上 下
14 / 68

11.社畜サラリーマンは奇妙な夢を見る

しおりを挟む
意識を失った後、夢の中に居るのが分かった。

その夢の中の私は人生で一度だって居たことがないような絢爛豪華な部屋の中に居た。遠い昔に母に連れられて行った某高級ホテルのスイートルームよりも広く、装飾過多で今の私には落ち着ける気はしない場所だった。

けれど、その絢爛豪華な部屋に私は何故かなつかしさを感じた。

まるで、自分の部屋であるように全ての場所にあるものも、部屋のお気に入りの場所も即座に理解できた。

そして、同じようの驚いたのが装飾過多な姿見に映し出された自身の全体像だった。

そこには見慣れた黒髪に死んだ魚の目をしたサラリーマンは居ない。この世界の誰よりも見事なまさに黄金を切り出したような鮮やかな金髪に、竜帝陛下と並んでも遜色がないような美しい金の瞳をしたけれど少し傲慢そうな姿の絶世の美形が映し出されたのだ。

(誰だこれ……)

「……本当に最悪だ」

その人物は自然としゃべりだした。

「父上と母上はどうしてあいつをあんなヤツを弟として認めろというんだ。どこの女の子かもわからない私生児なんか!!」

そうして、近くにあった花瓶を手に取り勢いよく投げつけた。金属製のそれは割れることはなかったが銀の一部が凹んだ気がする。

なんてもったいないことをすると内心で思ったが、この体の人物は気にしていないようだった。

「おい」

「は、はいお坊ちゃま」

見るからに弱弱しい雰囲気の銀髪に糸目の召使の少年を呼びつけるとまた自然と言葉が紡がれた。この少年には見覚えがある気が何故かした。

「あの私生児の誕生日がもうすぐだったな。丁度良いからあいつにプレゼントを渡してやろうと思うんだ」

言葉には毒があるし、心が乱れていたがこの傲慢そうな人物はどうやらそこまで邪悪ではないようだ。何故なら彼の心の声が私にはハッキリ聞こえたからだ。

(でも、僕はこの公爵家の跡取りだからな。誇り高いものとして自分より目下のものには施しをやる必要があるだろう)

そこでどうも彼はツンデレタイプなのかもなと変な納得をした。

「あ、あの」

「そこで、何を贈るのが適切だ??僕には平民や下級貴族の欲しがるようなものが分からないからな」

(つまり、プレゼントに何を買えばよいか聞きたかったと、そう言うことか……)

「あ、それでしたら良い物があります」

おどおどしながらも、召使いの少年はある珍しい異国のお菓子の話を始めた。その話に納得したように、彼は頷く・

「うむ。そばボーロというのか。面白い。それに合いそうなよい茶葉と贈ろうか」

「あ、そうしたら、その異国のお茶で麦茶というものがございまして……」

などと妙に親近感のある食べ物の話をしていて変な気分になったが、あの召使いの少年の態度に私は違和感を感じた。

この視線の持ち主の人物は気にしていないが、私には彼が彼に対して恐れと憎悪を両方抱いているように感じたのだ。

「よし、ではそれを贈ってやろう」

彼がそう答えた時、確かに召使いの少年が一瞬邪悪な笑みを浮かべたのが分かった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

モルモットの生活

麒麟
BL
ある施設でモルモットとして飼われている僕。 日々あらゆる実験が行われている僕の生活の話です。 痛い実験から気持ち良くなる実験、いろんな実験をしています。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

上司と俺のSM関係

雫@更新不定期です
BL
タイトルの通りです。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。

丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。 イケメン青年×オッサン。 リクエストをくださった棗様に捧げます! 【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。 楽しいリクエストをありがとうございました! ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

処理中です...