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09.社畜サラリーマンは愛を知らない
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あの後、しばらく私はたまに全裸にされる以外は驚くほど平穏な日々を過ごした。
今日も、先ほど取り返したバスローブを着て華美なダイニングテーブルに腰掛けコーヒーを飲んでいた。
お気に入りの香り高いそれは、ジャコウリュウコーヒーと呼ばれていて特殊な香りで猫科全てを魅了し、当代の竜帝陛下に側近として仕えて国を救った伝説の竜人の子孫たちが作っているらしい。
その話だけだと大変胡散臭いが、味が確かなのであまり深くは考えないようにした。
「可愛い子ちゃん、胃が荒れないようにミルクも入れようね」
いつの間にか音もなく現れて向かい側の椅子に座った竜帝陛下が、真っ白な陶器製のミルクポットを差し出したが、首を振る。
「私はブラックコーヒーが好きなので大丈夫です」
「それは分かっている。しかし、まだ可愛い子ちゃんの体は完全には治っていない。だから余も辛いが少しだけ我慢しようね」
「……」
竜帝陛下のその言葉に、なんだか反抗したい気持ちになるが、そこに明確な気遣いが見えたので何も言わずにカップを置いた。
「いい子だね」
と優しく言われてから額に触れるだけの優しいキスをされる。まるで小さな子にするように……。
その後、コーヒーに渡されたミルクを注げば白が黒に広がり温かみのある茶色に姿を変える。
その様子に昔見たCMのカフェオレの歌を思い出す。
「白黒つけないか……」
「可愛い子ちゃんの世界ではそのような歌が流行りなのだな。この国では聞かない曲調だ」
歌った覚えはないが、竜帝陛下は横で嬉しそうに私が先ほど思い出したカフェオレのCMソングを口ずさんだ。
「……CMソングです。妙に耳に残るタイプの」
「なるほど。可愛い子ちゃんは好きな歌はあるのか??」
竜帝陛下の質問は普通だった。それなのに、何故か答えが浮かばない。
そこではたと気付いた。
今まで私は誰かに自分の好きなものなど聞かれた事がなかった。
いや、他者にとって今まで私に好きなものなど尋ねる必要がなかったのだ。
「どうして、そんなことを聞くのですか??」
純粋な疑問だった。私には私を誰かに晒すのが怖かった。私を守れるのは常に私だけだったのだから。
しかし、竜帝陛下は柔らかい笑みを浮かべて答えた。
「可愛い子ちゃんの余は喜ぶ姿が見たい。だから好きなものやことをちゃんと知りたい」
その表情を私は知らない。実の家族に愛はなく、友達もいなかった私には未知の顔だ。
今まではそういう場合恐怖が勝ったが、何故かそれだけで心が温まるような感覚がした。
「……そんなこと知っても意味ありませんよ」
思わずツンデレみたいなことを口にしてしまうが、それすら竜帝陛下は気にしない風に髪を撫でた。
「可愛い子ちゃんに関わることは全てにおいて余には意味がある」
きっぱりと言いきられた時、悔しさより嬉しさが勝る自分が信じがたかった。
「どうして、竜帝陛下は……」
問い返そうとした時、部屋をノックする音がした。
「誰か来ましたね」
しかし、竜帝陛下はいつものように部屋の中に入れとは言わない。何か険しい顔で部屋を見つめているだけだ。
「竜帝陛下??」
不思議に思った時、竜帝陛下が立ち上がりドアの前まで移動した。
「王妃、余はそなたがここに来ることを許可していない」
今日も、先ほど取り返したバスローブを着て華美なダイニングテーブルに腰掛けコーヒーを飲んでいた。
お気に入りの香り高いそれは、ジャコウリュウコーヒーと呼ばれていて特殊な香りで猫科全てを魅了し、当代の竜帝陛下に側近として仕えて国を救った伝説の竜人の子孫たちが作っているらしい。
その話だけだと大変胡散臭いが、味が確かなのであまり深くは考えないようにした。
「可愛い子ちゃん、胃が荒れないようにミルクも入れようね」
いつの間にか音もなく現れて向かい側の椅子に座った竜帝陛下が、真っ白な陶器製のミルクポットを差し出したが、首を振る。
「私はブラックコーヒーが好きなので大丈夫です」
「それは分かっている。しかし、まだ可愛い子ちゃんの体は完全には治っていない。だから余も辛いが少しだけ我慢しようね」
「……」
竜帝陛下のその言葉に、なんだか反抗したい気持ちになるが、そこに明確な気遣いが見えたので何も言わずにカップを置いた。
「いい子だね」
と優しく言われてから額に触れるだけの優しいキスをされる。まるで小さな子にするように……。
その後、コーヒーに渡されたミルクを注げば白が黒に広がり温かみのある茶色に姿を変える。
その様子に昔見たCMのカフェオレの歌を思い出す。
「白黒つけないか……」
「可愛い子ちゃんの世界ではそのような歌が流行りなのだな。この国では聞かない曲調だ」
歌った覚えはないが、竜帝陛下は横で嬉しそうに私が先ほど思い出したカフェオレのCMソングを口ずさんだ。
「……CMソングです。妙に耳に残るタイプの」
「なるほど。可愛い子ちゃんは好きな歌はあるのか??」
竜帝陛下の質問は普通だった。それなのに、何故か答えが浮かばない。
そこではたと気付いた。
今まで私は誰かに自分の好きなものなど聞かれた事がなかった。
いや、他者にとって今まで私に好きなものなど尋ねる必要がなかったのだ。
「どうして、そんなことを聞くのですか??」
純粋な疑問だった。私には私を誰かに晒すのが怖かった。私を守れるのは常に私だけだったのだから。
しかし、竜帝陛下は柔らかい笑みを浮かべて答えた。
「可愛い子ちゃんの余は喜ぶ姿が見たい。だから好きなものやことをちゃんと知りたい」
その表情を私は知らない。実の家族に愛はなく、友達もいなかった私には未知の顔だ。
今まではそういう場合恐怖が勝ったが、何故かそれだけで心が温まるような感覚がした。
「……そんなこと知っても意味ありませんよ」
思わずツンデレみたいなことを口にしてしまうが、それすら竜帝陛下は気にしない風に髪を撫でた。
「可愛い子ちゃんに関わることは全てにおいて余には意味がある」
きっぱりと言いきられた時、悔しさより嬉しさが勝る自分が信じがたかった。
「どうして、竜帝陛下は……」
問い返そうとした時、部屋をノックする音がした。
「誰か来ましたね」
しかし、竜帝陛下はいつものように部屋の中に入れとは言わない。何か険しい顔で部屋を見つめているだけだ。
「竜帝陛下??」
不思議に思った時、竜帝陛下が立ち上がりドアの前まで移動した。
「王妃、余はそなたがここに来ることを許可していない」
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