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57:尻の異物とレイとふたり脱出大作戦11
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「おじう……ぇ、戯れがすぎますぞ」
立っているのも辛い振動に涙目になる。
しかし、叔父上からの反応がない。さらに振動もピタリと止まる。
「どういうことでござるか??」
あまりの事態に焦った拙者に、意外にもレイはとても冷静に言った。
「ルシオン、一旦、カルナック公爵家に戻ろう。今、私とルシオンふたりで出来ることは少ない」
「しかし……拙者のためにレオンハルト殿がまあ交戦しているはずで……」
レイを救うために、レオンハルト殿は死亡フラグを立てて見送ってくださったのだ。だから、レオンハルト殿を救わないといけない。しかし、レイは首を横に振る。
「そのために魔法師団長のところに戻るのは得策ではない。なぜから魔法師団長のところに戻るのは得策でないからだ」
「レイ、その小泉構文は……」
「よく考えてほしい。この国で一番魔法が使える魔法師団長がもし勝てない相手だとしたらその相手に私と、ルシオンが立ち向かうのは無謀だ。逆に、私は魔法師団長ならば問題なく勝てると信じている。ならば私と合流した今、一旦脱出し、脱出次第師団長にそのことを伝える方が理にかなっていると思う」
小泉構文の部分は気になったが、レイは例え精神操作の魔法に掛かっていても冷静で賢くって恰好良くて素敵な拙者の知っているレイだった。
そんな頼りになるレイを前にしたら拙者は頷くしかなかった。
「そうでござるな。しかし、どうやって脱出すれば……」
「それなら問題ない。一旦屋敷の外に出れば瞬間移動が使用できる」
レイは確かに魔法師団長であるレオンハルト殿よりは魔法が達者ではないかもしれない。しかし、それでも魔力量が多く、魔法に関してもかなりたけているので、難易度の高い瞬間移動もお手の物らしい。
レイの言葉に従うように拙者達は一旦元々入ってきた裏口から外へ出る。そして、瞬間移動で屋敷を後にした。
カルナック公爵家に到着してすぐ、レオンハルト殿にレイが通信を行った。しかし、通信は繋がらなかった。
信じたくはないが、レオンハルト殿は通信を行えない状態になってしまったということだろう。そう考えて自分の無力さを噛みしめた。
(元々、拙者はとても無力な存在ではござらんか……)
多くの頼りになる仲間に出会ったことと、スキルに目覚めたことですっかり忘れていたが、そもそも拙者は何の役にも立たないと長年言われてきた無能な王子。
そして、前世も無害なドルオタ。スーパーヒーローみたいに仲間を救うことなどひとりでは成し遂げられない。そのことに気付いた瞬間、無力感に襲われた。
それは、悲しみからではないやりきれない悔しさから流れたものだった。
さらに、良くない事態は続いた。叔父上が突然倒れて意識を失ってしまったというのだ。しかも、その原因も分からないらしく、今懸命に原因究明がなされているという。
「叔父上まで……どうして」
頭の中が完全にパニック状態になる。次に何をすべきなのかどうすればいいのか、何もかもが分からない。
そんな拙者をレイが優しく抱きしめた。そのぬくもりは婚約者時代に当たり前にあったとても懐かしく、とても愛おしい感覚だった。
「ルシオン」
優しく声を掛けられた時、頬を一筋の涙が零れ落ちて行った。
「拙者は、拙者はあまりにも無力で……」
「ルシオン、いいんだよ。ルシオンはルシオンとして頑張ったんだよ。だからひとりで解決できないからといって自分をせめてはいけない、大丈夫、ふたりで考えよう」
そう言って、拙者の髪をレイは撫でた。その繊細ながら男性らしく節の有る手に髪を撫でられるとなんだかとてもあたたかい気持ちになった。
(そうだ、今は戦争状態でもある、ここでただ何もしなければ最悪の事態を招くことだってあり得るかもしれない、そんなことにならないように足掻かなければいけない。もう、無力に諦めて死んでしまうような人生はごめんでござる!!)
そう心から願った瞬間だった。
今まで感じたことがないような強い力が、体から迸るのがわかった。
「レイ、ひとつ話したいことがあるでござる。実は、拙者にも魔力があったのでござる。後、スキルにも目覚めたのでござるが今、多分、一番拙者が持ったスキルで強いものが覚醒したようでござる……」
間違いない、拙者には分かる。いままで使用不可だった『魅了∞』のスキルが目覚めたのだ。
立っているのも辛い振動に涙目になる。
しかし、叔父上からの反応がない。さらに振動もピタリと止まる。
「どういうことでござるか??」
あまりの事態に焦った拙者に、意外にもレイはとても冷静に言った。
「ルシオン、一旦、カルナック公爵家に戻ろう。今、私とルシオンふたりで出来ることは少ない」
「しかし……拙者のためにレオンハルト殿がまあ交戦しているはずで……」
レイを救うために、レオンハルト殿は死亡フラグを立てて見送ってくださったのだ。だから、レオンハルト殿を救わないといけない。しかし、レイは首を横に振る。
「そのために魔法師団長のところに戻るのは得策ではない。なぜから魔法師団長のところに戻るのは得策でないからだ」
「レイ、その小泉構文は……」
「よく考えてほしい。この国で一番魔法が使える魔法師団長がもし勝てない相手だとしたらその相手に私と、ルシオンが立ち向かうのは無謀だ。逆に、私は魔法師団長ならば問題なく勝てると信じている。ならば私と合流した今、一旦脱出し、脱出次第師団長にそのことを伝える方が理にかなっていると思う」
小泉構文の部分は気になったが、レイは例え精神操作の魔法に掛かっていても冷静で賢くって恰好良くて素敵な拙者の知っているレイだった。
そんな頼りになるレイを前にしたら拙者は頷くしかなかった。
「そうでござるな。しかし、どうやって脱出すれば……」
「それなら問題ない。一旦屋敷の外に出れば瞬間移動が使用できる」
レイは確かに魔法師団長であるレオンハルト殿よりは魔法が達者ではないかもしれない。しかし、それでも魔力量が多く、魔法に関してもかなりたけているので、難易度の高い瞬間移動もお手の物らしい。
レイの言葉に従うように拙者達は一旦元々入ってきた裏口から外へ出る。そして、瞬間移動で屋敷を後にした。
カルナック公爵家に到着してすぐ、レオンハルト殿にレイが通信を行った。しかし、通信は繋がらなかった。
信じたくはないが、レオンハルト殿は通信を行えない状態になってしまったということだろう。そう考えて自分の無力さを噛みしめた。
(元々、拙者はとても無力な存在ではござらんか……)
多くの頼りになる仲間に出会ったことと、スキルに目覚めたことですっかり忘れていたが、そもそも拙者は何の役にも立たないと長年言われてきた無能な王子。
そして、前世も無害なドルオタ。スーパーヒーローみたいに仲間を救うことなどひとりでは成し遂げられない。そのことに気付いた瞬間、無力感に襲われた。
それは、悲しみからではないやりきれない悔しさから流れたものだった。
さらに、良くない事態は続いた。叔父上が突然倒れて意識を失ってしまったというのだ。しかも、その原因も分からないらしく、今懸命に原因究明がなされているという。
「叔父上まで……どうして」
頭の中が完全にパニック状態になる。次に何をすべきなのかどうすればいいのか、何もかもが分からない。
そんな拙者をレイが優しく抱きしめた。そのぬくもりは婚約者時代に当たり前にあったとても懐かしく、とても愛おしい感覚だった。
「ルシオン」
優しく声を掛けられた時、頬を一筋の涙が零れ落ちて行った。
「拙者は、拙者はあまりにも無力で……」
「ルシオン、いいんだよ。ルシオンはルシオンとして頑張ったんだよ。だからひとりで解決できないからといって自分をせめてはいけない、大丈夫、ふたりで考えよう」
そう言って、拙者の髪をレイは撫でた。その繊細ながら男性らしく節の有る手に髪を撫でられるとなんだかとてもあたたかい気持ちになった。
(そうだ、今は戦争状態でもある、ここでただ何もしなければ最悪の事態を招くことだってあり得るかもしれない、そんなことにならないように足掻かなければいけない。もう、無力に諦めて死んでしまうような人生はごめんでござる!!)
そう心から願った瞬間だった。
今まで感じたことがないような強い力が、体から迸るのがわかった。
「レイ、ひとつ話したいことがあるでござる。実は、拙者にも魔力があったのでござる。後、スキルにも目覚めたのでござるが今、多分、一番拙者が持ったスキルで強いものが覚醒したようでござる……」
間違いない、拙者には分かる。いままで使用不可だった『魅了∞』のスキルが目覚めたのだ。
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