社畜サラリーマン、異世界で竜帝陛下のペットになる

ひよこ麺

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07.社畜サラリーマンは帰れない事実を知る

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「そういえば、仕事を投げ出してきてしまったので元の世界へ帰りたいのですが」

このままこの世界で生活する流れになっているが、自分としてはこんな意味の分からない生活を続けるつもりはない。特によく全裸に剥かれるタイプの世界は嫌だ。

「ん、ああ、すまない可愛い子ちゃん。元の世界へは帰ることは不可能だ。しかし、その分、余がこの先ずっと大切に大切にしよう」

「アッ……ワッ」

あっさりと元の世界へ帰れないと言われたことに動揺し、うっかり某ちいさくって可愛い存在のような声が漏れてしまった。

「可愛い子ちゃん可愛い。本当に可愛い子ちゃんはちいさくって可愛い」

いつの間にかまたきょりをつめた竜帝陛下に頬ずりされて表情が歪む。

「やめてください。本当のちいさくってかわいいやつに謝罪してください。私はただの草臥れた存在です。いや、そうじゃなく、どうして召喚できるのに帰れないのですか??」

いつものノリに流されかけたが、とても重要な部分なので元の話に戻す。

すると竜帝陛下ではなくヘイズが答えた。

「すごくややこしいのですが、この世界にある召喚用のゲートは一方通行なのですよーっ。そのため、異世界から召喚した場合、元の世界へ送り返すことができないのですよーっ。これについては次元が異なるのが原因のようで、低い次元から高い次元へは連れて行けるけれど、逆は不可能とされていますよーっ。無理に戻ろうとすると最悪世界が質量の関係で壊れちゃうので諦めてくださいですよーっ」

「ハァ??」

あまりのことに煽るタイプの某かわいい生き物みたいな声が漏れたが関係ない。

「いや、高次から低次になら行き放題ではないのですか??」

訳がわからなくなる私を竜帝陛下が膝の上に乗せて頭を撫でながら答えた。

「可愛い子ちゃん。たとえば目の前になんとかバニアの家族みたいな可愛い子がわちゃっと暮らす場所があるとして、そこに可愛い子ちゃんが行ったらどうなる??」

「……サイズ的に潰してしまうかと」

「そう。ちなみに今、可愛い子ちゃんは全部ちいさくって可愛いが、元の世界に戻る場合のサイズ感はゴジ◯の10倍程度のサイズ感になってしまうのだ」

要約すると一度この世界に来てしまうと元の世界では怪物サイズになってしまうらしい。

「……それはそれでありですね。あの会社を自らの足で潰すチャレンジができる」

力を手にすると人間がろくなことを考えない見本みたいなことを思わず口走る。

会社にあまり良い記憶はない。けれど、家を出た私に会社を辞める選択肢はなかった。ただ、それだけだ。

結果、その弱みにつけこまれて上司にいいようにされていたし、新人の高橋は仕事がわからないと言って全然仕事しないで大半を私に押し付けていた。

しかし、高橋自体が確か取引先のご令息であまり厳しいことが言えなかったのを思い出した。

(地獄だった……)

そこまで考えて田中のことを思い出した。田中は優秀なヤツで だったが、優秀すぎて周りに馴染めずにうちのチームに飛ばされた男だった。

『立花さんは働きすぎだ。そんなんじゃコスパも落ちるし良いことがない。なんならあの無能野郎かちょうに僕から言いましょうか??』

田中は私を唯一心配してくれた。最後に会った日、田中はこんなことを言っていた。

『もうすぐ、上司が代わります。そうしたらここをもっと働きやすく変えていきましょう。立花さんは自分を過小評価していますが、あなたは充分優秀な人だ』

「……田中もいるなら会社を潰すのはやめよう」

そう記憶から帰還して呟いた時、何故か竜帝陛下が今まで見たことのない邪悪な笑みを浮かべていた。

「可愛い子ちゃんがこんなに痛めつけられていたなんて……。あちらの世界は滅ぼした方が良いか??」
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