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05.可愛い子ちゃんがやってきた(竜帝陛下視点)
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余はこの世界の帝であり、そして神に等しい存在でもある。
竜神の創造したこの世界にはその血を引く竜人とその他獣人や精霊が暮らしている。竜人は神の血を半分引くため、この国では王侯貴族はみな竜人だ。
その中で、たまに生まれてくる存在が神還りと呼ばれる余のような角を持つ者であり、そのものは神と同等の力を持つとされているため、畏怖されている。
そのせいもあり、余には、民の気持ちがあまりよく分からなかった。ただ、何が国にとって最良かは手に取るようにわかる。
余が心を理解できないせいか番いを認識することも、通常の竜人より遅れてしまい、永遠に失う羽目になってしまったのだろう。もし番いが存在すればもう少し余も他の者の気持ちを理解できたかもしれない。
竜人は番い以外とは子を作ることは出来ない。さらに運が悪いことに神還りは番いとの子が居なければ永遠に死を失う。結果、余はこの国を永久に統べる帝となってしまった。
幾千年が過ぎた段階で感情は完全に消え失せただ、最善だけを国のために尽くすことだけが義務だった。このまま、永遠に感情を無くしたまま伽藍の洞のように生きるはずだった。
『助けてくれ!!誰か!!』
そう救いを求める可愛い子ちゃんの声を聞くまでは……。
まるで運命のように声に導かれた先ではじめて、シヅルと目があった瞬間に胸の奥に湧き立ったソレはいままで感じたことのない感情だった。
(この存在だけは、誰より何より大切にしたい……)
すべてを犠牲にしてもこの子だけは、この可愛い子ちゃんは守らねばと思うような強烈な感覚だった。
それと同時にその可愛い子ちゃんが、暴力を振るわれてあざと傷を負って死にそうになっている事実に失われたはずの怒りが湧き上がった。
感情のままに周りが萎縮することも気にせずに覇気を放ち首謀者のリュカを含めて全員を地下牢に閉じ込めた。
本来、竜人は貴重な存在のため重罪を犯しても貴族牢行きだが、可愛い子ちゃんを傷つけたのだそんな生ぬるい罪で許す気はない。
全員を血祭りにあげたいとすら一瞬思ったが一度理性で押さえた。後ほど、しっかりと余の法に照らし合わせて罪を償わせることにしよう。
しかし、その夜、王妃が余のもとへ息を切らせてやってきた。
プラチナブロンドのサラサラの髪は綺麗に切りそろえられていて肩にかかる程度の長さで揺れている。竜神の証である金色の瞳を儚げなに揺らした美青年である王妃は頬を紅色に染めながら訴えた。
「陛下、流石にやりすぎではありませんか」
普通なら美しいと感じるその姿を見ても余の中では可愛い子ちゃんに抱くような感情はやはり湧かなかった。
王妃は余の番いが事故により失われた件にリュカとふたりで関与している。
その罪滅ぼしとして形式上娶ることになった番いの身内であるが、姿絵で見た本当の番いであったルゼルとは似ても似つかない。
しかし、あくまで契約結婚のため王妃の番いが現れたなら解放するつもりでいる。
「どうかリュカを許して頂けませんか??異世界人を呼び出したのは私の提案によるもの、罪は私にもあるのです」
王妃は、涙を浮かべながらリュカを許してほしいと懇願した。自分より弱いものをいたぶる趣味がないので今まではその願いを叶えていた。
しかし、出会った瞬間から誰よりも大切な存在になった可愛い子ちゃんへの行いを見過ごすつもりは甥っ子に対しても毛頭ない。
『この世界に来ることを望んだ者』以外を無理矢理召喚する』こと自体が大罪だ。
なんせ召喚されたら永遠に帰れないのだから。だから事前に相手に許可をもらい契約をしなければいけない。王妃は『無断召喚』は望んでいなかっただろうが短絡的なリュカはそれを実行してしまったのだろう。
それについては、可愛い子ちゃんの体の傷を丁寧にくまなく完璧に治した際に丹念に確認して『契約印』がないことを確認したので間違いない。『契約印』がないということは無理矢理連れ去られたことが明確だった。
「リュカは無断で相手の同意なしに異世界人を呼び出したのだ。軽い罪ではすますことはない」
明確な意思を伝えると、何かを小さくつぶやいてから、
「なら、せめてリュカと少し話をさせて頂けませんか??」
「わかった。ただし、監視はつける。
内心ですぐにでも可愛い子ちゃんを吸いたい欲求にかられていたのでそう許可を出した。
「ありがとうございます、感謝いたします」
王妃はそう礼だけ言うと立ち去った。
(早く、可愛い子ちゃんに会いたい……)
その会話が終わるなり早足で可愛い子ちゃんの元を訪れるとまだ可愛い子ちゃんは夢の中にいた。
閉じた瞳を覆う長いまつ毛がわずかに震えている。体は華奢で強く抱きしめたら壊してしまいそうなので注意しないといけないなど考えていると可愛い子ちゃんの唇から苦し気な寝言が漏れた。
「ちがう、ちがうやってない、やってない!!」
魘されながら可愛い子ちゃんが、叫んだその言葉に余の中で、見たことのない風景が浮かぶ。それは地下牢に繋がれた誰かの視点で必死に無実を訴えている場面だった。
「これは、一体……」
何かを思い出そうとしたがまだ何かが足りず思い出すことは出来なかった。
竜神の創造したこの世界にはその血を引く竜人とその他獣人や精霊が暮らしている。竜人は神の血を半分引くため、この国では王侯貴族はみな竜人だ。
その中で、たまに生まれてくる存在が神還りと呼ばれる余のような角を持つ者であり、そのものは神と同等の力を持つとされているため、畏怖されている。
そのせいもあり、余には、民の気持ちがあまりよく分からなかった。ただ、何が国にとって最良かは手に取るようにわかる。
余が心を理解できないせいか番いを認識することも、通常の竜人より遅れてしまい、永遠に失う羽目になってしまったのだろう。もし番いが存在すればもう少し余も他の者の気持ちを理解できたかもしれない。
竜人は番い以外とは子を作ることは出来ない。さらに運が悪いことに神還りは番いとの子が居なければ永遠に死を失う。結果、余はこの国を永久に統べる帝となってしまった。
幾千年が過ぎた段階で感情は完全に消え失せただ、最善だけを国のために尽くすことだけが義務だった。このまま、永遠に感情を無くしたまま伽藍の洞のように生きるはずだった。
『助けてくれ!!誰か!!』
そう救いを求める可愛い子ちゃんの声を聞くまでは……。
まるで運命のように声に導かれた先ではじめて、シヅルと目があった瞬間に胸の奥に湧き立ったソレはいままで感じたことのない感情だった。
(この存在だけは、誰より何より大切にしたい……)
すべてを犠牲にしてもこの子だけは、この可愛い子ちゃんは守らねばと思うような強烈な感覚だった。
それと同時にその可愛い子ちゃんが、暴力を振るわれてあざと傷を負って死にそうになっている事実に失われたはずの怒りが湧き上がった。
感情のままに周りが萎縮することも気にせずに覇気を放ち首謀者のリュカを含めて全員を地下牢に閉じ込めた。
本来、竜人は貴重な存在のため重罪を犯しても貴族牢行きだが、可愛い子ちゃんを傷つけたのだそんな生ぬるい罪で許す気はない。
全員を血祭りにあげたいとすら一瞬思ったが一度理性で押さえた。後ほど、しっかりと余の法に照らし合わせて罪を償わせることにしよう。
しかし、その夜、王妃が余のもとへ息を切らせてやってきた。
プラチナブロンドのサラサラの髪は綺麗に切りそろえられていて肩にかかる程度の長さで揺れている。竜神の証である金色の瞳を儚げなに揺らした美青年である王妃は頬を紅色に染めながら訴えた。
「陛下、流石にやりすぎではありませんか」
普通なら美しいと感じるその姿を見ても余の中では可愛い子ちゃんに抱くような感情はやはり湧かなかった。
王妃は余の番いが事故により失われた件にリュカとふたりで関与している。
その罪滅ぼしとして形式上娶ることになった番いの身内であるが、姿絵で見た本当の番いであったルゼルとは似ても似つかない。
しかし、あくまで契約結婚のため王妃の番いが現れたなら解放するつもりでいる。
「どうかリュカを許して頂けませんか??異世界人を呼び出したのは私の提案によるもの、罪は私にもあるのです」
王妃は、涙を浮かべながらリュカを許してほしいと懇願した。自分より弱いものをいたぶる趣味がないので今まではその願いを叶えていた。
しかし、出会った瞬間から誰よりも大切な存在になった可愛い子ちゃんへの行いを見過ごすつもりは甥っ子に対しても毛頭ない。
『この世界に来ることを望んだ者』以外を無理矢理召喚する』こと自体が大罪だ。
なんせ召喚されたら永遠に帰れないのだから。だから事前に相手に許可をもらい契約をしなければいけない。王妃は『無断召喚』は望んでいなかっただろうが短絡的なリュカはそれを実行してしまったのだろう。
それについては、可愛い子ちゃんの体の傷を丁寧にくまなく完璧に治した際に丹念に確認して『契約印』がないことを確認したので間違いない。『契約印』がないということは無理矢理連れ去られたことが明確だった。
「リュカは無断で相手の同意なしに異世界人を呼び出したのだ。軽い罪ではすますことはない」
明確な意思を伝えると、何かを小さくつぶやいてから、
「なら、せめてリュカと少し話をさせて頂けませんか??」
「わかった。ただし、監視はつける。
内心ですぐにでも可愛い子ちゃんを吸いたい欲求にかられていたのでそう許可を出した。
「ありがとうございます、感謝いたします」
王妃はそう礼だけ言うと立ち去った。
(早く、可愛い子ちゃんに会いたい……)
その会話が終わるなり早足で可愛い子ちゃんの元を訪れるとまだ可愛い子ちゃんは夢の中にいた。
閉じた瞳を覆う長いまつ毛がわずかに震えている。体は華奢で強く抱きしめたら壊してしまいそうなので注意しないといけないなど考えていると可愛い子ちゃんの唇から苦し気な寝言が漏れた。
「ちがう、ちがうやってない、やってない!!」
魘されながら可愛い子ちゃんが、叫んだその言葉に余の中で、見たことのない風景が浮かぶ。それは地下牢に繋がれた誰かの視点で必死に無実を訴えている場面だった。
「これは、一体……」
何かを思い出そうとしたがまだ何かが足りず思い出すことは出来なかった。
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