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34.社畜サラリーマンはプロポーズをされる
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「かわいいかわいいっていうけど、らみゅさまのいちばんになれらぃのつらいの」
そう自然と口にしている自分に驚いた。まごうことなき本音だったが、今までなら絶対に口にすることはできなかった。
それなのに、体の幼さに比例するように心まで幼くなっているようで思わず漏れてしまったその言葉に私は恥ずかしくなりそのまま体は固まるが、瞳からは涙が溢れてしまった。
この世界に来て、竜帝陛下に出会い優しくされて毎日が幸せで……。けれど、竜帝陛下は人外で私がどんなに好きになろうと既に妻もいる身で1番大切な存在になることはない。
その事実がじわじわと私の中で精神まで幼くなりはじめたこともあり不安と一緒に膨れ上がってしまったのだ。そんな私を竜帝陛下は一度ゆっくりと地面におろした。
(こんな風にみっともないことを言ってしまったから見捨てられちゃうのかもしれない……)
今までの竜帝陛下はいつも大体私を抱きしめたり抱えたりしていて特に理由なく降ろすことがなかった。だから、急に不安になってその表情を伺おうとした時、竜帝陛下がすぐ側に咲いていた美しい花オレンジ色のノウゼンカズラに手を差し伸べると不思議とその花が一輪竜帝陛下の掌におちた。
それを持った状態で竜帝陛下が私の方へ歩み寄った。
「???」
疑問に思って首を傾げると、竜帝陛下は私の前に跪いて、小さくなった左手をとった。そして、手に持っていたノウゼンカズラの大きな花弁が小さくなり、さらに現れた蔓がそのまま薬指に巻き付きまるで指輪のように姿を変えた。
あまりのことに驚いていると、竜帝陛下が真剣な表情で言った。
「シヅル、余は今のシヅルに無体を働くつもりはない。しかし、その状態でも婚姻を結ぶことはできる」
「えっ……れもぉ、らみゅさまにはおくしゃんが……」
王妃様がいるのだからどう足掻いたって不倫にしかならない、そう思ったが竜帝陛下は首を振る。
「王妃は便宜上の存在だ。余が番を持たない竜帝で王妃は余の番が居なくなった原因の一端を担った罪滅ぼしをしているにすぎない。王妃に番が現れたり、余が解放を申し出ればそれで終わりだ。後にも先にもこの永遠ともいえるような生の中でいとおしいと思ったのも愛しているのもシヅル、ただひとりだ」
そう言いきった竜帝陛下に、どうしても聞きたいことがあった。
「でも、つがいさまをあいしてはいなかったのでふ??」
竜人にとっての番は最も至高の存在だとされる。その言葉に竜帝陛下の表情が今までで一番悲しいものになる。
「余は、番を愛していたと言えない。いや、愛を自覚するより前に、しっかりと出会い語らう前に失ってしまったのだ。そのことはずっと心の奧にしまいこんで、もう二度と開かないつもりでいた。けれど……シヅルに出会って、シヅルが愛おしいと思った日から余の全てが変わったのだ」
そこで言葉をきった竜帝陛下が花の指輪が嵌った手の甲に恭しく口づけをする。
「シヅル、余と結婚してほしい」
そう自然と口にしている自分に驚いた。まごうことなき本音だったが、今までなら絶対に口にすることはできなかった。
それなのに、体の幼さに比例するように心まで幼くなっているようで思わず漏れてしまったその言葉に私は恥ずかしくなりそのまま体は固まるが、瞳からは涙が溢れてしまった。
この世界に来て、竜帝陛下に出会い優しくされて毎日が幸せで……。けれど、竜帝陛下は人外で私がどんなに好きになろうと既に妻もいる身で1番大切な存在になることはない。
その事実がじわじわと私の中で精神まで幼くなりはじめたこともあり不安と一緒に膨れ上がってしまったのだ。そんな私を竜帝陛下は一度ゆっくりと地面におろした。
(こんな風にみっともないことを言ってしまったから見捨てられちゃうのかもしれない……)
今までの竜帝陛下はいつも大体私を抱きしめたり抱えたりしていて特に理由なく降ろすことがなかった。だから、急に不安になってその表情を伺おうとした時、竜帝陛下がすぐ側に咲いていた美しい花オレンジ色のノウゼンカズラに手を差し伸べると不思議とその花が一輪竜帝陛下の掌におちた。
それを持った状態で竜帝陛下が私の方へ歩み寄った。
「???」
疑問に思って首を傾げると、竜帝陛下は私の前に跪いて、小さくなった左手をとった。そして、手に持っていたノウゼンカズラの大きな花弁が小さくなり、さらに現れた蔓がそのまま薬指に巻き付きまるで指輪のように姿を変えた。
あまりのことに驚いていると、竜帝陛下が真剣な表情で言った。
「シヅル、余は今のシヅルに無体を働くつもりはない。しかし、その状態でも婚姻を結ぶことはできる」
「えっ……れもぉ、らみゅさまにはおくしゃんが……」
王妃様がいるのだからどう足掻いたって不倫にしかならない、そう思ったが竜帝陛下は首を振る。
「王妃は便宜上の存在だ。余が番を持たない竜帝で王妃は余の番が居なくなった原因の一端を担った罪滅ぼしをしているにすぎない。王妃に番が現れたり、余が解放を申し出ればそれで終わりだ。後にも先にもこの永遠ともいえるような生の中でいとおしいと思ったのも愛しているのもシヅル、ただひとりだ」
そう言いきった竜帝陛下に、どうしても聞きたいことがあった。
「でも、つがいさまをあいしてはいなかったのでふ??」
竜人にとっての番は最も至高の存在だとされる。その言葉に竜帝陛下の表情が今までで一番悲しいものになる。
「余は、番を愛していたと言えない。いや、愛を自覚するより前に、しっかりと出会い語らう前に失ってしまったのだ。そのことはずっと心の奧にしまいこんで、もう二度と開かないつもりでいた。けれど……シヅルに出会って、シヅルが愛おしいと思った日から余の全てが変わったのだ」
そこで言葉をきった竜帝陛下が花の指輪が嵌った手の甲に恭しく口づけをする。
「シヅル、余と結婚してほしい」
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