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20:届いた手紙

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帝国の叔父上に保護された次の日、拙者宛てに手紙が届いていた。

それはただの手紙ではなくというヤツで、特殊な魔法が掛かっていて宛先の人間にしか開くことができないという手の込んだ代物である。

「……ルシオン、その魔導レターは怪しいからおじしゃまが処分してあげよう」

「いや、駄目でござる。誰かが拙者のために書いた手紙は誠意のために確認しないと……」

もちろん、無記名の手紙であれば放っておくという選択もできた。けれど、差出人のところにこう書かれていた。

『カルナック公爵』と。

「けれど、カルナック公爵は、可愛いルシオンを炭鉱送りにした極悪人だ。同じ叔父という立場で、しかも可愛い可愛いルシオンの幼少期の極上ショタイムも全部独り占めしたくせに、ルシオンを裏切ったなんて……」

「それは、拙者も『魅了』でおかしく……」

昨日までは自分が『魅了』されたのが悪いとだけ認識していた。

けれど叔父上の話を聞いて、もしかしたらレイを国王にするためにカルナック公爵がビッチ氏を使って拙者を陥れようとした可能性が出てきたことでその考えに揺らぎが起きている。

(それでも、拙者はレイには悪いことをしてしまった。謝りたいし、もし許されるならレイとやりなおしたい)

あんなに酷いことを言ったから、例え『魅了』されていたとしてもレイは拙者のことを許さないかもしれない。ただ、もしレイも自身が王になるために拙者に近付いていたのだとしたら。

そう考えたら、急に全てが恐ろしく感じる。けれど、そんな訳はないと必死に自分に言い聞かせる。

「ルシオン、自分を責めるのはやめなさい。もし次にルシオンが自分を責めることがあればおじしゃまが可愛いルシオンのお尻をなでなでしてしまうからそのつもりで……」

「いや、尻を撫でるのは違うのではござらんか??叔父上、それはセクシャルハラスメントでござる!!」

「甥っ子の尻を撫でるのがなぜセクシャルハラスメントになる??」

曇りなき眼で意味のわからないことを言う、叔父上のおかげで極限まで落ち込んでいた気持ちはすこし改善し、拙者は目の前の手紙を開く覚悟が出来た。

「よし、こちら『開封』するでござる!!」

手紙を手に取って、念をこめると途端にカードが開いて映像が浮かび上がる。この映像は、差出人が魔法で念写した過去の映像となる。

青白い光を纏ったカルナック公爵が、とても困った表情で映し出されていた。

『ルシオン、無事かい??』

そう心配そうな顔をして問いかけるカルナック公爵。以前なら手放しに『心配ご無用』と答えただろうけれど、今はそんな気分ではない。

仮に『心配ご無用』と答えてもあくまで映像なので返事などはないのだが。

『君が炭鉱ではなく娼館に連れ去られたとレイモンドから聞いた時は、生きた心地がしなかった。

ちゃんと食事はしているかい??不当な扱いは受けていないかい??何かあればすぐに私は君を助けに行くので連絡しておくれ』

「可愛い可愛いルシオンに酷いことをしたのにふふふ、何を今更善人ぶっている。叔父失格だ!!いや、僕はおじしゃまだからヤツとは比べられないくらいの……」

「あわわ、叔父上、これは映像でござるので!!」

映像に怒り狂う叔父上を押さえながら、そう言えば、カルナック公爵様も拙者の叔父だったけれど終ぞそう呼ぶことはなかったなと変な気付きを得つつ、映像なので我々のわちゃわちゃなどは全て無視してそのまま続きが流れる。

『……私は君が最愛の息子であるレイモンドを裏切り、ガリラヤ男爵家の三男と浮気をして婚約破棄を告げたと聞いて、今までの君への愛が憎しみに代わるほど怒り狂い、陛下に直訴して君への慰謝料を請求した。

けれど、それが『魅了』魔法のせいであると知ってその行動を後悔した。王国では『魅了』は大したものではないと言われているが、アレは恐ろしい魔法だ。

その魔法を使って陥れられたなら君への罪は重すぎる。こちらについて君の処遇の変更を陛下に求めるつもりだ。しかし……、それとは別で君に聞きたいことがあるんだ。

レイモンドが君を救いに行くと娼館へ行ったきり、

(レイが行方不明!?)

『どこに行ったか覚えはないかい??都合が良いことを話しているとは分かっている。どうか、もしレイモンドの居場所を知っていたら教えてほしい』

その言葉を聞いて、心臓がバクバクとなり体が震えるのがわかった。

「レイは、レイはどうなったでござるか??まさかギムレット殿がレイを……」

レイは高位貴族の子息であるから、ギムレット殿が手を出すという考えはなかった。けれど、今はその考えが揺らいでしまう。

あの娼館で見た写真、もしギムレット殿がレイの異母兄弟だとしたら??そして、カルナック公爵に母親が裏切られた等のように思っていて恨みを持っていたとしたら。

頭の中にネガティブな想像が膨らんでいく。そんな拙者を突然また叔父上が抱きしめた。前世も今世もあまり肉体的接触に慣れていないので思わず。

「ひゅわわわわ」

などと鳴いてしまった拙者を真剣に心配そうに見つめながら叔父上は髪を優しく梳いてくれた。

……そして、

「可愛い可愛い僕のルシオン、ルシオンの望みはなんでもおじしゃまが叶えてあげるよ。そして、何故カルナック公爵がここに手紙を出してきたのかもじっくりコトコト調べないとな……」
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