8 / 20
07.新しい住まいにものがなさすぎる
しおりを挟む
目の前には何も中身のない部屋が広がっていた。
これは比喩でもなんでもなく文字通りなにひとつなかった。
「うわぁ、がわしかないってベッドもないし、クローゼットもないだと!!」
文字通りギリギリ雨風をしのげるだけの小屋に、僕は辺境の地の騎士団、「 薔薇の穴」の意図を汲み取る。
歓迎はされないとはわかっていたが、流石に酷いと思ったが、それならそれで仕方ない。
(今までだってその環境、環境で最善の生き方をしてきたし、今回もなんとかなるはず……)
生まれた時から伊達に嫌われ慣れてはいない、僕はとりあえず必要なものを買うために髪色を持ってきた粉でクロに変えて、一応顔を隠して家から出た。
一応、「 薔薇の穴」の騎士団は辺境伯の邸宅内にあるので門番の前を通らないといけない。
(上手くいくと良いけど……)
門前にはタレ目の少し軽そうな茶髪に癖毛の男が立っていた。
その横を堂々と通る。
こそこそすると気にされるから割と強気にいくのがコツだ。
「とまれ」
そう言われて、仕方なく止まる。作戦1は失敗だがこれから作戦2にうつろう。
「はい」
「見ない顔だな、お前だぁれ??」
フランクだけど隙のない仕草で言われたが、これでたじろいだりしない。
「僕だよ、僕、覚えてない??」
題してぼくぼく詐欺もとい相手に似ているヤツっぽくして名前言わせる大作戦だ。
「ああ、ジョンか。うん、あのうだつの上がらない」
(かかったな!!)
内心でほくそ笑んでジョンっぽく答えた。
「うん、そうだよ、だから通して……」
しかし、男はニコニコしながら僕に組みついた。
「ざぁんねん。ジョンとかいそうでうちには居ないんだよ。怪しいヤツ捕まえたぁ」
「ひぃ、くっそ。ただ買い物に行くつもりが!!」
ポロリと漏れた本音に男は異様な物を見る様な顔になる。
「買い物ぉ??騎士団には配給が充分あるんだしいらなくない??」
その言葉に、もうこうなれば本当のこと言って謝るしかないので、買い物に行く経緯を話した。
「ああ、お前が噂の女たらしね。マイマイが嫌がりそうなタイプだよね」
「マイマイ??そうなんだよ、このままじゃ死んじゃうというか多分死ねってことなんだけどしにたくないじゃん??」
「わかる、実はオレもマイマイにきらわれてんの♪ それで前線から左遷されてここにきたんだよね」
その言葉にチャンスだと思った。彼ならば外に出してくれるかもしれない。
「なら、僕ら嫌われものフレンズだよね。だから、フレンズのお願い聞いてくれない??」
女の子には百発百中の上目遣いを披露して必死に懇願した。
「あ、それは無理。逃走手助けしたとか思われたら嫌だし。お前は団長のとこに連れてくけど」
あっさり言われて、悲しいけど上目遣いは男には効かないことを実感した。
そして、僕はドナドナをまた口ずさんだ。すると、捕まえてる門番も一緒に楽しげにハミングしながら団長の部屋まで連行された。
これは比喩でもなんでもなく文字通りなにひとつなかった。
「うわぁ、がわしかないってベッドもないし、クローゼットもないだと!!」
文字通りギリギリ雨風をしのげるだけの小屋に、僕は辺境の地の騎士団、「 薔薇の穴」の意図を汲み取る。
歓迎はされないとはわかっていたが、流石に酷いと思ったが、それならそれで仕方ない。
(今までだってその環境、環境で最善の生き方をしてきたし、今回もなんとかなるはず……)
生まれた時から伊達に嫌われ慣れてはいない、僕はとりあえず必要なものを買うために髪色を持ってきた粉でクロに変えて、一応顔を隠して家から出た。
一応、「 薔薇の穴」の騎士団は辺境伯の邸宅内にあるので門番の前を通らないといけない。
(上手くいくと良いけど……)
門前にはタレ目の少し軽そうな茶髪に癖毛の男が立っていた。
その横を堂々と通る。
こそこそすると気にされるから割と強気にいくのがコツだ。
「とまれ」
そう言われて、仕方なく止まる。作戦1は失敗だがこれから作戦2にうつろう。
「はい」
「見ない顔だな、お前だぁれ??」
フランクだけど隙のない仕草で言われたが、これでたじろいだりしない。
「僕だよ、僕、覚えてない??」
題してぼくぼく詐欺もとい相手に似ているヤツっぽくして名前言わせる大作戦だ。
「ああ、ジョンか。うん、あのうだつの上がらない」
(かかったな!!)
内心でほくそ笑んでジョンっぽく答えた。
「うん、そうだよ、だから通して……」
しかし、男はニコニコしながら僕に組みついた。
「ざぁんねん。ジョンとかいそうでうちには居ないんだよ。怪しいヤツ捕まえたぁ」
「ひぃ、くっそ。ただ買い物に行くつもりが!!」
ポロリと漏れた本音に男は異様な物を見る様な顔になる。
「買い物ぉ??騎士団には配給が充分あるんだしいらなくない??」
その言葉に、もうこうなれば本当のこと言って謝るしかないので、買い物に行く経緯を話した。
「ああ、お前が噂の女たらしね。マイマイが嫌がりそうなタイプだよね」
「マイマイ??そうなんだよ、このままじゃ死んじゃうというか多分死ねってことなんだけどしにたくないじゃん??」
「わかる、実はオレもマイマイにきらわれてんの♪ それで前線から左遷されてここにきたんだよね」
その言葉にチャンスだと思った。彼ならば外に出してくれるかもしれない。
「なら、僕ら嫌われものフレンズだよね。だから、フレンズのお願い聞いてくれない??」
女の子には百発百中の上目遣いを披露して必死に懇願した。
「あ、それは無理。逃走手助けしたとか思われたら嫌だし。お前は団長のとこに連れてくけど」
あっさり言われて、悲しいけど上目遣いは男には効かないことを実感した。
そして、僕はドナドナをまた口ずさんだ。すると、捕まえてる門番も一緒に楽しげにハミングしながら団長の部屋まで連行された。
37
お気に入りに追加
258
あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

社畜サラリーマン、異世界で竜帝陛下のペットになる
ひよこ麺
BL
30歳の誕生日を深夜のオフィスで迎えた生粋の社畜サラリーマン、立花志鶴(たちばな しづる)。家庭の都合で誰かに助けを求めることが苦手な志鶴がひとり涙を流していた時、誰かの呼び声と共にパソコンが光り輝き、奇妙な世界に召喚されてしまう。
その世界は人類よりも高度な種族である竜人とそれに従うもの達が支配する世界でその世界で一番偉い竜帝陛下のラムセス様に『可愛い子ちゃん』と呼ばれて溺愛されることになった志鶴。
いままでの人生では想像もできないほどに甘やかされて溺愛される志鶴。
しかし、『異世界からきた人間が元の世界に戻れない』という事実ならくる責任感で可愛がられてるだけと思い竜帝陛下に心を開かないと誓うが……。
「余の大切な可愛い子ちゃん、ずっと大切にしたい」
「……その感情は恋愛ではなく、ペットに対してのものですよね」
溺愛系スパダリ竜帝陛下×傷だらけ猫系社畜リーマンのふたりの愛の行方は……??
ついでに志鶴の居ない世界でもいままでにない変化が??
第11回BL小説大賞に応募させて頂きます。今回も何卒宜しくお願いいたします。
※いつも通り竜帝陛下には変態みがありますのでご注意ください。また「※」付きの回は性的な要素を含みます

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる