社畜サラリーマン、異世界で竜帝陛下のペットになる

ひよこ麺

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26.社畜サラリーマンは正気度がゴリゴリと削られる

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「シヅル、ああ、このまま余の聖なる根を与えたい気分だが……どうやら良くないことが起きたようだな」

竜帝陛下は名残惜しそうに額に口づけると、そのまま優しく私に下着を着せて再び抱き上げられる。その間に正気となり自分がトイレで竜帝陛下に性的に甘えていたという事実に、魔法使い童貞がうっかり性の喜びを知ってしまったことでとんでもない痴態を晒した事実に泣きたい気持ちになった。

「あっあっ……」

恥ずかしさから某カオナシのような声が出てしまうが、竜帝陛下は私の頭をポンポンと優しく触れた。

「心配しないでも、この件がすんだらゆっくりじっくりこの続きをしよう」

そう最後に耳元で甘く囁かれて、まだほのかに熱が体の奧にある状態のまま、トイレから出た。

トイレのすぐ外にヘイズが神妙な面持ちで立っているのを確認した竜帝陛下は短く命令を口にする。

「ヘイズ、地下牢に至急騎士を送れ」

「竜帝陛下、承知いたしました」

突然の竜帝陛下の命令にもヘイズは動じずどこかへ向かった。その結果、部屋には私と竜帝陛下と五体投地したままのセシルだけが残された。

「セシル、お前には余と一緒に連中の捕縛の手伝いをしてほしい」

「承知いたしました……ブッ!!」

竜帝陛下の言葉に起き上がったセシルだったが、私の顔を直視してしまいまた鼻血を噴き出しながらも敬礼をしている。

そのおぞましい姿に私の正気度が減るより先に、竜帝陛下は私を抱きかかえたままセシル含めてどこかへ一瞬で移動した。何をいっているか分からないかもしれないが、私もわからない。多分、世に言う瞬間移動というヤツなのだが実際にそれを体験したことがなかったので気付いたら別の場所にいていまだに現実を掴みきれていない。

「竜帝陛下、なぜこの部屋に移動されたのですか??」

移動した先は、薄暗い部屋だったが、そこには召喚された日と同じ魔法陣がぼんやりと白く輝いているのが分かった。

その部屋からはその薄暗さで視界ははっきりしないが、何か大勢の人の気配がするのがわかった。

「リュカ……なぜこんなことをした」

息遣いしか私には分からなかったが、竜帝陛下はそう静かに告げた。その言葉に、ひとつの影が揺れたのが分かった。

「伯父上……僕は、伯父上を幸せにしたかった……だから…そのために、番い様が死んだからには、異世界人が必要で……あっああああああああ」

そこまで告げるなり、リュカは頭を押さえて蹲った。その様子に周りに居た影たち、あの日、私に暴行を加えて地下牢にいた近衛騎士達は慌てた様子で駆け寄った。

薄暗がりに目が慣れてきて見たその中に、あの忠実な黒髪の騎士の姿だけはないようだった。

「今日は、新月。月のない夜で異世界とまともなゲートは繋がらない日だ。それなのに愚かな。こんなことをして、お前自身の命までかけて禁忌をおかして何になる??それに前回も話したが、異世界人を無責任に呼び出すなと言ったはずだ」

竜帝陛下がリュカに告げるが、リュカは頭を抑えたまま蹲ったままだ。

「……いくら貴方が悪辣な竜人でも、ここまでなぜ異世界人に執着する。大体すでにこの世の至宝であるペット様がいらっしゃっているのに……」

「うるさい、そんな汚いおっさん……」

そう言って私の方を睨みつけたリュカだったが、急に表情が変わるのが分かる。まるで狐につままれたような表情で私の顔を見つめている。

「……伯父上、その腕の中にいるのは誰ですか??」

「シヅル、お前が異世界から無理やり呼び出した余の可愛い可愛い子だ」

竜帝陛下の言葉に、リュカは首を左右に振って叫んだ。

「嘘だ嘘だ、そんなはずない、もっと醜くて汚いおっさんだった、絶対に……こんなに美しい人ではなかった!!」

「さっきから、なんて失礼な!!ペット様はこの世界に降臨されたその日から絶対美しい、いや美しいなんて言葉で表現しきれないような御方だったはずだ!!」

セシルがびっくりするくらいの大声で反論したが、異世界から来た時は汚いおっさんだったはずなので私的にはリュカの言葉は正しいと思ったがセシルの目が怖すぎて何も言わないで見守ることにした。

「そもそもペット様は女神、この世界に降臨された最後の女神なのだ!!その御方を捕まえて汚いおっさんなどと!!もう許さん!!」

「あっ、ああああああああ!!!」

セシルがリュカに掴みかかったせいで場が、色々カオスになった時、私は魔法陣の上でこの光景を震えながら見ている誰かに気付いた。

(また、異世界人を呼び出したのか??)

そう思い、私と同じ身の上になった人物の顔を見ようと目を凝らした。暗がりの中でその人物の顔をはっきり視認した瞬間、私の体から血の気が引いていくのが分かった。

「……志鶯」

そこには紛れもない私の義弟が座っていたのだから……。
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