上 下
54 / 74

51:尻の異物とレイ救出大作戦07

しおりを挟む
「ルシオン殿下、申し訳ございません。本来貴方に最後まで付き従い安全に小公爵様をお助けする予定でしたが、私はここでこの男を食い止めないといけません。だから……ここから逃げてください」

死亡フラグのようなセリフを言うレオンハルト殿に、一抹の不安を覚えた。しかし、ここでグダグダするのが得策ではないことは自分でもわかっていた。

『可愛いルシオン、行きなさい』

先ほどまで締め付けていた叔父上が珍しくちゃんとしたことを言った。ここに残っていても確かに何かできるわけではない。なら少しでもレイを見つけ出して戻ってこよう。

「レオンハルト殿……かたじけない」

そう礼をして、拙者は部屋を駆け出した。ギムレット殿が追いかけて来るかと思ったがその気配はない。

「レオンハルト殿がピンチでござる。早く、レイを見つけ出さないと……」

『可愛い可愛いルシオン、安心して。ちゃんとこちらの援軍は送ったからレオンハルトのこともあいつは強いからそう簡単に死んだりしない』

叔父上の口から珍しくレオンハルト殿への、信頼の言葉を聞いて少し驚いた。叔父上、というか帝国の竜の血を引いている人達は自分でなんでもできるので人に対しての関心が希薄であると聞いたことがある。

その人が、こんなに褒めるなんてレオンハルト殿は相当強い魔法使いなのだろう。

(ならば、きっと大丈夫)

少し自分を落ち着けたが先ほどいた部屋から遠くまでとりあえず走ってきたが、この屋敷は外観通りそこそこ広いようだ。ただ、帝国との会議を別所しているためか、ほとんどの人間が出払いこの屋敷に残っていないようなのは救いではある。

(しかし、この広大な屋敷からどうやってレイを探すべきか……)

『可愛い可愛いルシオン、こんな時は竜玉が力を貸してくれる、先ほどのように強く竜玉に力を入れてごらん』

レイの手がかりがなく困っていた拙者に、叔父上が微妙なことを提案してきた。ただ、竜玉という謎のアイテム?は今までも規格外の力を発揮してきたので叔父上の提案にのり尻に力をこめた。

『ん……っ、ルシオン、良い締め付けだね。素晴らしい。その締め付け、とても気持ち良かった。ほぼイキかけた』

(叔父上を気持ち良くさせるために行ったのではないのだが……)

『もちろん安心しておくれ、今ので竜玉が捜索モードに切り替わった。捜索モードになれば、探したい相手がいる場所が光り輝いて見える形で竜玉が導いてくれる。ただ、この捜索モードにはひとつ難点がある』

(難点はひとつだけですむのでござるか??すごく心配なのだが……)

『大丈夫、たったひとつ。竜玉は基本的に愛を糧として力を発揮するとてもロマンチックな物体なのだよ。だから捜索モードも相手が物凄くルシオンを想っていればすぐに見つかるし、想われていないと光が見えず捜索ができなくなるやもしれない』

つまり、レイが拙者を想う気持ちがあれば道を照らしてくれるが、それがなければ……。

(拙者はレイに酷いことをした男でござる。けれど、もしまだレイが拙者に謝る権利をくれるなら……どうかレイの居場所を教えてほしい)

そう祈りながら、愛するレイのことを思い出す。

いつも拙者に優しくしてくれたレイ、誰よりも拙者のことを心配してくれて、拙者のことを愛してくれた人。

その人を、『魅了』により裏切る結果になってしまい、謝る間もなく別たれた。

(レイ、どうか無事でいてほしい。レイが拙者のことを嫌いでもいいから、レイを助けさせてください)

そう強く願った瞬間、屋敷の中の一角がひときわ光り輝くのが見えた。それは廊下の突き当りに飾られている絵画からあふれ出している。



(どう見ても行き止まりに見えるが……)

『どうやら仕掛けがあるみたいだね』

叔父上にそう言われて絵画を見る。その絵画は前世でも見覚えがあった、間違いないレオナルドダヴィンチの『最後の晩餐』である。

その絵画に何かすることで隠し扉か何かが開くのかもしれないと仮定したがどうすればよいのかわからない。

『この絵画は『最後の晩餐』だね。キリスト教の聖書に登場するイエス・キリストの最後の晩餐を描いた作品です。『ヨハネによる福音書』の13章21節で語られている、イエス・キリストが刑に処される前夜に12人の弟子と共に夕食を摂った際に「12弟子の中の一人が私を裏切る」と予言するシーンが描かれている』

叔父上の説明をぼんやりと聞いていると、拙者はあることを思い出した。

(……この屋敷は元々、マグダラ男爵家の持ち物であったのでござるよね??)

『ああ、そうだが……』

拙者は前世に見たダビンチ〇ードの特番か何かを思い出していた。その中で語られていたある仮説を思い出したのだ。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

処理中です...