雨ニモマケヌ、野ニ咲ク花ノヨウニ〜魅了魔法で全てを失った元王子の拙者は前世推しに貢いで爆ぜたアイドルオタクだと思い出した

ひよこ麺

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56: 尻の異物の異常とレイ救出大作戦11

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「可愛いルシオン……、ああ、やっぱり君が『浮気』なんてするはずない。『浮気』ではなくあのゴミクソハムシどもがルシオンを襲った、そう、それだけだったんだ。それなのに……」

「いや、それは違うでござるよ。拙者のせいで本当に面目次第も御座らぬ」

レイはとても憎々しげにそう言いながら、しかし、拙者を見る時ははにかむような甘い表情に変わる。

『強迫』とは特定のことに対して強く思い込んで嫌悪する魔法だとは聞いているのでどうやらレイは何か特定の事柄に対してそれが現れてしまっているはずだ。

(……レイの言動的には『浮気』に異様にこだわってるようにみえるでござるな……)

『そうだね、可愛いルシオン。多分彼はルシオンが『浮気』したという部分に『強迫』をかけられているようだね。しかし、彼の中で『ルシオンの裏切りはありえないこと』として処理された結果、浮気をした側が処断されたみたいだね』

叔父上の言葉になるほどと頷いた。だからレイはあんなに『浮気』を連呼したのかと納得した。

そして、ならばなるべく、例の魔法が解けるまではそれについて触れない方が良いなと納得したところで、レイがキョトンとした顔でこちらを見ている。

「どうしたでござるか??」

「いや、ルシオンは誰と話しているんだい??先ほどから妙にくぐもった男の声がするのだが……」

レイに指摘されるまで尻の中の叔父上(10回目)と会話するのがおかしいという常識を失っていた。

「い、いや、えっと……」

別にやましいことは1ミリもないが、ヤンデレモードなレイに尻の中に叔父上がいるという話をするべきか迷いが生じた。

いや、普通に考えたら尻の中に人がいるとかあり得ない話をするべきか本気で迷う。

(しかし、拙者はレイに誠実でありたい、だから……)

「……実は」

話しかけようとした時、強い振動と共に今までで一番元気な叔父上の声が響いた。

割と振動に慣れてきたので耐えきれたが中々に重い一撃でござった。

『初めまして、尻の中から失礼する。カルナック小公爵。僕は帝国で辺境伯をしているルシオンのおじしゃまの
アンドレイ・アンデレ・リゲルだ。いつも可愛い甥っ子が世話になっていたようだね』

多分、この先の人生でも中々聞くことのないだろう斬新な挨拶をした叔父上。

(これ大丈夫でござるか??)

「リゲル辺境伯閣下、初めまして。甥御さんとは結婚を前提に、甥御さんなので結婚を前提に交際をさせて頂いております」

しれっと拙者と婚約者アピールをするレイからは小泉構文ではあるが、先程のヤンデレみは消えていた。

やはり『浮気』が地雷なようだ。

『ああ、可愛い甥っ子からも貴殿の話は聞いている。大切に大切にしてほしい』

「ありがとうございます。しっかりルシオン様は私が保護監禁、いえ監禁して大切に安全を確保する所存でございます」

前言撤回、ばっちり病んでいた。

「レイ、保護監禁も監禁もよくないでござる」

「安心して、ちゃんとルシオンが幸せになれるふたりの終の住処にするからね、ああ、ルシオン、君が好きと言っていた異国の薄紅色の花を植えようか、庭に……」

そんな話をしていた時、再度爆音が響いた。そこで色々あって忘れていた大切なことを思い出した。

「あ、そうでござる。レイを助けに一緒に引率頂いたレオンハルト殿が大ピンチでござる!!

「レオンハルト??魔法師団長殿か、何故……」

「詳しい説明は後でいたす、とりあえず先程の部屋に……」

そう考えた時、尻の中の叔父上(11回目)が今までにないほど振動した。

「おじう……ぇ、戯れがすぎますぞ」

立っているのも辛い振動に涙目になる。

しかし、叔父上からの反応がない。さらに振動もピタリと止まる。

「どういうことでござるか??」
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