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25:変なヤツと過去の話03(ビッチ氏視点)
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「バカじゃないの、俺はお前なんか……お前なんか……」
『嫌い』と言いたかったけれど、言えなかった。
その言葉は嘘だから。いままで嘘で塗り固めたような生き方をしてきたのに、それでルッシーの幸せも小公爵の幸せも奪って、本当なら幸せになろうなんて考えてはいけないのに、そもそも生まれてきてはいけなかったのにそれなのに俺はずっと生にしがみついてきた。
(どうしても、死にたくなかったから。そのために、自分の身を守るために俺は……)
何も言えないで俯いた俺を、トーイは何も言わずに抱き寄せた。
「無理はしないでいい。何も言いたくないならそのまま何も言わなくても誰も怒ったり、お前に酷いことをしたりしない」
そう言ってまるで小さな子供にするように、背中をポンポンと優しく叩かれた時、また、俺は泣いてしまった。
トーイと居ると涙腺が緩くなって子供みたいに泣いてしまう。それがなんともバツが悪いんだけど、それよりもトーイが俺のこと『好き』っていったことが、『選べ』って言われたことで胸の奧が熱くなるのが分かる。
それは性衝動で高鳴る心音よりゆっくりで、けれど確かに早くてそして一拍が酷くあたたかく長い。空っぽのコップに水が満たされるようなそんな想いは生きていて感じたことがない。
(願ってはいけないって分かっているけど、出来るならこんな日々がもっと長く続けばいいのに……)
ズルい俺は、答えを出さないまま、トーイとほぼふたりでしばらく過ごした。
そんなある日、トーイがいつもと違う何か思い詰めているような顔でいつもの食事を持ってきた。
湯気が立つそれを見たら、今では腹の虫が鳴くくらい餌付けされてしまった。
「今日の食事はなに??」
「今日は、サンドイッチ、ビシソワーズ 、それとサラダだ」
手際よく目の前のサイドテーブルに料理が並ぶ。それの様子を見つめながら、次の言葉を待っていた。
「……ルヴッチ、聡いお前なら気づいているかもしれないが……」
「トーイ、買い被らないで。俺はそこまで賢くないから。言ってくれないと何も分からない」
わざとそう答えた。いつもと違う様子から何か悪いことがあるのだとは察していた。俺はいつもギリギリを生きて来たからそう言う予感はよく当たる。
そんな俺に、トーイは何かを覚悟したように告げた。
「ルヴッチ、お前はもう自由なんだ。公爵様はお前の役目は終わったと言ってもうずっと前にお前を解放するようにと命令していた。けれど、俺はその命令を無視して、今もここにお前を閉じ込めている」
「つまり、俺を愛するあまりトーイは監禁したってこと??愛が重すぎて怖いんだけど」
ふざけて出来るだけ軽く答える俺に、それでも表情を変えないままトーイは続けた。
「……そうだ。お前は覚えていないかもしれないけど、実は俺とお前は一度セックスをしたことがあるんだ。お前がまだ男爵の家にいた時期だ」
いきなりのカミングアウトに驚きながらも、食い散らかしていた相手については1回限りと決めていたから覚えていなくても仕方ないと自分に言い聞かせる。
「そして、その時から俺はずっとお前だけが好きで、初恋だった。
だから、お前を追いかけて学年途中でアカデミーにも転校したくらいだ。けれど……、あそこではお前とすれ違うくらいしかできなかった。それでもあきらめられないでいたのに、お前は誰かに消されてしまった。
どこに行ってもお前の話題はタブーだった。それでもなんとかカルナック公爵家の騎士団に紛れ込んで情報を集めて、やっと居場所を掴んだ。掴んでお前を保護した時は天にも昇る気持ちだった。
ルヴッチ……お前をここから出さなかったのは、お前を消そうとする連中の尻尾を掴んでいるからだ。もちろん、ずっと好きだった相手を監禁するのは楽しかったが、それ以上にお前の命の心配があったからここに居てもらった。
そいつらに、丁度今日隙が出来るんだ。ルシオン殿下がなんでも奴らに攻撃をしかけるらしくてそちらに目が行っていて、お前への監視もいない。だから……ふたりで逃げないか??」
重い想いの告白は、いつもなら最悪な気持ちになるけど、トーイのそれが嬉しいとか俺はそろそろ完全におかしくなったらしい。
後、知らなかったとはいえ俺は既にトーイに尻の穴を開いていたとかいう事実にちょっと恥ずかしくなりながら、けれど『ふたりで逃げたい』と言った言葉への返答は決まっていた。
『嫌い』と言いたかったけれど、言えなかった。
その言葉は嘘だから。いままで嘘で塗り固めたような生き方をしてきたのに、それでルッシーの幸せも小公爵の幸せも奪って、本当なら幸せになろうなんて考えてはいけないのに、そもそも生まれてきてはいけなかったのにそれなのに俺はずっと生にしがみついてきた。
(どうしても、死にたくなかったから。そのために、自分の身を守るために俺は……)
何も言えないで俯いた俺を、トーイは何も言わずに抱き寄せた。
「無理はしないでいい。何も言いたくないならそのまま何も言わなくても誰も怒ったり、お前に酷いことをしたりしない」
そう言ってまるで小さな子供にするように、背中をポンポンと優しく叩かれた時、また、俺は泣いてしまった。
トーイと居ると涙腺が緩くなって子供みたいに泣いてしまう。それがなんともバツが悪いんだけど、それよりもトーイが俺のこと『好き』っていったことが、『選べ』って言われたことで胸の奧が熱くなるのが分かる。
それは性衝動で高鳴る心音よりゆっくりで、けれど確かに早くてそして一拍が酷くあたたかく長い。空っぽのコップに水が満たされるようなそんな想いは生きていて感じたことがない。
(願ってはいけないって分かっているけど、出来るならこんな日々がもっと長く続けばいいのに……)
ズルい俺は、答えを出さないまま、トーイとほぼふたりでしばらく過ごした。
そんなある日、トーイがいつもと違う何か思い詰めているような顔でいつもの食事を持ってきた。
湯気が立つそれを見たら、今では腹の虫が鳴くくらい餌付けされてしまった。
「今日の食事はなに??」
「今日は、サンドイッチ、ビシソワーズ 、それとサラダだ」
手際よく目の前のサイドテーブルに料理が並ぶ。それの様子を見つめながら、次の言葉を待っていた。
「……ルヴッチ、聡いお前なら気づいているかもしれないが……」
「トーイ、買い被らないで。俺はそこまで賢くないから。言ってくれないと何も分からない」
わざとそう答えた。いつもと違う様子から何か悪いことがあるのだとは察していた。俺はいつもギリギリを生きて来たからそう言う予感はよく当たる。
そんな俺に、トーイは何かを覚悟したように告げた。
「ルヴッチ、お前はもう自由なんだ。公爵様はお前の役目は終わったと言ってもうずっと前にお前を解放するようにと命令していた。けれど、俺はその命令を無視して、今もここにお前を閉じ込めている」
「つまり、俺を愛するあまりトーイは監禁したってこと??愛が重すぎて怖いんだけど」
ふざけて出来るだけ軽く答える俺に、それでも表情を変えないままトーイは続けた。
「……そうだ。お前は覚えていないかもしれないけど、実は俺とお前は一度セックスをしたことがあるんだ。お前がまだ男爵の家にいた時期だ」
いきなりのカミングアウトに驚きながらも、食い散らかしていた相手については1回限りと決めていたから覚えていなくても仕方ないと自分に言い聞かせる。
「そして、その時から俺はずっとお前だけが好きで、初恋だった。
だから、お前を追いかけて学年途中でアカデミーにも転校したくらいだ。けれど……、あそこではお前とすれ違うくらいしかできなかった。それでもあきらめられないでいたのに、お前は誰かに消されてしまった。
どこに行ってもお前の話題はタブーだった。それでもなんとかカルナック公爵家の騎士団に紛れ込んで情報を集めて、やっと居場所を掴んだ。掴んでお前を保護した時は天にも昇る気持ちだった。
ルヴッチ……お前をここから出さなかったのは、お前を消そうとする連中の尻尾を掴んでいるからだ。もちろん、ずっと好きだった相手を監禁するのは楽しかったが、それ以上にお前の命の心配があったからここに居てもらった。
そいつらに、丁度今日隙が出来るんだ。ルシオン殿下がなんでも奴らに攻撃をしかけるらしくてそちらに目が行っていて、お前への監視もいない。だから……ふたりで逃げないか??」
重い想いの告白は、いつもなら最悪な気持ちになるけど、トーイのそれが嬉しいとか俺はそろそろ完全におかしくなったらしい。
後、知らなかったとはいえ俺は既にトーイに尻の穴を開いていたとかいう事実にちょっと恥ずかしくなりながら、けれど『ふたりで逃げたい』と言った言葉への返答は決まっていた。
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