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39:一途な竜の血と情報整理と
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「……ルシオン、おじしゃまは可愛いルシオンのお願いはなんでもきいてあげたいけれどそのお願いはとても難しい」
はじめて叔父上の表情が曇る。現行分かっている情報が少ない中で、拙者の立場でレイを救いに行くのが得策ではないことはよく分かっていた。
けれど、レイをこのまま失うようなことがあれば、拙者は生きていたもしょうがない屍のようになる未来が見えていた。
それほど、レイは大切な人で、例えレイに『魅了』のことで永遠に許されないとしても永遠にレイを拙者の中で想い続けることは自由だ。
(そう、拙者の前世は報われぬ推しへの愛を貫き通し、儚く死んだドルオタ。拙者はなんの見返りがなくても永遠に愛することのできるメンタルの持ち主でござる。だからこそ、今生の大切な推しであるレイをこの命に代えても救いたい……)
「うっ……可愛いルシオン、なんて一途で健気な子なんだ。流石竜の血を引く者。そう、竜はとても一途な血筋なんだ、自分もそうなのだからルシオンだって愛する者を諦めるなんてできないことを分かっていながら。ああ、すまない可愛い可愛いルシオン。どうしてもおじしゃまは可愛い可愛いルシオンを危険に晒したくなかったんだよ」
泣きながら拙者を抱きしめる叔父上。また本音を口にしていたらしい。もうその部分は癖なので仕方ない。
叔父上が拙者を抱きしめるその姿はまさにあたたかい家族のようである。さりげなく回した右手で拙者の尻をスカート越しに円を描くように撫でまわしていることを除いては……。
「叔父上、尻を撫でまわすのはやめて頂きたい。そして拙者の決意は竜の番への愛ほど固いのでお許しいただけませんか??」
真剣な眼差しで叔父上を見つめる。
「……レオンハルト」
「はい、我が主」
何故か、叔父上はレオンハルト殿を呼んだ。するとすぐにその真横に膝をついた。その姿はまさに忠誠を主君に誓う騎士のそれである。
「本当であれば、僕がルシオンを守りたいが、戦争になるなら辺境伯として国のために動かないといけない。だから、ルシオンが願いを叶えられるようについて行ってほしい」
「御意」
短く返事をしたレオンハルト殿はその端正な顔に、僅かに笑みをたたえた。
「どんなことがあろうと必ずお守りいたします。ルシオン殿下」
「……かたじけない」
拙者は戦争側ではなく、レイ救出に赴くとしてつつもレイがどこにいるかを探す必要があったため、一旦叔父上とカルナック公爵の力で、戦争やレイに関する情報を集めてもらった。その結果、大体のことを掴むことが迅速にできた。
戦争については、王国は帝国に対して王妃と拙者を人質にして、リゲル辺境伯領を要求しているらしい。リゲル辺境伯領は確かに魔法石の一大産地ではあるがそれが欲しいためだけに諸刃の刃のような要求をする意味がわからない。
レイについては、ほぼ目撃者がいないので捜索が難航した。
「皆様、いままでの情報を聞いて私の方である程度、戦争の目的ならびに小公爵様の居場所に関することが分かったかもしれません」
カロン子爵がそうとても良い声で頭をひねっている我々に言った。
「この情報だけでか??」
「ええ。まず戦争の目的はもちろんリゲル辺境伯領ではありません。皆さんも気付いていると思いますが王国の国力は到底帝国には及びません。宣戦布告すれば負けるのは必須です。ただ、人質を盾にどこまでできるかというところですが仮に要求が通ったとしても帝国に歯向かって得られるのがリゲル辺境伯領だけでは今後の国際社会的にも不利益でしかありません。それなのに何故こんなことをするのか……」
「まるで自殺志願者ででもあるようでござるな」
自身が破滅するために、人を巻き込むタイプの人間というものが世の中には存在する。ただ、そういう『無敵の人』は社会への鬱憤のある若者に多いため少なくともこの国の王侯貴族でそのような破滅願望がある者がいるようには思えなかった。
「まさに、この戦争の目的はこの国を破壊することです。あるいはもし人質に応じるようならば帝国ごと壊すつもりだと私は考えました。つまり、この戦争を計画した人間は王国や帝国を滅ぼしたいという強い願望がある人物、現行の王侯貴族に深い私怨を持っている人物となります。しかし、この宣戦布告をすることが可能な人物は国王陛下と宰相閣下となります」
この国を滅ぼしたいものがはじめるはずの戦争。しかし、始めたのが陛下と宰相。どちらも国を滅ぼしたいと思うものとは思えなかった。
しかし、そう言えばそのふたりに関して先日の話し合いで気になることがあった人物達でもあった。
「陛下と宰相殿ならこの戦争を起こしたくはないと思うのだが、もしかしてふたりはこの間、話に出てきた『強迫』や『暗示』の能力にかけられているのでござるか??」
「まさに、さすがルシオン殿下。そうです。国王陛下と宰相閣下は操られているのでしょう。そのふたつの能力を持つもの達、かの娼館の主たちとそしてそこに繋がっているイスカリオテ侯爵家の分家にあたるマグダラ男爵家の子と表向きされているアルト、『強迫』のスキル持ちによって」
はじめて叔父上の表情が曇る。現行分かっている情報が少ない中で、拙者の立場でレイを救いに行くのが得策ではないことはよく分かっていた。
けれど、レイをこのまま失うようなことがあれば、拙者は生きていたもしょうがない屍のようになる未来が見えていた。
それほど、レイは大切な人で、例えレイに『魅了』のことで永遠に許されないとしても永遠にレイを拙者の中で想い続けることは自由だ。
(そう、拙者の前世は報われぬ推しへの愛を貫き通し、儚く死んだドルオタ。拙者はなんの見返りがなくても永遠に愛することのできるメンタルの持ち主でござる。だからこそ、今生の大切な推しであるレイをこの命に代えても救いたい……)
「うっ……可愛いルシオン、なんて一途で健気な子なんだ。流石竜の血を引く者。そう、竜はとても一途な血筋なんだ、自分もそうなのだからルシオンだって愛する者を諦めるなんてできないことを分かっていながら。ああ、すまない可愛い可愛いルシオン。どうしてもおじしゃまは可愛い可愛いルシオンを危険に晒したくなかったんだよ」
泣きながら拙者を抱きしめる叔父上。また本音を口にしていたらしい。もうその部分は癖なので仕方ない。
叔父上が拙者を抱きしめるその姿はまさにあたたかい家族のようである。さりげなく回した右手で拙者の尻をスカート越しに円を描くように撫でまわしていることを除いては……。
「叔父上、尻を撫でまわすのはやめて頂きたい。そして拙者の決意は竜の番への愛ほど固いのでお許しいただけませんか??」
真剣な眼差しで叔父上を見つめる。
「……レオンハルト」
「はい、我が主」
何故か、叔父上はレオンハルト殿を呼んだ。するとすぐにその真横に膝をついた。その姿はまさに忠誠を主君に誓う騎士のそれである。
「本当であれば、僕がルシオンを守りたいが、戦争になるなら辺境伯として国のために動かないといけない。だから、ルシオンが願いを叶えられるようについて行ってほしい」
「御意」
短く返事をしたレオンハルト殿はその端正な顔に、僅かに笑みをたたえた。
「どんなことがあろうと必ずお守りいたします。ルシオン殿下」
「……かたじけない」
拙者は戦争側ではなく、レイ救出に赴くとしてつつもレイがどこにいるかを探す必要があったため、一旦叔父上とカルナック公爵の力で、戦争やレイに関する情報を集めてもらった。その結果、大体のことを掴むことが迅速にできた。
戦争については、王国は帝国に対して王妃と拙者を人質にして、リゲル辺境伯領を要求しているらしい。リゲル辺境伯領は確かに魔法石の一大産地ではあるがそれが欲しいためだけに諸刃の刃のような要求をする意味がわからない。
レイについては、ほぼ目撃者がいないので捜索が難航した。
「皆様、いままでの情報を聞いて私の方である程度、戦争の目的ならびに小公爵様の居場所に関することが分かったかもしれません」
カロン子爵がそうとても良い声で頭をひねっている我々に言った。
「この情報だけでか??」
「ええ。まず戦争の目的はもちろんリゲル辺境伯領ではありません。皆さんも気付いていると思いますが王国の国力は到底帝国には及びません。宣戦布告すれば負けるのは必須です。ただ、人質を盾にどこまでできるかというところですが仮に要求が通ったとしても帝国に歯向かって得られるのがリゲル辺境伯領だけでは今後の国際社会的にも不利益でしかありません。それなのに何故こんなことをするのか……」
「まるで自殺志願者ででもあるようでござるな」
自身が破滅するために、人を巻き込むタイプの人間というものが世の中には存在する。ただ、そういう『無敵の人』は社会への鬱憤のある若者に多いため少なくともこの国の王侯貴族でそのような破滅願望がある者がいるようには思えなかった。
「まさに、この戦争の目的はこの国を破壊することです。あるいはもし人質に応じるようならば帝国ごと壊すつもりだと私は考えました。つまり、この戦争を計画した人間は王国や帝国を滅ぼしたいという強い願望がある人物、現行の王侯貴族に深い私怨を持っている人物となります。しかし、この宣戦布告をすることが可能な人物は国王陛下と宰相閣下となります」
この国を滅ぼしたいものがはじめるはずの戦争。しかし、始めたのが陛下と宰相。どちらも国を滅ぼしたいと思うものとは思えなかった。
しかし、そう言えばそのふたりに関して先日の話し合いで気になることがあった人物達でもあった。
「陛下と宰相殿ならこの戦争を起こしたくはないと思うのだが、もしかしてふたりはこの間、話に出てきた『強迫』や『暗示』の能力にかけられているのでござるか??」
「まさに、さすがルシオン殿下。そうです。国王陛下と宰相閣下は操られているのでしょう。そのふたつの能力を持つもの達、かの娼館の主たちとそしてそこに繋がっているイスカリオテ侯爵家の分家にあたるマグダラ男爵家の子と表向きされているアルト、『強迫』のスキル持ちによって」
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