15 / 74
13.最愛保護監禁大作戦(レイモンド視点)
しおりを挟む
「……なるほどあくまでシラを切るつもりみたいだな」
ルシオンの行方がわかってすぐ、私は動いた。
娼館にコンタクトを取り、ルシオンの身請けを申し入れしたのだ。
しかし、娼館からの返答は至極シンプルで、
「そんな人物は娼館に在籍していない」
と言うものだった。こちらは影が念入りに調べて全て把握していると言うのに、なんとも粗末な答えだ。
(随分と舐められたものだな……)
我が公爵家は父は臣下降下したため王位継承権は持たないが、私には第2位の王位継承権が元々あった。
さらに、悲しい話だがルシオンが廃嫡されたことで第1位に繰り上がり立太子も決まった。
それについてはずっとルシオンと王太子の教育を受けて来たため問題はない。
(本当はルシオンを支えるために勉強したんだが。ああ、でもその権力でルシオンを大切に大切に私の檻の中に入れて守れる。早く愛する君に会いたい、今まで我慢していた全てを手に入れたい……)
そんなことを考えていた時、ヒラヒラと床に何が落ちた。それは引きちぎった紫陽花の花びらだった。
「ふふ、ルシオン。大丈夫。君に自由は似合わない。あの学園に通った時間が間違いだったんだよ。この先はずっと大切にしてあげるからね」
そう空を向いて微笑みながら私はその花弁を思いきり踏み躙った。
しかし、シラを切り私からルシオンを奪うものを許すわけにはいかない。
正直、地位を盾に無辜の民に手など出す気はないし、王になるものは彼らを導く必要があるだろう。
ただ、それは私の半身を奪わないという前提の元の話である。
今回、彼らは完全にそれを犯した。ならば許されないことを教えないといけない。
「影、いるか??」
「はい、ご主人様」
声は答えた。私は声に告げる。
「例の娼館の犯罪絡みの証拠を集めろ、それにより強制的に立ち入りができるように手配するんだ」
「承知いたしました」
影は答えた。この国の娼館はほぼ大なり小なりの犯罪行為を犯している。
少なくとも該当の娼館はルシオンを連れ去りながら居ないなどと言っている訳で、さらに慰謝料の請求先であり今や我が家の所有であるルシオンを意図的に失踪させたのだから罪として問えるだろ。
「ルシオン、早く私だけの君を助けないとね、君をちゃんとしまってあげないとね」
結果、うちの優秀な影はすぐに証拠を掴んで、さらに手際の良いことに強制執行の令状も手に入れた。
だから、それを手に娼館に公爵家の騎士団を連れて向かう。
しかし、たどり着いた娼館の様子はおかしなものだった。
間違いなく高級娼館であるはずなのに客がおらず、下働きの大半はまるで心がここにないような顔をして虚空を眺めていた。
「なんですかね、まるでこいつら薬物中毒みたいだ」
騎士達が訝しがる中、ひとりの若い男が何かを譫言のように呟いているのが分かる。
「姫様のはぁはぁすべすべのはぁはぁ」
その言葉を聞いて全身の血が沸騰しかけた。よくよく虚な連中の呟きに耳をすませば一様に「姫様」と口にしている。
この国で、「姫」とは王族にしか用いられない言葉であり、この娼館でそう呼ばれる人物はひとりしか居ない。
「ふざけるな!!」
感情が抑えきれず魔力が暴発した。
ドカン!!
という轟音と共に娼館の建物の半分が半壊した。
(許さない許さない許さない……)
「団長、落ち着いてください。この建物を壊したらルシオン様にも被害がでます」
必死に副団長に止められなければ全て破壊していたかもしれない。
「……いくらなんでも意味がわからなすぎる」
娼館を半分吹っ飛ばしたせいか、迷惑そうな顔をしたひとりの男がやってきた。
確か娼館の主人だと資料で見た黒髪に赤い目のその男には、その時から知らないはずなのに、妙な既視感があった。
しかし、そんなことよりルシオンを奪った元凶に怒りがおさまらない。
「許すか許されないかではない。そもそもここは法的に問題があるだろう??そんな場所に私の最愛を置いておくわけにはいけない、いや、そもそも最愛は私の安楽な腕の中にいるべきなのに……何故奪ったんだ」
怒りに完全に冷静さを欠いた私は男を睨む。
「話にならない。そもそもいくら高貴な貴方とはいえどんな許可があってここにそのような根の葉もない話をしにきたんだい??ここに元王子様なんていないよ」
「嘘だ!!証拠もある。ルシオンを返せ!!」
影が集めた証拠を突きつける。
そこではじめて男の表情が僅かに歪む。
「なるほど、中々頑張ったみたいだね、でもそれでも貴方に彼を渡すわけにはいかない」
ごく普通の所作だったが、私にはそれが手練れたものが部下に合図を送ったと分かった。
私は咄嗟に騎士団に叫ぶ。
「こいつらを拘束しろ!!」
しかし、一瞬指示が遅れたため、目の前が暗くなるのが分かる。
間違いない、目眩しの魔法だ。
「クソ、こんなもの……」
魔法を弾こうとした時、耳元に妙に優しく囁く声がした。
「ごめんよ、レイ」
その聞き覚えのある声が聞こえた瞬間、私の意識は反転した。
ルシオンの行方がわかってすぐ、私は動いた。
娼館にコンタクトを取り、ルシオンの身請けを申し入れしたのだ。
しかし、娼館からの返答は至極シンプルで、
「そんな人物は娼館に在籍していない」
と言うものだった。こちらは影が念入りに調べて全て把握していると言うのに、なんとも粗末な答えだ。
(随分と舐められたものだな……)
我が公爵家は父は臣下降下したため王位継承権は持たないが、私には第2位の王位継承権が元々あった。
さらに、悲しい話だがルシオンが廃嫡されたことで第1位に繰り上がり立太子も決まった。
それについてはずっとルシオンと王太子の教育を受けて来たため問題はない。
(本当はルシオンを支えるために勉強したんだが。ああ、でもその権力でルシオンを大切に大切に私の檻の中に入れて守れる。早く愛する君に会いたい、今まで我慢していた全てを手に入れたい……)
そんなことを考えていた時、ヒラヒラと床に何が落ちた。それは引きちぎった紫陽花の花びらだった。
「ふふ、ルシオン。大丈夫。君に自由は似合わない。あの学園に通った時間が間違いだったんだよ。この先はずっと大切にしてあげるからね」
そう空を向いて微笑みながら私はその花弁を思いきり踏み躙った。
しかし、シラを切り私からルシオンを奪うものを許すわけにはいかない。
正直、地位を盾に無辜の民に手など出す気はないし、王になるものは彼らを導く必要があるだろう。
ただ、それは私の半身を奪わないという前提の元の話である。
今回、彼らは完全にそれを犯した。ならば許されないことを教えないといけない。
「影、いるか??」
「はい、ご主人様」
声は答えた。私は声に告げる。
「例の娼館の犯罪絡みの証拠を集めろ、それにより強制的に立ち入りができるように手配するんだ」
「承知いたしました」
影は答えた。この国の娼館はほぼ大なり小なりの犯罪行為を犯している。
少なくとも該当の娼館はルシオンを連れ去りながら居ないなどと言っている訳で、さらに慰謝料の請求先であり今や我が家の所有であるルシオンを意図的に失踪させたのだから罪として問えるだろ。
「ルシオン、早く私だけの君を助けないとね、君をちゃんとしまってあげないとね」
結果、うちの優秀な影はすぐに証拠を掴んで、さらに手際の良いことに強制執行の令状も手に入れた。
だから、それを手に娼館に公爵家の騎士団を連れて向かう。
しかし、たどり着いた娼館の様子はおかしなものだった。
間違いなく高級娼館であるはずなのに客がおらず、下働きの大半はまるで心がここにないような顔をして虚空を眺めていた。
「なんですかね、まるでこいつら薬物中毒みたいだ」
騎士達が訝しがる中、ひとりの若い男が何かを譫言のように呟いているのが分かる。
「姫様のはぁはぁすべすべのはぁはぁ」
その言葉を聞いて全身の血が沸騰しかけた。よくよく虚な連中の呟きに耳をすませば一様に「姫様」と口にしている。
この国で、「姫」とは王族にしか用いられない言葉であり、この娼館でそう呼ばれる人物はひとりしか居ない。
「ふざけるな!!」
感情が抑えきれず魔力が暴発した。
ドカン!!
という轟音と共に娼館の建物の半分が半壊した。
(許さない許さない許さない……)
「団長、落ち着いてください。この建物を壊したらルシオン様にも被害がでます」
必死に副団長に止められなければ全て破壊していたかもしれない。
「……いくらなんでも意味がわからなすぎる」
娼館を半分吹っ飛ばしたせいか、迷惑そうな顔をしたひとりの男がやってきた。
確か娼館の主人だと資料で見た黒髪に赤い目のその男には、その時から知らないはずなのに、妙な既視感があった。
しかし、そんなことよりルシオンを奪った元凶に怒りがおさまらない。
「許すか許されないかではない。そもそもここは法的に問題があるだろう??そんな場所に私の最愛を置いておくわけにはいけない、いや、そもそも最愛は私の安楽な腕の中にいるべきなのに……何故奪ったんだ」
怒りに完全に冷静さを欠いた私は男を睨む。
「話にならない。そもそもいくら高貴な貴方とはいえどんな許可があってここにそのような根の葉もない話をしにきたんだい??ここに元王子様なんていないよ」
「嘘だ!!証拠もある。ルシオンを返せ!!」
影が集めた証拠を突きつける。
そこではじめて男の表情が僅かに歪む。
「なるほど、中々頑張ったみたいだね、でもそれでも貴方に彼を渡すわけにはいかない」
ごく普通の所作だったが、私にはそれが手練れたものが部下に合図を送ったと分かった。
私は咄嗟に騎士団に叫ぶ。
「こいつらを拘束しろ!!」
しかし、一瞬指示が遅れたため、目の前が暗くなるのが分かる。
間違いない、目眩しの魔法だ。
「クソ、こんなもの……」
魔法を弾こうとした時、耳元に妙に優しく囁く声がした。
「ごめんよ、レイ」
その聞き覚えのある声が聞こえた瞬間、私の意識は反転した。
0
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
悪役令嬢のペットは殿下に囲われ溺愛される
白霧雪。
BL
旧題:悪役令嬢のポチは第一王子に囲われて溺愛されてます!?
愛される喜びを知ってしまった――
公爵令嬢ベアトリーチェの幼馴染兼従者として生まれ育ったヴィンセント。ベアトリーチェの婚約者が他の女に現を抜かすため、彼女が不幸な結婚をする前に何とか婚約を解消できないかと考えていると、彼女の婚約者の兄であり第一王子であるエドワードが現れる。「自分がベアトリーチェの婚約について、『ベアトリーチェにとって不幸な結末』にならないよう取り計らう」「その代わり、ヴィンセントが欲しい」と取引を持ち掛けられ、不審に思いつつも受け入れることに。警戒を解かないヴィンセントに対し、エドワードは甘く溺愛してきて……
❁❀花籠の泥人形編 更新中✿ 残4話予定✾
❀小話を番外編にまとめました❀
✿背後注意話✿
✾Twitter → @yuki_cat8 (作業過程や裏話など)
❀書籍化記念IFSSを番外編に追加しました!(23.1.11)❀
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる