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33:カルナック公爵との話合い

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「……可愛いルシオン、本当に大丈夫かい??」

「問題ないでござるよ」

ニコリと馬車で一緒にゆられている叔父上に笑いかけた。しかし、叔父上の表情は険しいまま変わらない。

(この人は本気で心配してくれているのでござるな……)

今世こそ親ガチャに失敗している拙者ではありますが、前世の親ガチャは成功していたのでこの人が保護者として心配してくれているというのが痛いほどに伝わりなんとも言い難い胸がズキリとするような感覚がした。

「叔父上、叔父上のおかげで拙者は今、カルナック公爵と対等に話合えることになっただけもありがたいことなので……」

「対等??まさか、帝国こちら側のが有利にことが進められるはずだ。だからルシオンは我慢しないで大暴れしても良いのだよ」

そう言って微笑んだ顔はいつも拙者に向けている優しいものというより、黒い感じがして思わず苦笑する。しばらく叔父上と過ごしてわかったことは、隣国の帝国の英雄である辺境伯であり、魔法こそ使えないが竜の血の加護で通常の人類が到達するレベルでないほどの頑強さと怪力を持ち合わせているそうだ。

具体的には、大体ビルの高さ10階から落ちても死なない。なお、50階から落ちると本人曰く「少し痛いかな??」という感じらしい。

更に魔法に対して全て無効化するという能力があるそうで、正直こんな最終兵器みたいな叔父、しかも過保護が味方なので千人力とみて間違いない。

「かたじけない。しかし、叔父上、拙者は多くの人が傷つくことはのぞまないので……」

「分かっているよ。本当にルシオンはあの狂った環境でこんなに優しい子に育って。おじしゃまはそれが嬉しい半面切なくて仕方ない。ああ、絶対国王には地獄を見せないと……ふふふ」

等とやりとりしているうちに王国と帝国の国境線最大の砦にたどり着いた。この砦は陛下と母上が結婚した際に建てたもので有事の際に、お互いの国の重鎮が平等に話し合うためにある場所でもある。

そこにたどり着くと、目の前に見慣れた馬車、カルナック公爵家の紋章が付いた立派なものが既に置かれていた。そう言えば待ち合わせ時間よりだいぶたって到着した気がした。

「あわわ、ち、遅刻してしまってでござるか??」

あわあわするが、この世界では前世の世界より時間に関する概念が緩い。具体的にはウチナータイム程度には緩いのでその辺りはあまり気にしないようなのだが、前世勤勉な日本人でさらにドルオタでライブに遅れることそれすなわち死を意味するようなところにいたのでとっても不安になってしまう。

「大丈夫だよ。そんなにルシオンを震えさせるなんて、やはり〇〇すしか……」

「やめてくだされ!!遅刻したのこちらなんで!!」

などやりとりしていた時、砦の大きな扉が開いて中から見慣れた顔の人達が出てきた。

ひとりは、カルナック公爵で、そのすぐ側にはその側近であるカロン子爵が立っていた。カロン子爵はカルナック公爵が臣下降下する前から付き従っている存在であり、カルナック公爵家にお世話になっている時に何度も顔を合わせていた。

「リゲル閣下お久しぶりでございます。そして……ルシオン、元気そうでよかった」

「……ああ、あのルシオンに関する取り決めの日以来だな」

バチバチと火花が散るような冷たい雰囲気に思わずブルりとしたが、ここで引いてはいけない。

「あ、あの……」

「ここは戸口ですので、奧の会議室で続きはお話いたしましょう」

必死に話そうとしたがパクパクと口が開いただけで、そのまま会議室について行くことになった。会議室は広くそして王国とも帝国とも言い難い雰囲気の部屋になっていた。

とりあえず偉い人が腰かけたのを確認して拙者も腰を下ろす。この辺りは社会人経験のおかげで困らなくって本当によかった。などと考えていた時、物憂げな表情で公爵が話しかけた。

「ルシオン、まず甥の無事を確認出来てとても嬉しいよ」

「……ありがとうございます」

そう返事をしながらも、以前は感じなかった違和感を感じた。拙者は鈍感力は割と高いタイプのオタクを自負しているが、なんだろう、公爵は凄い困っている。後、あんか可哀そうな子を見るような目で拙者を見ている。

「ルシオン……」

とても言いにくそうにこちらを見ているが全く、何が言いたいのか分からない。

「どうなされた??その、拙者に何かついていたりするでござるか??」

「ついているというか……リゲル閣下」

そこで意を決したように、何故か叔父上を公爵は怪訝な顔で見つめた。叔父上は過保護だが良い人なので出来れば公爵と争ってほしくはないと思っていた。

しかし、それが叶わないのかと思ったが、その口から発せられたのは思わぬ一言だった。

「その……何故ルシオンは全裸なのですか??可哀そうなので服を着せてあげてください」

前言撤回。何故か拙者の倫理観が死んでいた件。というかそう言えば誰も何も言わないからずっと全裸であることを忘れていた。これは恥ずかしい。具体的には人間としての尊厳が死に絶えている状態である。

「何故だ??ルシオンはどんな格好でも美しいじゃないか。僕は全裸のルシオンも愛しているが貴方は愛せないというのか??」

わけのわからないことを曇りなき眼で語る叔父上に、いたたまれなくなったのでとりあえず……。

「申し訳ないが、叔父上。拙者も忘れていて物凄く人間的にどうかという部分が否めないが衣服は公的には着用義務があるので着替えさせてほしい」

とお願いして、とりあえず一旦服を羽織って出直してくることにした。
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