶯が私に向けていたそれにそっくりだということに。そこまで考えた時、突然体全体を酷い寒気が襲った。
それと同じタイミングで夢の中の情景が真っ黒なものに代わり、突然そいつは現れた。
『おにいちゃん』
そう私を呼んだのは、まるで影が人間の形をしているような真っ黒な何かだった。
「やっ、やだぁ!!」
そいつから逃げようと走る、が、全く距離が開かずむしろ徐々に近づいてきている。
『おにいちゃん』
男とも女ともとれないその声は妙にねっとりとしていて聞いているだけで心がざわついた。
「くるな!!いやだーーーーっ!!」
しかし、そう叫んだ時、いままでの運動不足が祟って足がもたれて転んでしまった。それをチャンスと思ったようでそいつは私にその黒い手を伸ばした。
『おにいちゃやあああああああん』
(もうだめだ……)
56
お気に入りに追加
592
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます


【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる